マガジンのカバー画像

1人百人一首

25
運営しているクリエイター

#note短歌部

1人百人一首〜藤の傘〜

雨の日は交差点が滲んでていつもよりかは決められなくなる

雨濡らす丸い額と藤の傘今日はビールの気分じゃない

一人百人一首〜来航〜

星空はあばたのように降り注ぐ愛し愛し海鳴りの人

星々は見守るようで殺伐とただ私の気持ちを飲み込む

海鳴りは紫煙を吸い込む化け物で孤独に寄り添う妖かもす

大人にはなりきれないから真っ黒な海岸線をただなぞるだけ

海は生き空も生きてる午前2時私の輪郭曖昧のまま

波招く境界のない真っ黒に拐かされてチェーンを解いてる

下田の海は残酷に境をくれず真夜中の誘惑をする6月3日

1人百人一首~十三、梅田東通り、またはどこかのインターチェンジ付近~

抱かれたのではない私が抱いたのよ笑い飛ばした始発の牛車

火をつけたたばこが腹の粘膜と感情刺激した夜明け頃

つぶされたシケモク見つめこの世界あんな未来とか考えてみる

ひさしぶり降りた駅だと君が言う私はあの夜あいつと降りた

かどわかし傷の舐め合いかりそめの十三栄商店街

一人百人一首~後朝~

夢のあと生まれたままの我がいて覚めた部屋にはは独りぼっちで

頬をつけ遊び疲れて眠ってるふたつの裸に朝日が注ぐ

いるようないないようなそれくらい曖昧模糊なら終わりがないから

しかと見て助演女優の怪演をみんなが傷つくアンコール

都々逸その3

夏は短し恋せよ乙女夜伽の君は蛍のように

店に来る人ピースを見せる2人でいれば世界は平和

酔うか酔われる勝つか負けるか好きになったらあなたの負けよ

近けりゃ熱い遠けりゃ寂し炎と氷と好いたひと

こたえはいいのいつもの喫茶で私はいつでも待つ女

すれ違ってもまた目を合わせて逢って魅せるわ負けないわ

狩が下手な女豹は独り腹が空いても戦をするの

一人百人一首〜七夕〜

織姫の願いも虚しくしとしとと14ミリの雨音響く

彦星よ義理の親父を踏みつける勇気もないならそれまでなんだよ

あなたなら私をどこかへ連れ去ってくれると思ったそんな七夕

他愛もない仕草も癖も横顔も永遠にきらめく北斗七星

わたくしはどこかで待っておりますと伝えることのできない哀しさ

都々逸その2

耽美で甘美主の指先素肌と心に火を灯す

一番二番n番なれど主の心だけが欲しい

のめばのむほど渇望するもの酒と煙草とおまえの心

今宵だけは2人でいよう今日も明日も明後日も

恋人ごっこもままごとなれど嘘も誠も君次第

我の心はとうに染った主の気持ちがないことだって

逃した魚は大きかったの我のいけすはあなたのものよ

あなたの口ずけ胸の奥そこボヤとくすぶり大火事か

一人百人一首〜間男〜

あの人の棄てた弁当ゴミ袋君が持ってく行ってらっしゃい

逃げるべき選択をするしないなどとっくの昔に決めてることでは

追い詰めることになるなら私などハナからいない方が華です

華だとか蝶もなれずわたくしはただ傷つけるスズメバチかも

高鳴りは禁煙すれば治るのかドライフラワーになってゆくのか

胸が痛い煙草のせいだきっとそう今日も今日とて会いたいような

一人百人一首~The Stranger~

一人百人一首~The Stranger~

見たのでしょう己の中の綺麗事だけで済まない想いの炎

今日もまた冷たい空気に抱かれゆく私の身体透けている夜

すれ違う回送電車流れゆく回想思い出せない階層

ベランダで吐き出す煙が夕焼けを吸い込んでいく紅くしてゆく

1人百人一首~ラフマニノフピアノ協奏曲第2番第一楽章~

デカダンス未来のこととか不安とか赤い穂先がまぎらわせてる

群青に突き出す筒が見送った私もいつか白い煙に

さよならとここにいてとが潮時の私たちに満ちたり引いたり

これからの2人の世界決めかねてラフマニノフが静かに響く

1人百人一首~いもせ~

ふと伏せた瞳の奥の闇の中狭くて苦しい私の居場所

ぬばたまの紫の紐しめやかに左手で巻く君が弓引く

いつの日か君が振られるその日まで宙ぶらりんの私の愛よ

サヨナラの口づけ交わす夏の恋
君を連れ去る秋風涼し

さざなみの寄る君指を絡めては愛してくれた日々の残り香

雲間から漏れだす梯子くらいには好きで好きであなたが好きで

傷つけて傷つけられておわりなくわたしもあなたも欠陥品

この星は美しと思う

もっとみる

1人百人一首~泣ける浜百合~

踊り場に臨む青空やましさを責めるみたいに皮肉に青い

その海はいづれを知るか孤独など自由などとはかわるものかは

あの日から1歩も動かずここにいる影は長くて陽は昇らない

浜百合の泣ける極暑と焼ける砂
後悔したから手を振っている

1人百人一首~宵のオレンジ~

オレンジと宇宙の境界曖昧にきもちを今日もごまかしていけ

遠くまで宵が影を落としても私の涙で滲むオレンジ

しあわせになれるべくしてなれるひとなれない私に星空が降る

1人百人一首~匂へよ椿~

あまい罠ながい幻さめる冬耳をすませて匂へよ椿

橘の葉に傷つけられし我の指午後のみぞれにかさぶた冷えぬ

瓶の底指で絡めてとったこと蜜の残りと君のいない冬

あの夏に確かに愛は本物で確かに地球は回っているよ