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30日間の革命

100
毎日小説をアップしていき、100日間で1つの作品を作り上げます。
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#創作

30日間の革命 #毎日小説33日目

30日間の革命 #毎日小説33日目

 集会当日の朝、準備のためメンバー全員は学校が開門する7時30分に学校へ集合した。

 「やべー。いつもならまだ余裕で寝てる時間だよ」

 加賀はまだ眠たそうに目をこすりながら話した。そんな加賀にお構いなしで、坂本はメンバーへ呼びかけた。

 「さあ、最終準備と流れの確認を行うわよ」

 第二視聴覚室にて、イスのセッティングや簡単なリハーサルなど、最終準備が行われた。会場のセッティングは前日までに

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30日間の革命 #毎日小説40日目

30日間の革命 #毎日小説40日目

 その日からメンバーは各班に分かれて、それぞれの役割に応じて行動を開始した。坂本と馬場は第二視聴覚室にて、集会の内容と今後の展開などを計画し、加賀、神原、手崎は集会への参加者を集めるべく、色々な学生へ声をかけていた。

 「しかし、100人集めるって結構大変だよな。3人で分担すると、単純計算でも1人33人くらいは集めなきゃいけないなんて割と無茶だよな」

 加賀は、神原と手崎と時折図書室に集まって

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30日間の革命 #毎日小説42日目

30日間の革命 #毎日小説42日目

 6月に入ってから、気温は急に上昇し始めていた。日中は30度を超す日もあり、夏服に衣替えした学生たちは、既にうちわなどを持ち寄る姿も見られていた。

 加賀は翌日、いつも通り始業ギリギリの時間に登校した。少し走ったため、既に少し汗ばんでおり、自分の席につくなりさっそくカバンからうちわを取り出しあおいだ。

 「あちー。まじでこのペースで暑くなったら、いよいよ日本も四季がなくなるな」

 すると、前

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30日間の革命 #毎日小説45日目

30日間の革命 #毎日小説45日目

 日常とは、何も変わらないようで確実に変化しているものである。白の会が発足してから、メンバーたちの生活も、少しずつではあるが、確実に変化していた。それは加賀のように、良い方向へ変化する場合もあるが、全員が必ず良い方向へ向かうとは限らない。

 手崎はもとより地味で目立たない存在だった。それに加えて、毎日一人で将棋を指していることで周囲からバカにされることも多かった。ただ、それくらいなら手崎も気にし

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30日間の革命 #毎日小説46日目

30日間の革命 #毎日小説46日目

 「2年の手崎って子、女バレのキャプテンに目をつけられたらしいよ」

 「加賀先輩に馴れ馴れしくして、江藤さんが怒ってるんだって」

 翌日から、手崎に関しての噂も広がっていった。噂というものは、人から人へ伝わる過程で、姿を変えていく。その様子は、人の欲望を餌にしながら大きく育っていくようだった。

 手崎が感じていた「視線」とは、この噂が原因だった。今まで手崎のことを知る学生は少なかったが、ほと

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30日間の革命 #毎日小説47日目

 橋田が江藤に近づくのは、女子バレー部の次期キャプテンになるためだった。キャプテンに選ばれるためには、現キャプテンに指名をしてもらうことが、最も確実な方法である。下手に近づけば、キャプテンに目をつけられるリスクはあるが、少しでもキャプテンに近づくため、橋田はこの方法を選んだ。

 そして、橋田がキャプテンになりたい理由は、他の学生とは異なるものだった。女子バレー部のキャプテンになりたい者の多くは、

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30日間の革命 #毎日小説48日目

30日間の革命 #毎日小説48日目

 橋田は手崎とは違うクラスだったため、放課後に接触することにした。そして、授業が終わると図書室へ向かった。

 図書室に訪れると、そこには数人の生徒しかいなかった。そして、その中に手崎の姿を見つけることができた。噂通り、図書室の隅で一人将棋を指していた。

 (ほんとに一人で将棋やってんじゃん。家に帰ってからやれば、誰かに変な噂言われなくても済むのに、頭悪いのかな)

