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1人百人一首

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#創作

1人百人一首~十三、梅田東通り、またはどこかのインターチェンジ付近~

抱かれたのではない私が抱いたのよ笑い飛ばした始発の牛車

火をつけたたばこが腹の粘膜と感情刺激した夜明け頃

つぶされたシケモク見つめこの世界あんな未来とか考えてみる

ひさしぶり降りた駅だと君が言う私はあの夜あいつと降りた

かどわかし傷の舐め合いかりそめの十三栄商店街

1人百人一首〜喫茶店にて〜

わたしとて馬鹿じゃないのよ分かってる口づけだけは最後にさせて

それでもねどこかで祈る願ってるあなたが間違いこっちに来ること

まっすぐにダメであることわたくしは人間くさいと思ってしまうの

わたくしの悪い所もわかってるニヤリと笑うあなたが好きよ

振り返ることは許さぬプライドかいたずらっ子の純情か

後ろ手のピースは遊びかサヨナラの精いっぱいの想いの丈か

ハイライト吸い込む度に想い出すたのしく

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都々逸その1

私の知らぬお前の方が今日も明日も欲しくなる

主の言い訳我の言い訳ずるい大人になりきれぬ

主のやさしさかりそめなれどとーんときたの嘘になれ

抱くか抱かれる誰が決めるの我はおまえに抱かれたい

1人百人一首~倫理の道~

君の知らない私がふえてゆくマックのポテトが今日はしょっぱい

引き返す電車はもうない11時倫理の道の片道切符

タップして品定めをすにんげんに許されるのか神でもないのに

干上がった池のほとりを連れられる我は飛べないカモの雛なり

閨の中視界が揺れる午前2時空き缶たちの視線は冷たい

一人百人一首~The Stranger~

一人百人一首~The Stranger~

見たのでしょう己の中の綺麗事だけで済まない想いの炎

今日もまた冷たい空気に抱かれゆく私の身体透けている夜

すれ違う回送電車流れゆく回想思い出せない階層

ベランダで吐き出す煙が夕焼けを吸い込んでいく紅くしてゆく

1人百人一首~いもせ~

ふと伏せた瞳の奥の闇の中狭くて苦しい私の居場所

ぬばたまの紫の紐しめやかに左手で巻く君が弓引く

いつの日か君が振られるその日まで宙ぶらりんの私の愛よ

サヨナラの口づけ交わす夏の恋
君を連れ去る秋風涼し

さざなみの寄る君指を絡めては愛してくれた日々の残り香

雲間から漏れだす梯子くらいには好きで好きであなたが好きで

傷つけて傷つけられておわりなくわたしもあなたも欠陥品

この星は美しと思う

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1人百人一首~泣ける浜百合~

踊り場に臨む青空やましさを責めるみたいに皮肉に青い

その海はいづれを知るか孤独など自由などとはかわるものかは

あの日から1歩も動かずここにいる影は長くて陽は昇らない

浜百合の泣ける極暑と焼ける砂
後悔したから手を振っている

1人百人一首~宵のオレンジ~

オレンジと宇宙の境界曖昧にきもちを今日もごまかしていけ

遠くまで宵が影を落としても私の涙で滲むオレンジ

しあわせになれるべくしてなれるひとなれない私に星空が降る

1人百人一首~匂へよ椿~

あまい罠ながい幻さめる冬耳をすませて匂へよ椿

橘の葉に傷つけられし我の指午後のみぞれにかさぶた冷えぬ

瓶の底指で絡めてとったこと蜜の残りと君のいない冬

あの夏に確かに愛は本物で確かに地球は回っているよ

1人百人一首~願わくば~

甘い飴溶けてなくなる放課後の高鳴る鼓動春風二番

なによりも自分自身がでたらめと囁くみたいな春の夕暮れ

会いたいと思うことの虚しさは季節外れのひまわりみたいに