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教員対談シリーズ 「評価について考える1」

ICTの活用が進み、豊かになる調べ学習や発表学習、教科横断や探究学習など、ペーパーテストのみでは測定が難しい力を評価することがますます求められてきている。

新学習指導要領では、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3観点から児童・生徒の学習を評価し、指導や学習の改善につなげることの必要性が強調され、教育業界内でも近年「評価」が話題になることが多い。

しかし、具体的にどのように評価し、学びの場で生かしていけば良いのか、悩む先生方も少なくない。高校情報科教員の勝田浩次氏は「小中学校では既に観点別評価が行われてきたが、新学習指導要領が始まるにあたり、高校でも観点別の評価が求められる方向へ変わってきている。また子ども達の学び方やツールが新しくなってきているので、それに関しても評価について考え直されるべき時が来ているのでは」と話す。

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勝田浩次先生

今回「教育について語ろう!」と題して、メルボルン大学大学院で教育評価について学び、現在オーストラリアで働くアセスメントデザイナー髙木俊輔氏と現役教員の勝田氏が対談。専門家である髙木氏に聞く「評価について」を全3回のシリーズで紹介する。
対談動画はこちら

評価に関心を持ったきっかけ


勝田氏「授業の中で、子ども達が経験から学んだりアウトプットしたとき、それをどのように見とっていけば良いか。子どもたちから提出された成果物にはそれぞれ良さがあるが、それをどうやって共通のものさしで測れば良いのか。どのように子ども達にフィードバックしていったら良いか。どう点数化したら良いか、悩んだ時期がありました。そこから『そもそも評価って何』と調べ始めました」と話す。

一方、髙木氏は、渡濠前に神奈川県内の私立中高で英語教員をしていた時「何かを学ぶ時、すごく要領良く身につける子がいる一方で、頑張っても思うように伸びていかない子がいました。そういう子たちが、学び上手になる手伝いをしたいと思っていました。自分の教え方を磨くことは大切だけれど、『教えたはずのことを生徒たちが身につけることができていない』という瞬間があり、教え方だけでは何か足りないなと思いました。どうすれば彼らがもっと効果的に学び取ることができるか、どのように支援したら良いかを考えた時『評価っておもしろいかもしれない』と思ったんです。」と評価に関心を持つようになったきっかけを話す。

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髙木俊輔先生


勝田氏「なるほど。『学んでもらいたい、力を身につけてもらいたい』となった時に、授業に力を入れたり、授業法に行きがちなところだと思うのですが、そこが『評価』に結びついたというのが面白いですね。」

髙木氏「僕の言う『評価』という言葉の意味合いは『学習者の学びをどう見とって、それに対してどうフィードバックして、伝えていくか』ということで、これも評価の機能の一つです。教えることは、もちろんすごく大事だけれど、教えたことが必ずしも生徒の本当の意味での『分かった』の保証になるかは分からないな、と思って。学術的にどういう文脈で研究されているかを調べた結果、それが『評価』だったんです。」

評価について専門的に学ぶまで、髙木氏にとって評価は「『いかに点数をつけるか、評定をつければ良いのか』の範囲を脱しないものだった」という。「『比較的立場が下にある人に対して下す評価』ではなく、別の意味合いとして勉強したいと思ったのが関心を持ったきっかけです。」と続ける。

そもそも、評価って何ですか?


勝田氏「『そもそも評価って何ですか?』と聞かれたら、髙木先生はどういう風に説明されますか?」

髙木氏「さきほど勝田先生が言っていたように、例えば生徒の成果物を見てどれくらい出来たかを測る目的の「評価」というのが1つあります。これは『総括的評価』と言い、一定期間の中で学習者がどれだけ学んだのかを測る評価を指します。よく学校で行われるような中間テストや期末テストは、その学期に学んだことを総合的に評価するので『総括的評価』です。たぶん日本の先生方は、この評価が多いですよね。」

勝田氏「僕らも、生徒も、そういう教育を受けてきた保護者の間でも『評価』というとそのイメージが強いと思います。」

髙木氏「評価にはあと2つ、『診断的評価』『形成的評価』があります。『診断的評価』は学習者がすでに持っている知識や、好む学習スタイルはどのようなものなのかなどの事前情報を集めるのが目的、『形成的評価』は学習プロセスの途中で評価を挟むことで、学習を支援するのが目的です。」


テストが手段から目的になってしまうことも

髙木氏は教員時代を振り返りながら、「どんな目的で行うのかが曖昧なままで、学校の年間スケジュールとしてその時期に組まれているからテストをしていた。まさにテストのためのテストを作っていたかもしれません。」と、自戒を込めて話す。勝田氏も「(評価の)目的が「子どもたちの成長」ではなく、「業務としてやらなければいけないから」というような部分もありますよね。」と続ける。

理想は3つの評価を回すこと

それでは、3つの評価をどのように活用していくのがよいのだろうか。

髙木氏は、「理想としては、『診断的評価』『形成的評価』『総括的評価』の3つの評価をスパイラルのように回していくのが望ましい」と話す。

勝田氏「最初に子ども達がどういう状態なのかという『診断的評価』、次にそれがどのように変化してきているのという『形成的評価』、最後にそのまとめとしてどのように力がついたのかを『総括的評価』で確認するということですね」


まとめ:評価を活用して、子どもの成長に寄り添う

勝田氏は言う。「3つの評価を活用し、最初はどんな状態で、どんな変化が起こり、どのように力がついたのかを確認するという3段階で子どもたちを見ていくのは、子どもたちの成長に寄り添うことができそうですね。」

髙木氏も「そうですね。評価について考えると、子どもたちの見方が変わるのが重要なポイントだと思います。」と話す。

ここで挙げられている3つの評価に次回は焦点を当て、実際の現場でどのように取り入れることができるのかを考えていく。
「評価について考える2」はこちら


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教育評価について学ぶことができる「評価を使って学びを支援!ゼロから学ぶ評価理論と実践」は、教育評価についての基本的な考え方と、学習者の学びを評価を使って支援するための方法を、講義とワークショップを通じて学ぶことができる研修です。教育評価の専門家である髙木氏が講師を務め、教育評価の理論を分かりやすく、実際の教室での実践に結びつけやすい形で学ぶことができると、多くの現職教員から好評をいただいています。


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お申し込みは、電話またはメールにてお問い合わせください。こちらの研修は「ICT × 学びアンケート」とのパッケージ、または研修単体でもお申し込みいただけます。
電話 : 03-5953-7820
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