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【創業組が嫉妬する!?2代目専門マネジメント術①】自己紹介 小さな洋菓子店がミッション経営を始めたわけ。

初めまして!

ご訪問ありがとうございます。

僕は、兵庫県西宮市夙川の老舗洋菓子店「エルベラン」二代目オーナーシェフの柿田衛二です。

簡単に僕の事を紹介いたします。

柿田 衛二

1972年生まれ

夙川生まれ夙川育ち

神戸海星マリア幼稚園卒園

私立仁川学院小学校卒業

私立甲南中学校から甲南高校を経て甲南大学法学部卒業

1995年阪神大震災の年に奈良「ドイツ菓子ゲベック」就職

1999年エルベラン入社

2000年フランスブルターニュ地方の中核都市レンヌにある「パティスリ       ールダニエル」およびフランス国立製菓専門学校にて研修

2011年東日本大震災の年にエルベラン2代目オーナーシェフ就任

現在はシェフ業のかたわら「船井総研」の講師や大学の特別講師などにも携わらせて頂いております。

エルベランの創業は1964年。当時、バタークリームが主流の洋菓子の時代の中で、生クリームにこだわり、本当に美味しい素材にこだわった甘さ控えめのお菓子作りをするお店として産声を上げました。

エルベ開店初日

 (エルベ開店初日の写真)

以来50年余り、マーガリンや植物油脂の入ったクリームを使わず、カルピス低水分バターや白バラ乳業特注のノンホモ35%生クリーム、ヴァローナ社のチョコレートだけを使ったお菓子作りにたくさんのお客様に共感頂きながら地道に営業を続けてまいりました。

エルベラン材料jpg

まず、初回の今日は、そんな地方の洋菓子店がとあるきっかけでミッション経営と出会い、大きく成長したストーリーを皆さんと共有させて頂くと共に、まずは僕の事、私たちエルベランの事を知って頂ければと思います。

その① 父の背中を見て実感した「セルフブランディング」の限界

エルベランは、先代=僕の父が創業した洋菓子店です。

父は、素材を活かした美味しいケーキを作ると共にギフト開発にも早くから力を入れて、クッキーを主力商品とした経営体制を確立。他店に比べても遥かに安定した経営環境を築きました。

エルベランクッキーホワイト

エルベランの看板商品:エルベランクッキーホワイトチョコレートサンド

エルベランクッキーミルク

エルベランの看板商品:エルベランクッキーミルクチョコレートサンド

また、それと同時に力を入れたのが、自ら店頭に立ってお客様に接して柿田 衛と言うキャラクターでお客様の心を捉える「セルフブランディング」です。

父の才能は、こちらにもいかんなく発揮し「エルベのおっちゃん」とお客様みんなに親しまれるまるでカーネル〇ンダースのような夙川の名物おやじになりました。

マネジメント、あるいはマーケティング的に言えば、私たちのような小さなお店、会社にとって「セルフブランディング」は最も効果的な成功への近道とされています。

夙川名物「エルベのおっちゃん」はまさにマーケティングとして成功しました。お客様は、エルベのおっちゃんの事を信頼し、エルベのおっちゃんから商品を買いました。そしてエルベランは西宮でも指折りの洋菓子店へとなっていくのでした。

エルベラン第一創業期

おかげさまで商売繁盛、僕は先にご紹介した通り、私学の中高一貫校である甲南中学校~甲南高校、そして甲南大学とボンボン人生を歩ませて頂きました(笑)

そんな僕ですが、小さなころ、それこそ幼稚園に通っていた時にはもうケーキ屋になると決めていました。理由は社長になりたいから。社長になるにあたってケーキ屋になるのが一番早そうだと幼心に感じたんですね。だから大学を卒業してそのまま奈良にある「ドイツ菓子ゲベック」に飛び込みました。いわゆる他所の釜の飯を食ってこいと言うやつです。その後、フランス研修などを経てエルベランに腰を下ろします。

フランス私1

(フランス研修時代の写真)

そしてその時に実感したのが「セルフブランディングの限界」です。

どんなビジネス書、偉いマーケッターの本を紐解いても小さなお店や会社のままで40年間セルフブランディングを行った後の結果や弊害について言及されてはいません。何故ならビジネス成功本はいつもそう、大企業に成長した実績のある会社のみが成功事例の結果として示されるからです。

