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エゾラノ短編マガジン

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蝦空千鶴が書いた短編小説。
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#メルヘン

幻想短篇:『花の世界で暮らす少女の話』

幻想短篇:『花の世界で暮らす少女の話』

(原作:ジュール・シュペルヴィエル)

 優しい朝の光と、遠くから聞こえてくる鳥のさえずりで、
わたしは目が覚めました。
 視界に入ってくる最初の光景は、
天使が優美に舞うフレスコ画の天井です。
 誰が描いたフレスコ画なのかは、わかりません。
 それにしても――。
 とてもとても、とーっても、高い天井です。
 おそらく、わたしには一生、
手が届きそうにない――と言ってもいいくらい天井は高いです。

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『わたしの物語美術館へようこそ!』前編(note短編小説)

『わたしの物語美術館へようこそ!』前編(note短編小説)

 わたしの初恋の場所は、“物語美術館”だった。
 なぜ、花弁が舞い踊る、満開の桜の木の下ではなく、歓声と熱気が渦巻く学園のグラウンドでもなく、蜂蜜色の光に包まれた放課後の教室でもなく、森閑の森と化した夕暮れの図書室でもなく、
無邪気な音たちが戯れる音楽室でもなく、“物語美術館”という摩訶不思議で聞き慣れない場所なのか、それはわたしにもわからない。
 けど、その摩訶不思議で聞き慣れない場所で、わたし

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