射鹿 鍬山鍬太

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射鹿 鍬山鍬太

短編を書かされています。逃げたいです。クオリティをお求めの方はご退出ください。 Bluesky: https://bsky.app/profile/gekisou.bsky.social

最近の記事

「牧草」「ほな、また!」(2023/12/09)

 生き物の言葉を翻訳してくれるという機械を購入した。  任意の生き物に設定を合わせて生き物に機械を向けると、その生き物の言葉がわかる優れものだ。  牧草を食べている最中の飼い牛に、早速使ってみる。 「ほな、また」「ほな、また」「ほな、また」  おかしい。いくらやり直しても「ほな、また」しか表示されない。  壊れているのか、とも考えたが思い返せばきちんと設定を確認していなかった。  翻訳対象を確認すると、設定が「草花」になっていた。 お題提供:ピカソケダリ メロス(牧

    • 「飴細工」「カップラーメン」(2023/12/08)

      飴細工「カップラーメンくんはいいなあ。食べたいときにどこでも誰でも笑顔にさせられるんだから」 カップラーメン「いやいや飴細工くんのほうこそ、本当に必要な人に贈られて、甘くて美しい。こんなに羨ましいことはないよ。」  飴細工もカップラーメンも、どちらも約3分で完成する、立派な食べ物だというのに。  隣の芝生は青く見える。 お題提供:ピカソケダリ メロス(飴細工)/ポポポ(カップラーメン)

      • 「足枷」「冷気」(2023/12/07)

         牢獄は冷える。  とめどなく流れてくる冷気だけでも耐え難いというのに、体制を変えるごとに触れる足枷がヒヤリとして、眠気を散らされる。  うまく寝付けずにいると柵の前から微かな声がした。 「ギャバン、起きているか」  ひどく弱々しい声の主は親友、イサクだった。 「イサク、なんたってこんなことを」 「すまない、ギャバン。私には妻も子もいるのだ。詳しくは話せんが、これは"政治"だよ」 「……となればもちろん私は死刑か」 「本当にすまない。せめて私だけは後を追うつもりでいる

        • 「蹄」「背中」(2023/12/06)

           国王マリウスが死んだ。 寝室で短剣を突き立てられ絶命していたのだ。  国の一大事ともあって、何よりも優先して犯人探しが行われた。  マリウスが最後に確認されたのは寝室に入る直前、発見されたのは朝方、従者がマリウスを起こしに行った時であった。  犯行は警備の薄い真夜中に行われたということになる。  それゆえに目撃証言などもなく、短剣も寝室に飾られていたものが使われており、手がかりはほとんどない。  捜査が停滞する中、一人の男が声をあげた。 「私は犯人を見た」  その男の名

        「牧草」「ほな、また!」(2023/12/09)

          「シャベル」「星」(2023/12/05)

           今日は友人と山に来ている。 近場ではなく、あえて車で数時間はかかる山まで来るところに、いつもとは違うぞという気概を感じる。  かなりの山奥まで来た。  冬だというのに友人は滝のような汗を拭っている。対して私は体が少し冷えているくらいである。  友人は疲れているだろうに、シャベルを持ち出し必死に穴を掘り始める。体に鞭を打って、シャベルに足をかけて土を掘り起こし横に遣る。全身を最大限に使って、必死に掘り続ける。  私はそれを横目に、寝転びながら星空を見る。生い茂った木々の合間

          「シャベル」「星」(2023/12/05)

          「換気扇」「虫けら」(2323/12/04)

           皆様、いかがお過ごしか。 私は今、自分を呪っている。前世で悪事を働いた自分を。  私は神を信じていなかったし、もちろん仏も信じていなかった。ましてや輪廻転生なんか知りもしていなかった。  今になって先人の言うことは聞くべきなのだと身に染みている。  人間として悪事を働いた私は、六道輪廻の考えに則りきちんと畜生道に落とされてしまった。  蝿として生まれ変わった私は、人間時代とはうってかわって至極真っ当に生きてきたつもりであるが、やはりこの世界は畜生に厳しい。  人間の頃には

          「換気扇」「虫けら」(2323/12/04)

          「そろばん」「ブランコ」(2023/12/03)

           ぼくはそろばんが大好き。  算数以外の教科はてんでダメだけども、そろばんを知ってからは算数だけは好きになった。  今日も算数のドリルをそろばんで解いていこう。 【たかしくんは3000円を持ってスーパーに行きました。200円のりんごを8つ買い、お釣りをポケットに入れました。買い物帰りに鞦韆に興じていると、ポケットからお金が落ちてしまいました。たかしくんは必死にお金を集め、いま手元に400円があります。たかしくんは何円を失いましたか?】  ……鞦韆ってなに? 【ヒント:ま

          「そろばん」「ブランコ」(2023/12/03)

          「歯車」「歯並び」(2023/12/02)

           自分の歯並びが嫌いだ。笑うたびにグロテスクなまでの口元が表れるのがどうしても許せなくて、自然と笑わないように笑わないように自分を抑えつけるようになった。  私の住む街にリサイクルショップがある。誰もが名前を聞いたことのある大手チェーンというわけではない。開店当時から張り替えてないのであろう燻んだテント看板に「なんでもあります徳田リサイクルショップ」と書いてある、個人店舗である。  時折そこにふらっと立ち寄って、その中で一番投げ売ったろう値札がつけられているものを買う。  