エルベランは、結果として街の洋菓子屋さんのままでした。

その理由の1つは味のクオリティを守るため。

もう1つはエルベランに人を見分け育てるシステムが不足していたからです。

僕が、エルベランに入った時に最初に口から出た言葉は

「えっ?なんや、この店は?」でした。

当時60歳を超えていた父と、まだ20歳そこそこの従業員との間に明らかにジェネレーションギャップの深いキャズムが横たわっており、父は指導する熱意を、従業員は仕事への自信を失っていました。

僕「これって普通こうせえへん?」

従業員「僕らエルベランだから知らなくても仕方ないんです、、、」

僕「これってこうした方が良いよね?」

従業員「僕らエルベランだから出来なくても仕方ないんです、、、」

一事が万事こんな感じでした。

エイジビックリ1

また、店頭でも問題が起こっていました。

父がいなければ商品を買わずに帰ってしまうお客様、父だったら安くしてくれるのだから安くしてくれと言うお客様の割合が異常に多くなっていたのです。お店も厨房も父次第。逆に言えば、エルベランと言う屋号はただの記号で父と言う存在がなければ無価値に等しい状況になっていました。

何歳になっても自分が先頭を切って仕事をしなければ何も始まらないし何も終わらない、、、

70歳を超えても自分が先頭に立ち続けた結果、父はひざを痛めて、その痛みから逃れるために酒量が増え、周囲の人間、母や僕たち夫婦、幼い子供、従業員にまで当たり散らすようになりました。

父の口癖は「ワシだけに働かせてお前らなにやってるんや!」

今なら分かります。リーダーがこの言葉を吐いたらおしまいだと。

お互いの信頼関係はゼロ。

まさに崩壊寸前。

そして僕は実感したのです。

「セルフブランディングだけじゃビジネスがいくらうまくいっても幸せにはなれないんだ。」と。

事業承継で父とすったもんだの取っ組み合いを演じ、その後2代目を襲名した僕はセルフブランディングに頼らないマネジメント、マーケティングシステムを模索することになります。そこで出会ったのが「ミッション経営」です。

その② みんなが幸せになるための「ミッション経営」

セルフブランディングの限界を目の当たりにした僕は、事業承継の時にひとつのゴールを定めます。それは、最終的にエルベランを企業に事業売却できるように育てる事でした。

企業に売却できるぐらいに経営体制、生産体制、雇用体制、販売体制を整える事で個人に頼らない経営を実現する。そうすれば、例えば自分の子供たちが継ぐとしても、また継がないとしても、僕の在り方に関わらずエルベランと言う看板に価値が生まれると考えたからです。

とはいうもののどうすればいいのか全く分かりません。

そんな僕に転機が訪れます。

それはとある経営者の方の一言でした。

「柿田さん、例えば柿田さんが設計図なしで建物を建てるとしますよね。じゃあ、どの位のものだったら建てられますか?普通に考えたら犬小屋ぐらいまでで、柿田さんと大事な家族が住む家を設計図なしではとても建てられないし、建てようとも思わないですよね?でもね、ビジネスで設計図を持ってないという事は、柿田さんと柿田さんの大事な家族、大切なスタッフのみんなが住む家を設計図なしで建ててるのと一緒なんです。ほとんどの社長さんが、犬小屋みたいな建物に家族や従業員の命を預けちゃってるんですよ?それでうまくいくわけないし、そんな運任せの経営なんて怖くないですか?」

それを聞いて僕は思いっきり頭を打たれたようなショックを受けると同時に、今まで胸につかえていたモヤモヤの正体がハッキリとわかりました。

「そうか、、、勘に頼って闇雲に柱を立てても床を貼ってもそりゃ上手くいかないに決まってるわ。こんな生活がしたい→こんな家が必要→設計図を描く→正確に必要なものを割り出す→それに合わせて準備する→設計図通りに建てる→描いた生活が手に入る。考えたら当たり前のことだけど、そんな事思いもしなかった!」

まさに目から鱗の一言でした。

そして、それを実現するのがマネジメントとしてのマーケティング(経営戦術としての狭義のマーケティングと要区別)とミッション経営です。

マネジメントは、マーケティング、フルフィルメント、オペレーションの3つの要素から出来ています。この3要素を具体的にあなたのビジネスに落とし込んだものが「ビジネスの設計書」になるのですが、その中でも最も重要なのがマーケティングです。ここで言うマーケティングとは、あなたの会社が市場や社会に対する約束を言います。

そしてこの約束がミッションです。

ミッション経営において、ビジネスとは世の中を良くするために存在すると位置付けられています。自分の会社や組織あるいはあなた自身が、この世の中をどう良くするのかを市場、社会に向けて宣言するのがミッションという訳です。

僕たちのようなモノづくりビジネスにおいての最も勘違いしやすい考え方に

「世の中に無いものを作ったら絶対売れるに違いない!」

「世の中に無いものを発明して、みんながビックリしたら大ヒット!」

と言う発想があります。

こういう発想を「プロダクトアウト」と言うのですが、一見そりゃ売れそうだと思いますよね?

