榎木英介(フリーランス病理医・科学ジャーナリスト賞受賞者)
フリーランスの病理医兼科学ジャーナリストである榎木英介が、病理、医療業界や博士号取得者のキャリアパス、科学技術と社会に関する「機微」な話題を語ります。組織に属しない「インディペンデント(インディ)」ならではの忖度ない意見や他では公開できない情報を惜しみなくつづっていきます。 榎木の作った“機微だんご“、うまいかまずいか。まずは試しておくんなさい。うまかったらお仲間になっとくれ。 現在毎日休まず更新中!マガジン購読すると500円でひと月の記事をすべて読めるので、単品購入よりお得!
医学部医学科に学士編入して入った経験から考えたことを綴った記事をまとめました。
ある文章が私の心に突き刺さった。 この文章だ。 ああ、似てる、と思った。私自身、死のうと思ったことがあるからだ。 この件は、何度か書いているし、ツイートもしている。 他にも何個かあるが、とりあえずこくらいにしておこう。 記事はぜひ読んでほしいなと思うが、重要なことを述べている。 本当にその通りなのだ。何も見えなくなっている状態。これで全てが終わっているという絶望的な気持ち。 首にザイルをかけてから25年。「未来人」の視点から見れば、あの時のピンチ
フリーランスなどという医師では異形の働き方をしている私だが、完全に世捨て人になったわけではない。 一応人との関係を全て断っているわけではないし、頼みごとをされたら、なんとか答えようと努力はしている。 意外かと思われるが、義理人情は大切にするほうだ。
好評だったNHKの朝ドラ「虎に翼」が最終回を迎えた。 終盤詰め込みすぎといった批判も出たし、賛否もあるテーマを扱ったが、概ね好評だったのではないかと思う。 そんな内容は別にして、こうした年代記ドラマの終盤に思うことがある。 演者が全然老けていないことだ。 最後航一さんがなかなかな老けメイクをしていたが、それでも岡田将生の若さが滲み出ていた。 たまにしか出ていないが、久保田先輩を演じた小林涼子の若々しさはまぶしかった。 まあ仕方ない面はある。演劇として
いわゆる「在野研究者」がScience誌の表紙を飾る研究論文の著者一人になる…。 こんな心躍るストーリーがNHKで紹介された。 記事はこれだ。 これは9月29日朝の「おはよう日本」で紹介された。以下はNHKプラスへのリンクで、放送部分にダイレクトに飛ぶようになっている。いずれリンクが切れるのでご注意。 取り上げられたのは萩野恭子博士。 萩野博士がフルタイムで研究機関などに所属していない「在野研究者」という側面が強調されているが、論文の内容が画期的だ。
「病理の写真を撮ってください。なるべく早く」 ああ、そういうシーズンだなあ。秋は、というか秋も学会シーズン。症例の発表をしたいので、病理組織標本を写真を撮ってください、という依頼が相次いでいる。 フリーランスで仕事しているので、結構影響は大きい。複数の施設に勤務しているので、一つの施設にいる時間は短い。写真を撮る時間が診断時間を圧迫してしまい、結構悩ましい。 この「写真撮って」は、病理医共通の悩みだ。 時間の余裕があればいいのだが、今日まで、明日まで、今週ま
自民党新総裁に石破茂衆議院議員が選出された。 Xのタイムラインでは様々な声が聴かれるが、どのような結果が出てもそうか、と思うだけだ。日本が終わるとかなんとかは極端すぎる。 まだ総選挙もあるわけだし、国民としては淡々とやっていこう。 さて、新総裁石破氏が高等教育や科学技術政策にどのような影響を与えるのか。そのあたりを考えてみたい。 正直いうと、石破氏が科学技術政策に対して明確な意図を持っているとは思えない。 https://www.jimin.jp/sous
最近Apple Watch(第6世代)を活用している。 大きいのは、モバイルICOCAに対応していることだ。 これで移動がとてもラクになった。右手にApple Watchをつけて、ピッとやるだけで移動ができる。 お金のチャージもウォッチで完結するし、自販機などで買い物もできる。だから、基本的に現金を持ち歩かず、ウォッチだけ着けていたら手ぶらでもオッケーなのだ。基本的に。 常時身につけているので、なくしたり落としたりもしない。i-phoneやMacBookのロ