 橋田は心の中でそう思った。

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30日間の革命 #毎日小説49日目

 橋田は手崎の手を引きながら、屋上から更に上へつながる階段を進んでいった。そして、階段を上りきり外へ出ると、そこにはベンチが置いてあった。

 「なんだ、こんな場所があったんだ」

 橋田は驚いたが、ちょうど人目につかない場所だと思い、それまで引っ張て来た手崎の手を離した。手崎は相変わらず泣き続けていた。

 「ほら、もういい加減泣き止みなよ。それに、そんなに泣かせるほど私はきついこと言ってないで

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30日間の革命 #毎日小説51日目

30日間の革命 #毎日小説51日目

 手崎は橋田の胸を借りて泣いた。今までこんなに泣いたことはなかった。誰かに嫌われたり陰口を言われることが、こんなにも悲しくて、辛くて、そして悔しいことなんだと手崎は思った。

 それから5分ほど泣き続けた。その間、橋田は無言で手崎のことを支えていた。だんだんと沈んでいく夕日が二人の影をひっそりと薄めていった。

 しばらくすると、下校を促す放送が流れた。

 「ほら、もうすぐ下校時間だよ。あんたま

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30日間の革命 #毎日小説52日目

30日間の革命 #毎日小説52日目

 この日、江藤はいつも通りバレー部の朝練に出ていた。朝の江藤は機嫌が悪い。この日の朝練では、後輩たちの連携ミスが目立ったため、特に機嫌が悪かった。練習も途中で中断し、罰として過酷な筋力トレーニングを科した。

 「やる気がないなら辞めろよ」

 江藤の怒号が体育館に響いていた。

 そして、部活が終わり部室で着替えを行うが、いつもなら雑談などでわいわいしている部室も、この日に限っては重たい沈黙に包

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30日間の革命 #毎日小説53日目

30日間の革命 #毎日小説53日目

 「お、お先に失礼します!」

 女子バレー部の部員たちは、江藤に挨拶をしながら早々に部室を後にした。橋田も、そうせざるを得なかった。部室から教室へ戻る途中、2年生の部員たちは手崎の話題でもちきりだった。

 「江藤さん、めっちゃキレてたよね。手崎って子、まじでヤバいんじゃない」

 「てか、よくあそこまで粘れたよね。私なら、帰れって言われたらすぐ帰るよ」

 「それよりも、このせいで明日から江藤

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30日間の革命 #毎日小説54日目

30日間の革命 #毎日小説54日目

 江藤は、女子バレー部のキャプテンになってから、全て自分の思い通りに物事が進んでいた。誰も逆らう者はおらず、教師ですら干渉してこない。江藤がかつて憧れた女子バレー部のキャプテンを超える存在になれたことに、江藤は満足をしていた。

 しかし、今自分自身の目の前にいる、小さくてひ弱な女子生徒は、自分の指示に「嫌です」とはっきりと答えた。江藤のプライドは、それを許すことが出来なかった。

 「お前さ、今

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30日間の革命 #毎日小説57日目

30日間の革命 #毎日小説57日目

 江藤は授業が終わるのを心待ちにしていた。自分に対して、生意気にも歯向かってきた手崎を徹底的に追い込もうと息を巻いていたからだった。手崎にあえて部室の鍵を託したのも、逃げられなくするためだった。もし、部室の鍵を返しに来なければ、それはそれでバレー部に迷惑をかけたという理由も加わり、より追い込むことが出来る。もし素直に返しにくれば、その時点で、女子バレー部全員を巻き込んで、手崎を追い込む算段だった。

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30日間の革命 #毎日小説58日目

30日間の革命 #毎日小説58日目

 「せっかくこっちが穏やかに話を進めようとしてるのに、何だよその態度は」

 江藤は今朝と同様に、手崎へ詰め寄った。

 「わ、私は白の会を辞めるつもりもありませんし、バレー部にも入部しません! だ、だから、部室も掃除しませんし、言いなりにもなりません! それでは失礼します!」

 手崎は、半ばやけくそのように大声で江藤へと言い返した。そして、そのままの勢いでバレー部の部室から飛び出した。

 「

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