ところがそうでもないんです。これが、、、

では、あなたにお聞きします。

「例えば僕が、世界初の釘が打てるプリンを開発したらあなたは買いますか?」

買いませんよね、買わないんです。

世界初でも宇宙初でもいらないものはいらない。当たり前ですよね(笑)

世の中を良くするビジネスとは、世の中にあって然るべきもので、まだ誰も気が付いていないものに光を当てることなんですね。この発想を「マーケットイン」と言います。そしてそれを発見して、実現するために何をするのかを世の中に宣言するのがミッションなのです。

ミッションを持つ事で、顧客の潜在的な欲求を洗い出し満たすことでし烈な企業間の価格競争から抜け出し、自社にしかない強みを生かした経営が実現する。これこそがミッション経営の最大のメリットなのです。

その③ 小さな洋菓子店のため実践ミッション経営

エルベラン外観写真

ここまで読んでくださったあなたは、当然エルベランでは、ミッション経営をどう取り入れていのか気になりますよね?

ミッションを取り入れるためにはまず、あなたの目的を明確にする必要があります。

エルベランの目的は

「お客様・スタッフ・関係生産者の皆さん・僕たち経営者の4者がともに幸せに豊かになること」です。

そして、エルベランのミッションは

「全てはほんまものの美味しさと子供たちの未来のために。私たちはほんまものの夙川品質と言う洋菓子体験を通じてお客様のありがとうを形にするお手伝いをいたします。そしてお客様の心と体に安心・安全といつまでも生き続ける幸せな想い出をお届けいたします」です。

目的とミッションの関係を説明しておきましょう。

僕はこれを手漕ぎボートでよく例えます。

あなたは今、上流にある島を目指して仲間と一緒に手漕ぎボートに乗って川をさかのぼっています。
ここで言う島があなたの目的、エルベランで言う所の4者がともに幸せに豊かになる事です。その島にたどり着くルートは決して一つではありません。そのルートを決めて、自分たちはこのルートを通ってあの島に行くんだ!と私たちのチーム、お客様、関係する生産者の皆さんに宣言するのがミッションに当たります。
つまり私たちエルベランは、私たちのミッション「全てはほんまものの美味しさと子供たちの未来のために。私たちはほんまものの夙川品質と言う洋菓子体験を通じてお客様のありがとうを形にするお手伝いをいたします。そしてお客様の心と体に安心・安全といつまでも生き続ける幸せな想い出をお届けいたします」を実行する事によって「4者がともに幸せに豊かになる」ことを実現する訳ですね。

東京商工リサーチに公開していますので書きますが、今から10年前、ミッションのなかった当時の売り上げは年商8800万円でした。
そこからミッション経営を知り、取り入れ、事業設計図を描いた事から、しだいに売り上げが伸び始めて、10年でついに2億1000万円まで成長しました。
店舗数は1店舗のまま、販売商品、主力商品も変わらず、しかも年間休日は80日以下から112日以上と30日ほど増え、労働時間の削減にも成功しています。
2023年には週休3日を設定する事にもチャレンジします!
お客様だけではなく、従業員、経営者そして関係する生産者の皆さんまで豊かにできる結果を生み出したのです。

スゴくないですか?、、、ミッション。

そしてミッションは、人材採用、人材育成にも大いに役立っています。

僕は、一人でも多くの方がご自身のミッションに気が付いくことを願っています。

それは、単に洋菓子業界のためだけではありません。

一番小さな単位では、あなたの自身の人生の経営者としてミッション経営者になって欲しいと願っていますし、自分の所属するチーム、会社のリーダー、社長、政治家、、、そういった人たちが正しくミッションを理解する事でこの世の中はもっと暮らしやすくなると確信しています。

創業組が嫉妬するような2代目マネジメント術で豊かで幸せな人生を送りましょう!

どうもありがとうございました。

エルベラン2代目オーナーシェフ 柿田衛二


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