榎木英介

一般社団法人科学・政策と社会研究室代表理事。病理専門医、細胞診専門医。科学技術政策、医…

榎木英介

一般社団法人科学・政策と社会研究室代表理事。病理専門医、細胞診専門医。科学技術政策、医療政策ウォッチャーです。

マガジン

  • インディ病理医・科学ジャーナリスト榎木英介の”機微”だんご

    フリーランスの病理医兼科学ジャーナリストである榎木英介が、病理、医療業界や博士号取得者のキャリアパス、科学技術と社会に関する「機微」な話題を語ります。組織に属しない「インディペンデント(インディ)」ならではの忖度ない意見や他では公開できない情報を惜しみなくつづっていきます。 榎木の作った“機微だんご“、うまいかまずいか。まずは試しておくんなさい。うまかったらお仲間になっとくれ。 マガジン購読すると単品購入よりお安く記事を読むことができます。

記事一覧

ポジショントークを超えられる人

 最近、というか以前からではあるが、SNS上の人々の投稿含めて、様々な言説が「ポジショントーク」なのではないか、と思わざるを得ないケースが多い。  先日のFラン潰し…

榎木英介
23時間前

アカデミック・ドッペルゲンガーの恐怖

 ネイチャー誌の投書欄に、驚くべき体験談が掲載されていた。  その投書はこれだ。  以前、研究不正の動向のところで触れた略奪的会議。  粗雑な会議に出席してお金…

榎木英介
1日前
1

関西と東大

 イブリースさんが、東大卒のメリットについて書かれていた。  確かに頷ける面はある。要は「信用」みたいな部分に東大卒が寄与するのだ。  私自身の(怪しげな)物書…

榎木英介
2日前

YESかハイかで開いた活路

 子供のころ抱いた夢や漠然とした予想。  まったくとは言わないまでも、思いもしなかった人生を歩んでいる。  大まかな方向性は思い通りではある。いわゆる理系に行く…

榎木英介
3日前

人生の”下り方”

 先日何気なくテレビをつけたら、あいみょんが新アルバムの宣伝をしていた。  あいみょんは西宮市出身。お母さんが私より年下という、子供世代にあたるけど、はやくも今…

榎木英介
4日前
2

「Fラン潰して東大無償化」のグロテスクさ

 東大の授業料値上げが大きな反発を巻き起こしている。  私の意見はここに書いておいた。  ここにきて、というか、定期的に、いわゆるFランクの大学を潰せば東大を無…

榎木英介
5日前
3

研究者と「社会リテラシー」

 自民党の総裁選が始まった。 https://www.jimin.jp/sousai24/  上記の投稿は、あくまで自民党の公式ページのなかに書かれている「所見」を紹介しただけだ。A41枚の「…

榎木英介
6日前

「人材」の振れ幅

 大学の教養時代のクラスメイト、岡田光信氏、まどろっこしいので岡田君と呼びたいが、この岡田君が話題だ。  話題なんてものではない。頭抜けている。  宇宙ゴミと言…

榎木英介
7日前

東大授業料値上げ反対の学生を支持します

 東京大学が、来年度の入学生の授業料値上げの方針を発表した。  ちょっと長いが、PDFファイルの文章の核心を紹介する。  確かに博士課程の学生への配慮、授業料免除…

榎木英介
8日前
3

診断と研究の「離婚」

 近年、言ってしまえばこの20年、医学部における病理学研究は大きく変わってきた。  病理学というのが、病気のことわり(理)を研究する、つまりどのように病気が起き…

榎木英介
9日前

兵庫県の病理医の現状

 私は兵庫県を中心に、大阪でも働くフリーランス病理医だ。  もともとは神奈川県横浜市出身だが、神戸大学医学部に学士編入したのもあって、兵庫県に定着してしまった。…

榎木英介
10日前
2

氷河期世代と「帰還兵」

 戦争には兵士が必要だ。  大量動員され、戦場に駆り出される。今ウクライナで起こっている事態だ。  しかし、戦後、兵士は必要なくなる。武装解除され、社会に復帰し…

榎木英介
11日前
1

「組織を守る」の行き先

 合計3年勤務した古巣である赤穂市民病院に関する記事を読むたび、心が痛い。  いわゆる「竹田くん」のモデルとなった医師が起こした医療事故。それ自体はもちろん大き…

榎木英介
12日前

振り返れば危機だった

 今までの人生、何度もピンチがあった。  一番大きいと思っていたのが、27歳で博士課程の研究室を追い出されたとき。  二度目が医学部の研究室を追い出されたとき…。…