          「歯車」「歯並び」(2023/12/02)

          「便箋」「サンバ」(2023/12/01)

           携帯電話が鳴っている。  この携帯電話を買ったときは胸が高鳴ったものだ。 ボディが鮮やかな銀色で、整然と並べられたボタンのデザインも良い。なにより歌が好きな私にとって「着うた」という機能が嬉しい。  しかし私は今、携帯電話が鬱陶しくて仕方がない。あれだけウキウキしながら設定した一青窈も、今では私の神経を逆撫でするだけになってしまった。  歌好きが高じて作詞家を名乗るまでになれたのは良いものの、所詮はまだまだひよっこである。仕事は選べない。  机の上にふと目をやると嫌でもある

          「便箋」「サンバ」(2023/12/01)

          「ガスマスク」「鰡」(2023/11/30)

          A「いやぁ、鰡って魚は強烈に臭いって聞いたからね。」 B「だからってガスマスクを付けるのはやりすぎですよ。」 お題提供:ピカソケダリ メロス(ガスマスク)/ポポポ(鰡)

          「ガスマスク」「鰡」(2023/11/30)

          「花一匁」「氷菓子」(2023/11/29)

           暑い日が続く。もういっそ絶滅した方が人間は幸せになれるのではと考えてしまうほど、夏は暑い。  私はコンビニでソーダ味のアイスキャンディを買って公園のベンチで座っていた。しきりに鳴く蝉が鬱陶しい。  私はアイスキャンディを袋から取り出して一口齧る。ソーダ味の清涼感がこの暑さをほんの一瞬だけ和らげてくれるのだ。  公園を見渡すと、休日で体力を持て余しているであろう子どもたちが目一杯楽しんで各々の遊びに興じている。鬼ごっこであったり、ブランコであったり、花一匁であったり。  花

          「花一匁」「氷菓子」(2023/11/29)

          「ドップラー効果」「板」(2023/11/28)

          A「救急車のサイレンって自分の横を通り過ぎると音が変わるよな」 B「ああ、それはドップラー効果だね。」 A「この間、妻が大切に取っておいたらしい板かまぼこを食べてしまった時、妻の声色が変わったんだけど、もしかしてあれも?」 B「ああ、もちろんドップラー効果さ」 お題提供:ピカソケダリ メロス(ドップラー効果)/ポポポ(板)

          「ドップラー効果」「板」(2023/11/28)

          「テトラポッド(消波ブロック)」「ガス代」(2023/11/27)

          「テトラポッド売ってます」  くたくたの段ボールに黒い油性ペンでそう書かれていた。  海岸沿いの道路に面した何かの工場のような建物のガレージで、とても清潔とは思えない風貌の初老の男性が座っている。  男性の目の前には広げられたブルーシートと、手のひらサイズのものからキャリーバッグほどはあろうかというくらいのものまで大小様々なテトラポッドが乱雑に置かれている。テトラポッドの露天商と言った具合だ。  私は思わず声をかけてしまった。 「おっちゃん、これ何?」  すると男性は嬉しそ

          「テトラポッド(消波ブロック)」「ガス代」(2023/11/27)

          「円錐」「サステナブル」(2023/11/26)

           目の前に大きな円錐がある。  真夜中に樹海を歩いていると、それは突然現れた。ちょっとした山小屋程度の大きさで、表面はのっぺりとしている。時折、円錐の先端から光が明滅して、その度に外観がはっきりと見える。全面真っ白の本当にただの円錐である。目の前にあるのに、それが何なのか全く理解できない。少なくとも人間が作ったものとは思えなかった。  奇怪なものを前にして呆然としていると、円錐の中からにゅっと、タキシード姿の人間が出てくる。 「お客さま、どうぞこちらへ」  明らかに異質な

          「円錐」「サステナブル」(2023/11/26)

          「水引」「ジャラジャラ」(2023/11/25)

          携帯のストラップを見る度に、祖母の言葉を思い出す。 「水引はね、縁起物なんだよ。人と人を結ぶ物なの。この花結びなんかは、何度でも結びやすいでしょう?何度繰り返しても良いという意味があるんだよ。きっと良縁に恵まれるから持っておきなさい」 そう言って渡されたのは手作りの水引だった。お世辞にも水引細工とは言えない、不細工な花結びの水引。祖母はそれをストラップとして加工したつもりなんだろうけれど、僕にはそれがただの紐にしか見えなかった。 病床に臥す祖母に、「ありがとう」と言うのが僕に

          「水引」「ジャラジャラ」(2023/11/25)

          「わらびもち」「蟹爪」(2023/11/24)

          A「もち米でできていないわらびもちが、餅を名乗っているのが許せない。同じように、茶を使っていないのに茶漬けを名乗る出汁茶漬けもだ。」 B「はあ。」 A「物を切る道具のハサミだってそう。その点、蟹爪は偉いね。ハサミの名に恥じない、本当に挟むだけの器官だ。こういうズレた名称は変えていかねば。」 B「では、日本も先進国を名乗るのはやめた方がいいかもしれませんね。」 お題提供:ピカソケダリ メロス(わらびもち)/ポポポ(蟹爪)

          「わらびもち」「蟹爪」(2023/11/24)