フリーランスみたいななんの力もない、吹けば飛ぶような仕事をしていると、ある能力が不可欠になる。 それは…。 風を読む力だ。
最近医師のワーケーションが話題になっている。 フルタイムの勤務は難しくても、週に数日勤めてもらえればありがたいという地域が、宿泊費、交通費などを出して医師を募集している。斡旋する会社もある。 なかなか食指を動かされる話ではある。 医師にとって気分転換になるし、一日でも応援があれば常勤医が休めるのは、受け入れ病院にとってもありがたいだろう。 私自身フリーランスとして各地を転々とする毎日なので、勤務先の一つを観光地にしてちょっとエンジョイなんてできたらいいなと思
SNSにおいて何かを発言するときに極めて強いカードとなるのが、何かの被害者だということだ。 こんなに酷い目に遭っていたんです、あなた遭ったことがあるのですか?と言われてしまうと、黙らざるを得なくなってしまう。 もちろん、実社会ではそこまで影響はないのだが、SNSだとバズることが多く、私は何かの被害者です、と申し立てている人が多い。
「直美」という言葉をご存じだろうか。 臨床研修後に直接美容外科医として勤務するという医師たちのことを指す。 近年急速に問題として取り上げられることが多くなっている。 ある程度スキルのある医師が美容外科に流れている話も含め、医師たちが自由診療で「稼げる」可能性がある美容外科に流れる事態は、医療界で大きな問題となりつつある。 私の本業である病理医からしたら、結構遠い話だとは思う。 そもそも病理医は、「稼げる」で診療科を選んでいない。やりがいや働き方など、別の
レバノンで起きたポケベル、無線機爆発事件は、大きな衝撃を与えた。 上の記事の写真に目を凝らすと、ICOMの文字が出ている。日本の無線機メーカーであるICOMのラベルのついた無線機が爆発したのだ。 ICOM社はホームページで調査の経過を随時報告している。 https://www.icom.co.jp/ 現在のところ、ICOM社製である可能性はかなり低く、偽物が使われたようだ。 ひとまず日本企業に疑いがかからずよかったと思う。 しかし、この事件は民生品を使
最近、「ブルーカラー」が大きな議論の的となっているようだ。 人々が思っている「ブルーカラー」がどうもずれていたり、脳内イメージだったりして、かみ合っていないような感じもするが、室外で汗をかき、体を使い汚れる仕事がブルーカラーで、それを見下している人が多いということが議論になっている どうもブルーカラーは、体という資本さえあれば参入できる、参入障壁が低いと思われていることが、その偏見の源のようだ。 しかし、ブルーカラーという言葉でくくるには雑すぎる多様な職業がある
最近、というか以前からではあるが、SNS上の人々の投稿含めて、様々な言説が「ポジショントーク」なのではないか、と思わざるを得ないケースが多い。 先日のFラン潰して東大に金を、もそうだ。 自分が得をするような言説をするのが、まあ言ってしまえば人間というものではある。
ネイチャー誌の投書欄に、驚くべき体験談が掲載されていた。 その投書はこれだ。 以前、研究不正の動向のところで触れた略奪的会議。 粗雑な会議に出席してお金も時間も無駄にした、という話だったが、被害はそれにとどまらない。 知らない間に自分が会議に出ていて、論文まで出ていたという。
イブリースさんが、東大卒のメリットについて書かれていた。 確かに頷ける面はある。要は「信用」みたいな部分に東大卒が寄与するのだ。 私自身の(怪しげな)物書きを中心とする本業以外の様々な活動も、多少は東大卒に助けられてはいると思う。東大内では微妙な立ち位置の理科2類入学であっても、学部進学後は特に科類を聞かれるわけでもなく(あなた理1ですか、みたいなことは言われたことがあるが)、ざっくりと東大卒で存在の怪しさを中和できた面はあるかと思う。 これが仕事だと途端に「効