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エッセイ

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エレベーター・やさしい人(中島みゆきの歌によせて)・分身の術など あれこれ
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記事一覧

変わる時

変わる時

変わる時は思いがけなく訪れる。これは紺色が赤に変わった物語・・・

遠い日のことです。
母がわたしのワンピースを2着縫ってくれました。紺色の布地と赤色の布地を畳の上にパーッと広げ、どっちにしようかな、と言いながら、
結局3本白線の入ったセーラーカラーの同じデザインで色違いを2着。

ミシンを踏む母のそばで、もらった端切れで私はお人形のギャザースカートをチクチク縫っていました。

手先が器用で縫物上

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独立の花#シロクマ文芸部

独立の花#シロクマ文芸部

始まりは・・・貝母という不思議な名前の花に魅かれた始まりは、随筆家、岡部伊都子のある逸話を知ったことによる。彼女が婚家を身一つで飛び出して独立した時、新しい部屋にこの一輪を挿して独立記念日の花としたというのだ。花の著作も多い達人が選んだ一輪とは、いったいどんな花かと興味深々だった。

貝母という花を見てみたいと、花に詳しい詩の会の友Kさんに話したところ、その花ならうちの庭にあるので、咲いたら「貝母

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イントロ好き

イントロ好き

マツコ・デラックスさんが、「ちょっと聞くだけで歌が分かっちゃうイントロってあるのよね~」と、のたまっていたが、本当にそうだ。
「裕次郎のブランディグラスって、あの忍び泣くようなコーラスから始まるの、たまんないわね~」とも。
ブランディグラスという歌は知らないので調べてみるとなるほど、女心が
ふるえる。よかったらイントロだけでも聞いてみてください。

さすがプロの作詞家は落としどころを知っている。

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朝焼け#青ブラ文学部

朝焼け#青ブラ文学部

窓の外の空が白み、ほのかな紅色が広がり始めた。「ああ、朝焼けだ」
生まれて初めて試験勉強で徹夜した朝のことだ。

英文学史の試験には泣かされた。英文が一行書かれていて、これを書いた作家名と作品名を書くという問題がずらり、と並ぶ。
To be or not to be ,That is a guestion.
ならば Shakespeare の Hamlet  とすぐ分かるが、こんなに分かりやすい問

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#あの記事の後日談・グリーンサム2

#あの記事の後日談・グリーンサム2

虎吉さんの企画「あの記事の後日談」参加させてください。
虎吉さんお世話をおかけしますがよろしくお願いいたします。

上の記事で100均で買ったパキラが成長した、私はグリーンサムかも、と書きましたが、その後の我が家の植木たちのことをお知らせしようと思います。主役はパキラです。

どうです!すごい成長でしょう!脇枝の芽が茂ってきたらもう少しどっしりと植木らしくなる予定。「大きくなぁれ!」と声掛けしてい

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答え合わせ#青ブラ文学部

答え合わせ#青ブラ文学部

地下鉄に乗った。向かいの席の女性がなかなかオシャレで気になる。
わたしと同年代だからよけいに。まず髪色がいい。深いベージュ、ハシバミ色だ。肩までの長さで顔の周りに緩やかなウエーブがかかり、横向きになる形のいい鼻がすいとのぞく。

グレイの腰までのダウンジャケットにスリムな白いパンツ、黒いゴワテックスの厚底ブーツは高級そう。黒のリュックの小さいマークはたぶんアニエスベーだ。ちょっと視力の弱ってきたわ

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別れの味#シロクマ文芸部

別れの味#シロクマ文芸部

 チョコレートは大好きだ。近所のスーパーで売っているナッツ入りがお気に入り。ちょうど親指と人差し指でつまめる大きさで、隕石のかけらのようなゴツゴツした形、10個くらい入って一袋100円は嬉しい。甘さ控えめ、ナッツの香ばしさとよく合っている。後を引くので、一度に食べ過ぎないよう大事に味わう。