榎木英介
13日前
1

想像できなかった未来

 先日声優の田中敦子さんが亡くなられた。  享年61。まだまだお若かった。私と9歳しか違わないではないか…。心よりご冥福をお祈りする。  記事でも触れられている通…

榎木英介
2週間前

日本は「解雇自由」な国

 河野氏の解雇規制緩和でネット上も喧喧囂囂の議論の議論が飛び交っている。  解雇規制が緩和されたら、安定雇用がなくなり、かつてのアカデミアのように国力低下等の惨…

200
榎木英介
2週間前
ポジショントークを超えられる人

ポジショントークを超えられる人

 最近、というか以前からではあるが、SNS上の人々の投稿含めて、様々な言説が「ポジショントーク」なのではないか、と思わざるを得ないケースが多い。

 先日のFラン潰して東大に金を、もそうだ。

 自分が得をするような言説をするのが、まあ言ってしまえば人間というものではある。

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アカデミック・ドッペルゲンガーの恐怖

アカデミック・ドッペルゲンガーの恐怖

 ネイチャー誌の投書欄に、驚くべき体験談が掲載されていた。

 その投書はこれだ。

 以前、研究不正の動向のところで触れた略奪的会議。

 粗雑な会議に出席してお金も時間も無駄にした、という話だったが、被害はそれにとどまらない。

 知らない間に自分が会議に出ていて、論文まで出ていたという。

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関西と東大

関西と東大

 イブリースさんが、東大卒のメリットについて書かれていた。

 確かに頷ける面はある。要は「信用」みたいな部分に東大卒が寄与するのだ。

 私自身の(怪しげな)物書きを中心とする本業以外の様々な活動も、多少は東大卒に助けられてはいると思う。東大内では微妙な立ち位置の理科2類入学であっても、学部進学後は特に科類を聞かれるわけでもなく(あなた理1ですか、みたいなことは言われたことがあるが)、ざっくりと

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YESかハイかで開いた活路

YESかハイかで開いた活路

 子供のころ抱いた夢や漠然とした予想。

 まったくとは言わないまでも、思いもしなかった人生を歩んでいる。

 大まかな方向性は思い通りではある。いわゆる理系に行くという方向だ。

 ただ、それは東のほうに向かっている程度で極めて雑だ。神戸から東だと、名古屋なのか金沢なのか東京なのか仙台なのかは分からない。

 東京に向かったつもりだったが、いつのまにか釧路にいた…。そんな感じだ。

 なんでこう

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人生の”下り方”

人生の”下り方”

 先日何気なくテレビをつけたら、あいみょんが新アルバムの宣伝をしていた。

 あいみょんは西宮市出身。お母さんが私より年下という、子供世代にあたるけど、はやくも今年20代最後だという。私とて20代前半で子供がいたら、30近い子供がいてもおかしくないのだなと思うのだが、私の29年前は大学院生で、女性と交際したことすらなかったのだから、そりゃ無理だ。

 それはさておき、30歳を目前として、不安と期待

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「Fラン潰して東大無償化」のグロテスクさ

「Fラン潰して東大無償化」のグロテスクさ

 東大の授業料値上げが大きな反発を巻き起こしている。

 私の意見はここに書いておいた。

 ここにきて、というか、定期的に、いわゆるFランクの大学を潰せば東大を無償化できるという意見が出る。

 正直言って不愉快すぎる意見だ。

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研究者と「社会リテラシー」

研究者と「社会リテラシー」

 自民党の総裁選が始まった。

https://www.jimin.jp/sousai24/

 上記の投稿は、あくまで自民党の公式ページのなかに書かれている「所見」を紹介しただけだ。A41枚の「所見」だから、短いものだ。

 学術政策がどうなるかは、私の団体であるカセイケンで、立憲民主党の党首選とあわせて、アンケートを送付し、回答を待っているところだ。

 とはいえ、そのA41枚に科学技術・学術

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「人材」の振れ幅

「人材」の振れ幅

 大学の教養時代のクラスメイト、岡田光信氏、まどろっこしいので岡田君と呼びたいが、この岡田君が話題だ。

 話題なんてものではない。頭抜けている。

 宇宙ゴミと言えば彼みたいな人材になっている。

 彼がシンガポールに行って起業する直前、渋谷の東急プラザにあったロシア料理屋ロゴスキーで行われた飲み会で会っている。

 その時の写真は以下の記事で使った。

 岡田くんだけではない。記事の主人公、巽

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東大授業料値上げ反対の学生を支持します

東大授業料値上げ反対の学生を支持します

 東京大学が、来年度の入学生の授業料値上げの方針を発表した。

 ちょっと長いが、PDFファイルの文章の核心を紹介する。

 確かに博士課程の学生への配慮、授業料免除の枠の拡大など、配慮はしている。

 しかしながら、問題点は多い。この唐突の発表に納得することはできない。学生たちとの約束を守っておらず、夏休みという学生がまだ学内に戻ってきていない時期を狙い撃ちしたかのような発表を行ったからだ。

