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何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.5

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2018年2月の記事一覧

「生きている」にも色々あって。

「生きている」にも色々あって。

前回の記事で小さい頃からずっと生きていることに違和感があったと書きました。

そんな私も生きていくなかで、ここなら違和感なく過ごせるぞ、という場所をいくつか見つけました。むしろ、なんだか生き生きしちゃうかも、という場所までありました。

それはひとくちに「生きている」といっても、実はいろんな「生きている」があるからだと思います。

人間社会で「生きている」こと。

動物として体が「生きている」こと

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「技術が無闇に透けない」という技術

「技術が無闇に透けない」という技術

”つくったものに対して「上手い!」というより「好き!」と言われたい。”

これはわたしがイラストなどの制作に関わっている中で、ずっと思い続けていること。

というのも「上手い!」という感想が真っ先に出るクリエイティブは、それを作った「クリエイター自身の満足度」をやたらに高めるために作られてしまっているのではないかと思っている。伝えたいことより、技術が前に出てきてしまっている状態。ポートフォリオなど

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気づかれないけど、大事なこと

気づかれないけど、大事なこと

・実在する地方の町における、高校生たちのありがちな休日の過ごし方。
・食品加工場でありがちな辛い作業。
・ちょっとマニアックなスポーツについて、ファン同士はどんな会話をすることが多いか?

これらはいずれも、私が最近、脚本執筆のために調べたことです。
どれも、いざ調べるとなると、なかなか確からしい答えにたどり着けない。
「今どきネットでちょちょいと検索すれば大抵のことはわかるだろう」と、思われるか

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あなたにも、忘れられないひとがいるんでしょう

あなたにも、忘れられないひとがいるんでしょう

「あの日から、進んだつもりでいた。でも、なにも変わっていなかった」

のこりのカクテルを飲み干して、彼女は続けた。

どれだけ私が幸せになっても、今私が幸せだとしても、彼のことを完全に忘れる日は来ないかもしれない。むしろ来てほしくない気もする。あんなにひどいことをされて、もう嫌いになってもいいはずなのに。

一年も会わないうちに、彼女は私の知らない服をきて、知らない顔を持っていた。綺麗に施されたメ

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美大生が下請けにならないために

美大生がもっと活躍できる社会を実現したい。そのためには、美大生がどう変わればいいのか。そして、世間の美大生をみる目がどう変化すればいいのか。

ぼく自身は、80年代前半に、美大を卒業している。その時代は、バブル経済に向けて景気が良くて、誰でも就職できるような状況だった。

デザイナーという専門職には、ならないと決めて、4年生の9月にスーツを買って、たまたま知った興味のある企業を2社だけ受けて、すん

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日本語の「好き」って評価と別軸のよい褒め言葉だと思うんだけど、言うためにはある程度の時間が必要なのではないか。「この味が好き」はもともとこういう味が好きと言う意味だし「この本が好き」は読んだばかりの本に使わない。私だけかもしれないけど「本当に好きか?」はある程度の検証期間を要する

オンラインとオフラインにおける「自分」の多面性を考える

今日、長年私をオフラインで知っている友人から「ごめん。もう無理」というLINEが届いた。

そのメッセージに続いたのは「Twitterとか全部フォロー外させてもらった。もうこれ以上あやかのあやにーの部分は見たくない。」と。

その友人は私が長く仲良くしていた友達だったし、たぶんSNSでも当初は色々リプライをもらって返信したりもしていたと思う。

気が付いたら、確かに私もリプライしなくなったし、向こ

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ウェブ記事のように読書してみたら積ん読に良かった

思いついた読書法を試してみてる。およそ10分から15分区切りくらいで複数の本を並行に読んでいくのだ。

昔よりどうしても集中力が長続きしないところがあるし、仕事柄、ウェブ記事を読む機会が多いのもあって、あれくらいの文量に慣れてしまっている。

つまり、長くても1万字くらいまでのものを、しっかり読むとだいたい5分から10分ほど。その感覚で、本を読んでいく。

もちろん、面白くて時間も忘れて読んじゃう

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自分を信頼すること

自分を信頼すること

小説を書き終わって、ゴムみたいに感性が伸びきっている今、朝、歯を磨いている時なんかに、ふと繰り返し思い出す光景がある。

2年前の冬、祖母を看取るためにホスピスに通いつめていた時のことだ。

廊下は日が差してもグレーで、ざらざらした弱々しい空気ができたばかりの病棟の隅々にまで満ちていて、建物の中にいる人々は皆、静かで、消毒液と死ぬ前の人特有の体臭が混じった匂いが、じっとしていると体の中に鉛のように

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小難しい色を爪に塗るひと

かねてより憧れていた女性と初めて二人で食事をしようという話になり、予定を合わせてカレンダーに彼女の名前を書きこんだ。
その名前のつかさどる何月何日何時何分がくる少し前に、路地の奥にある扉をあける。視線を遣ると奥にまばゆくはにかみながら手を振る彼女がいた。なんだかすごく綺麗。顔つきがすごく綺麗な人だ。聡明さがにじんでいる。私は目を細める。お辞儀をかわし、カウンターに並んで座る。こんばんは。予約してい

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粉飾したい

粉飾したい

美容整形をすると、その後きれいな人を見る度に、
「あの人も整形では?」
「この人もそうなのでは??」
と疑うようになるらしい。
なかなか示唆に富んだ話だと思う。

私はよく、人に対して「この人、”粉飾さん”では?」と疑うという悪癖がある。
”粉飾さん”って別に一般的な言葉ではなく、私が勝手に言ってるだけなんですが。
要するに、”すごいことをやっている風”な発言をして、実際よりも自分を大きく見せたい

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毎日描いて発表する、の人たち。

毎日描いて発表する、の人たち。

累計170万部を突破してなお、勢いがとどまることを知らないマンガ『君たちはどう生きるか』。その漫画家である羽賀翔一さんがまだ売れていなかった頃のエピソードを見つけた。

 今コルクでは羽賀翔一さんを育成していますが、彼には「今日のコルク」という1ページマンガをほぼ毎日描いてもらって、ネットで発表していました。コルク社内で起きるちょっとした事件や発見をマンガにしてもらったのです。
 新人がいきなり中

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どこへも行かない感情たちの行方。

どこへも行かない感情たちの行方。

時刻は23時前。思ったよりも乗客の少ない、夜の山手線にぼくは乗っている。行き先は自宅の最寄駅・・・ではない。これから最後の打ち合わせ場所へと向かっている。帰宅は丑三つ時コースになるかもしれないぞ、というゲゲゲの鬼太郎の妖怪センサーばりの多忙センサーが警告している。ということで、膝の上にパソコンを乗っけてカチャカチャとキーボードを打っている。隣の人を気遣い、心なしか優しめにソフトタッチで。

この文

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「クオリティを保ちたい」「感情のおもむくままに作りたい」これもきっと自分の中の大いなる矛盾。どちらかに振り切れていたり、両方できると言う人はかっこいいけど、人は実際問題矛盾するのだ。私だって迷っていないように「見せる」ことはできるだろう。だけどそうしないで、揺れ動きながら進みたい