「剣山」「玉ねぎ」(2023/12/14)
美智子は夕飯の材料が入った袋を台所に置きながら義母に声をかける。
「お義母さん、ただいま帰りました」
それを聞いた義母はリビングの奥から出てきて返す。
「あら、おかえり美智子さん。」
美智子が食材を袋から出していると、義母がおもむろに小箱を差し出した。
「美智子さん、あなた今日誕生日でしょ。いつも頑張ってくれているからそのお礼も兼ねて、プレゼントよ」
美智子は義母の嘘くさい笑顔に嫌な予感はしつつも、無碍にもできず仕方なく受け取る。
箱を開けると、生け花に使う綺麗な剣山が入っていた。
美智子は意図が分からず問う。
「お義母さん、これは?」
すると義母は先ほどとは違う、気味の悪いニヤケ顔をしながら答える。
「美智子さんったらそんなこともわからないのね。これは剣山よ」
そんなことはわかっていると美智子は少し苛立ちながら続ける。
「何故私にこれを?」
義母は相変わらずのニヤケ顔で言う。
「何故って美智子さんのためじゃない。地獄に落ちた時のために、今から慣れておかないと」
そんなことを言うためにわざわざ買ったのか、と美智子は呆れた。
そこで、美智子は手に持っていた玉ねぎを勢いよく剣山に刺す。
突然の大きな音にビクッと体が跳ねる義母は実に愉快である。
美智子は玉ねぎを刺した剣山を義母に手渡した。
「こちらこそ普段のお礼にこれを差し上げます。玉ねぎの花言葉は不死です。お義母さんが地獄で長生きできますように」
お題提供:ピカソケダリ メロス(剣山)/ポポポ(玉ねぎ)
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