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生活すること

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生きるって何だろう?それは生活することなのではないだろうか────30才で伊東市にある海の街へ移住して感じたことを書いています。
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#この経験に学べ

海の向こう側から見る日本の日常

海の向こう側から見る日本の日常

5年前にシカゴでミックスをしてくれたグレッグ氏(以下グレちゃん)が日本へ来たとのことで、東京まで会いに行ってきた。あれから5年経っていることに驚きだ。あの頃は本当に全国各地を飛び回っていて、日本のみならず海外にも歩幅を広げ、刺激だらけの生活を送っていた。今もたくさんの刺激を受けているのは変わりないけれど、シカゴへ行くといったあからさまなインプット方法ではなく、日常の中から得られるようになったため、

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移り住むこと

移り住むこと

YouTubeを見ていたら、移住失敗談のコンテンツが上がってきた。最近では何かと話題に上がる地方移住。毎度、大きく取り上げられるのは悪い話ばかりだ。失敗談の典型例としては、近隣住民とのトラブルや、参加しなければならない催し物の多さ、それほど安くない物価、交通の便の悪さ、医療サービスの不充分さ、虫が多いなど挙げればキリがない。私も物件を探しまくっていた当時は、その街の住み心地が書かれた口コミを読んで

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自分だけの薬

自分だけの薬

今回は久しぶりに随分と下の方へ来てしまったようだ。アサガオの観察日記みたいにつけている躁鬱チェックリストの日数を数えてみると、真ん中にいられたのは3週間ほど。薬を減らしてから、明らかに真ん中にいられる時間が減っている。つまり薬はちゃんと効いていたということだ。改めて薬ってすごいなと感心したと同時に、やめられなくなる恐怖心も抱いた。薬が効いて生活が楽になると、やめなくてもいいのでは?と考え始めてしま

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過去の精算

過去の精算

私の生き方は、躁鬱人としてあまり参考にならないかもしれない。自分のために住む場所を変えて、どこにも勤めず、作りたいものを作りたい時に作って、波が来たらその通りに過ごす。それは私がたまたまアーティストをやっていて波を活かせる職業だったからできていることで、マイノリティーだと自覚している。躁転したら大きなプロジェクトをやって、鬱転したら曲を作って、躁になっても鬱になっても全て活かせてしまうのがアーティ

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夢の設定

夢の設定

自分の夢がよく叶うようになった。叶えるために何か努力をしているわけでもなく、いつかその時が来たら叶うだろうぐらいの感じでいると急に横からスッと入ってきて、気がついたらもう叶っている。風景画を100枚描いたら展示会を考えようと思っていたら、3ヶ月後にはもう叶っていた。あんなに自分の曲を広めるのに必死だったのに、たまたま住んだ場所で作ってほしいと言われた曲は、歌を覚えたいと言ってもらえるほどになった。

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海の上で暮らしているようで

海の上で暮らしているようで

どうやら数日前からフラットな世界へ戻ってきたようだ。躁と鬱の両方を体験した約1ヶ月半はかなり危険な旅だったけど、無事にまたここへ戻ってこられて安堵している。波のある生活を受け入れることにしているから波があること自体に問題はなく、どんな旅で、どうやって戻ってきたのかが分かれば次の波もそれほど怖くない。躁鬱はまるで、海の上を漂う船に乗っているようだと思った。追い風を受けて加速しすぎれば、戻ってこられな

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落ち込まない鬱

落ち込まない鬱

身体が少し楽になってきた。心臓の鼓動がゆっくりになりつつある。降ってきた階段の一番下は通り過ぎたらしい。建てつけの悪い危険な階段だったけど、降り方はなんとなく分かってきた。心臓が苦しいと一つの動作をするのがすごく大変で、重たい身体を引きづりながらご飯を作ったり、洗濯をしたり、よくやったなと我ながら思う。最下層を通り過ぎた今からは、しばらく真横に進んでいく。ここから無理に上がろうとすると、まだ身体が

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生き延びるための観察

生き延びるための観察

朝起きて、キッチンをデフォルトに戻し、コーヒーを淹れて、文章を書く。いつもと変わらないことをしているけれど、身体は重い。その重さの要因は手足や腰などではなく、中心である心臓から来ているように感じる。心臓が疲れているっぽい。走り終わった後みたいな感じ。そのせいで全ての動作が遅くなっている。脳みそは至って冷静で、体調とメンタルを紐づけないようにそれぞれを分けて考えるようにしている。この体調に流されて心

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流されていく

流されていく

私は自分で決めることがとても大事な人間だった。そう、過去形になっている。今はなるべく自分で決めないようにしている。その方が面白いことがたくさん起きるのを知ったからだ。

大統領には毎日着る服を決めてくれる専門の人がついているらしく、それは他にもっと重要な選択をしなければならないからいちいち服なんて選んでいられないからだそうだ。私たちは服のように、日常の中でたくさんの選択をしている。何を食べよう、ど

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躁の波を乗りこなす

躁の波を乗りこなす

心臓がいつもより早くドクドクと動いているのを感じる。身体は少し強張って、緊張しているようだ。視界はパーっと開けていて、まるで覚醒しているような感覚の中、何に対してなのか分からない焦りがある。そして湧き上がってくる何でもできそうという自信。私はおそらく躁鬱人の躁状態になっている。昨晩は衝動を抑えきれず0時近くまで制作してしまい、さらに覚醒して眠れなくなってしまった。頭の中でのインスピレーションも止ま

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不安定な生き方マニュアルを作る

不安定な生き方マニュアルを作る

長らく書いていなかったけど、私は躁鬱人だ。双極性障害というなんだか深刻そうな名前は嫌だから、坂口恭平さんを見習って躁鬱人と言っている。自分が躁鬱人だと知って調べた時に、医学的な文献ばかりで当事者たちの声があまりにも少なくて困った。治らないのなら上手く付き合っていくしかないのに、実際にそれができている人がどんな生活をしているのかが分からない。薬を飲んでいて大変ですみたいな話が多い。そもそもパイが少な

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日常の視点を変えてみると

日常の視点を変えてみると

この街へ来て5ヶ月が経った。生活のルーティーンもできてきて、街へ私が馴染み始めていると感じる。この暮らしは老後の夢だったから、叶えてしまったら落ち着いてしまうんじゃないかって心配だったけど、実はかなり忙しい毎日を送っている。でも前より時間はゆっくり流れていて、一つ一つの出来事が丁寧に過ぎ去っていく。忙しいのにゆっくり流れて行くのは、矛盾しているように聞こえるだろう。これは多分、日々の捉え方が変わっ

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欲求がなくなると

欲求がなくなると

今の私は欲しいものが特にないという、自分でも不思議な状態にある。今日は干物を食べたいなとか、海を見に行きたいなとか、そうした日々の暮らしの中ではもちろんある。私が言っている欲しいものとは、もっと認められたい!とか、もっとこうなりたい!のような、承認や比較によって得られる欲求のことだ。矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、向上心はなくなっていない。絵を上手に描きたいとか、料理をおいしく作りたい

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成功と失敗

成功と失敗

初めて行った東京の美容院で、最近海の街へ引っ越した話になった。すると美容師さんが、「後悔はしていないですか?」と不思議な質問をしてきた。「後悔」って何だっけ?全く頭になかったその言葉の意味を改めて考える。後悔とはこんなはずではなかったとか、もっとこうなってほしかったみたいに、予定調和が狂った時に生まれる感情だ。私より年下の26歳の美容師さんは、どうやら東京から地元へ帰るのを迷っていて、何かが変わっ

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