 ところがある日、そのナッツチョコをカリリと噛むと、以前治療して金属をかぶせた歯に鈍い痛み・・・鏡でみると

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似てるけど #シロクマ文芸部

似てるけど #シロクマ文芸部

雪化粧した山や木々を、今日は眺めている方も多いでしょう。横浜は雨で
そんな景色は見られませんが、昨日の新聞では沢山の雪だるまが目を楽しませてくれました。ヘッダーの絵は、昨日の朝日新聞 be に掲載されていたクイズです。
「同じ絵が15枚ならんでいるように見えますが、全く同じ絵は2枚だけです。(中略)同じだったのは、何番と何番でしょう」
ヘッダーには10枚しか載せられなかったのですが、それでもマフラ

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ああ、美容室

ああ、美容室

 久しぶりに「予約できる美容室」に行った。今まで通っていたところは近所でもあり、朝開店前に行って順番をとり、順番が来そうな時間を見計らってまた行く、というやり方をしていた。順番票をとったまま待っていることもできたが、長い時間家を空けられなかったからそれは無理。さっと行って終わったらさっと帰る、安いからいつも混んでいて、開店前に行っても順番票は20番ということもあった。

 少し時間がとれるようにな

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幻の出版 #シロクマ文芸部

幻の出版 #シロクマ文芸部

 本を書くことに憧れた時期がある。もう20年以上前だ。ある出版社が原稿募集していて、入選したら出版される、と新聞で読んだのだ。原稿用紙100枚程度、あらすじを添える、という条件、さっそくトライしてみた。
 応募して一ヶ月、今か今かと結果を待っていると、ある日ついに封筒が届いた。触ってみると「残念ながら今回はご希望に添えず…」という通知にしては、少し厚い。もしや、と開封すると
 「入選には至りません

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さぁパリへ! #シロクマ文芸部

さぁパリへ! #シロクマ文芸部

振り返ると楽しい旅だった。初めてのパリでの日々は魅力に満ちていた。
そんな私の思い出、少し長いですが、読んでくださいませんか。(3000字)

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シャルルドゴ-ル空港からタクシーに乗った。行先のホテル名を告げると、運転手はちょっと首を傾げ、早口のフランス語で何か言いながら助手席にあったパリの市街図を調べ始めた。わたしがホテルの位置をさがしあてて

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後ろ姿 #2023年のいっぽん

後ろ姿 #2023年のいっぽん

植物大好きな友達が「梅はね、後ろ姿がかわいいの、ガクがポンと丸くて。今度よく見て」とのこと。そういえば花の後ろ姿なんて気を付けて見たことなかったなぁ・・・と集めてみました。

なるほど、紅色に染まったガクが恥じらっているようで可愛い!

梅の蕾は
白い鈴
ちりんちりん
もうすぐ
春が始まるよ

さてこれは、ご存じソメイヨシノです。梅に比べるとガクがシャープ。

桜満開のころ
空は花に憧れて
花と同

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ありがとう #シロクマ文芸部

ありがとう #シロクマ文芸部

「ありがとう」は感謝の言葉だが、必ずしも感謝を表しているわけではない。
ヘルパーをしていたころ、会社に電話がかかって来ると、受話器をとって
「お電話ありがとうございます。○○ケアセンターでございます」と言うように、と指示された。従ってはいたが、こちらの社名を言うだけでいいんじゃないか、と内心疑問を感じていた。この場合、申し訳ないが
「ありがとうございます」に感謝の気持ちが込められていたわけではない

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夢のお話

夢のお話

夢をよく見る。朝方、起きる直前や、たまにちょっと昼寝をしたときに。
ほとんどは起きて身体を動かせば忘れてしまう。夢への心残りなど、そうはないからいいが。さまざまな記憶を、脳がどこをどう弄りまわすのか、とりとめがなく、辻褄が合わない夢も多い。鮮やかな色彩が広がった美しい風景の夢を見て、あの世界はどこかに本当に存在しているのではないかと思ったこともある。

こんな夢も見る。もうすぐ卒業するのに、これか

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