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30日間の革命 #毎日小説46日目

 「2年の手崎って子、女バレのキャプテンに目をつけられたらしいよ」

 「加賀先輩に馴れ馴れしくして、江藤さんが怒ってるんだって」

 翌日から、手崎に関しての噂も広がっていった。噂というものは、人から人へ伝わる過程で、姿を変えていく。その様子は、人の欲望を餌にしながら大きく育っていくようだった。

 手崎が感じていた「視線」とは、この噂が原因だった。今まで手崎のことを知る学生は少なかったが、ほとんどの女子生徒の間で、手崎の名前は知られることとなった。

「江藤先輩、手崎のことだいぶ噂になってますね」

 女子バレー部に所属している2年の橋田加代子が、部活終わりに江藤へ話しかけた。橋田は、白の会の集会へ偵察に行き、江藤へ手崎のことを報告した張本人である。

 「そう。それで、その手崎って子はどんな様子なの」

 江藤は、着替えをしながら橋田へ聞いた。

 「私の見る限り、まだ本人は気づいていないようですね。いつもと違う雰囲気になっていることは気づいているっぽいですけど、何が原因かまではわかってなさそうです」

 「そう。まあ、その『白の会』っていうのに入るのは自由だけど、セトに勝手に近づかれちゃ、みんな困惑するよね。他の女子生徒だって、セトと話したいと思ってるのに、我慢してる子も多いんだから。そこはちゃんとしてもらわないと学校の風紀が乱れるわ。あなたもそう思うでしょ?」

 加賀に話しかけてはいけないといったルールは当然存在しない。手崎に落ち度があるようにするための、完全なるこじつけであった。それは橋田もわかっていた。しかし、江藤の表情を見れば、「はい」と答える以外の選択肢は見つからなかった。

 「は、はい。私もそう思います。良かったら、私が手崎に直接言いましょうか?」

 橋田の提案に、江藤は少し考えてから答えた。

 「手崎って子も、いきなり何か言われたら驚くでしょ。まずは筋を通してもらうために、私のとことへ挨拶にくるように言ってもらおうかしら。その言付けをあなたにお願いしてもいいかしら」

 「は、はい。もちろんです。では、さっそく明日にでも手崎に言ってきますよ」

 「そう。よろしくね」

 そう言い残し、江藤は部室を後にした。

 「はぁー。緊張した。江藤さんって雰囲気だけで怖さが伝わるんだよな。下手したら、私が目をつけられそうだし。しかし、手崎って子も可哀想だな。江藤さんに目をつけられたら、もう加賀先輩へは近づけないだろうな。ま、それをチクったのは私なんだけどね」

 江藤がいなくなったのを確認して、橋田は独り言をつぶやいた。橋田が江藤に近づくのには理由があった。


▼30日間の革命 1日目~45日目
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