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診断と研究の「離婚」

診断と研究の「離婚」

 近年、言ってしまえばこの20年、医学部における病理学研究は大きく変わってきた。

 病理学というのが、病気のことわり(理)を研究する、つまりどのように病気が起きるのかを分子レベルで研究することだとすると、何も病理専門医の資格を持っている必要はない。

 というわけで、主要旧帝大(という区分はあまり好きではないが)では、病理学研究をするのは病理医ではなくなっている。

 阪大の教授だった仲野徹氏な

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兵庫県の病理医の現状

兵庫県の病理医の現状

 私は兵庫県を中心に、大阪でも働くフリーランス病理医だ。

 もともとは神奈川県横浜市出身だが、神戸大学医学部に学士編入したのもあって、兵庫県に定着してしまった。同級生に関東出身者も少しはいたが、概ね関東に帰ってしまったのだが。

 というわけで、兵庫県の病理診断に寄与しようとしているが、兵庫県の病理医もなかなか厳しい状態だ。

 ちょうど厚労省の医道審議会の医師専門研修部会の資料が公開されていた

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氷河期世代と「帰還兵」

氷河期世代と「帰還兵」

 戦争には兵士が必要だ。

 大量動員され、戦場に駆り出される。今ウクライナで起こっている事態だ。

 しかし、戦後、兵士は必要なくなる。武装解除され、社会に復帰していく。帰還兵、復員兵、退役軍人だ。

 これがなかなか大変だ。帰還兵が大量に職を求めても、なかなか思ったとおりの職を得られないということが起きる。心の傷を負った帰還兵が自死する、犯罪を犯すといったことも起こる。

 日本では太平洋戦争

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「組織を守る」の行き先

「組織を守る」の行き先

 合計3年勤務した古巣である赤穂市民病院に関する記事を読むたび、心が痛い。

 いわゆる「竹田くん」のモデルとなった医師が起こした医療事故。それ自体はもちろん大きな問題であるが、それ以上に問題があるのが、病院の医療安全に対する姿勢だ。

 医師に偽証を求めるというあってはならないことをした。

 その理由が、記事のなかに書かれていた。

 赤穂市民病院の行動原理は、この管理職の言うことに書きつくさ

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振り返れば危機だった

振り返れば危機だった

 今までの人生、何度もピンチがあった。

 一番大きいと思っていたのが、27歳で博士課程の研究室を追い出されたとき。

 二度目が医学部の研究室を追い出されたとき…。

 だと思っていた…。

 しかし、それ以上のピンチに陥っていたかもしれないな、と思い、ちょっとゾッとしている。

 それは、赤穂市民病院に勤務したことだ。

 先日医療事故に関する民事訴訟の公判があり、ある恐るべき事態が明らかにな

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想像できなかった未来

想像できなかった未来

 先日声優の田中敦子さんが亡くなられた。

 享年61。まだまだお若かった。私と9歳しか違わないではないか…。心よりご冥福をお祈りする。

 記事でも触れられている通り、田中さんの代表作は「少佐」こと、攻殻機動隊の草薙素子役だろう。

 攻殻機動隊は私も大好きで、士郎正宗のコミック、映画版、各種のTVシリーズは概ね見ている。DVDも複数持っている。映画も観に行った。

 なんと言っても、電脳てネッ

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日本は「解雇自由」な国

日本は「解雇自由」な国

 河野氏の解雇規制緩和でネット上も喧喧囂囂の議論の議論が飛び交っている。

 解雇規制が緩和されたら、安定雇用がなくなり、かつてのアカデミアのように国力低下等の惨状になるという意見が出ている。

 確かにそういう側面があると思うのだが、一つ忘れ去れれていることがある。

 日本は中小企業がバシバシ従業員を解雇する国であるという事実だ。

 判例や大手企業とは異なる別の世界が存在し、こうした雇用を考

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