水野 亮(3)
記事一覧
絵画と法則ー片山真妃|αMと遠近法
2024年7月19日金曜日、市ヶ谷のgallery αMで「開発の再開発 vol.6 片山真妃αMと遠近法」を見た。片山はコンスタントに活動している作家だが、自分は飛び飛びにたまに見ている程度で、個展としては2013年、2021年に開催されたものに続き、これが三回目の鑑賞となる。今回は過去に自分が見てきたなかではもっとも広いスペースでの開催で、この作家の空間に対する意識の高さが確認できるとても良
もっとみる壁と絵画ー境澤邦泰の絵に見る絵画の複時性
2024年2月23日金曜日(天皇誕生日)、両国のART TRACE GALLERYで展覧会「壁と絵画」を見た。「壁と絵画」は画家の境澤邦泰と批評家の松井勝正による企画で、境澤の絵画の展示、松井と境澤の論稿が収録された冊子の出版、会期中に開催されるトークイベントの三つの柱で構成される。冊子は会場で無料で配布されていて、pdf版をwebページからダウンロードすることもできる。展示だけ見ると境澤の個展
もっとみる世界の片隅から月へと向かう―恵比寿映像祭2024「月へ行く30の方法/30 Ways to Go to the Moon」
2024年2月2日金曜日、東京都写真美術館へ恵比寿映像祭2024の展示を見に出かける。今年で16回目の開催となる恵比寿映像祭(通称エビゾウ)は、インフルエンザにかかって見られなかった初回を除き、その後の展示は欠かさず毎年見ている。ただ昔に比べるとエビゾウも随分変わったという印象だ。以前は展示を見るだけでも一日がかりの大イベントという感じだったのだが、近年は予算額の縮小を憶測させるような地味な内容
もっとみるデイヴィッド・ホックニー展(二回目)鑑賞メモ
先日、二度目のデイヴィッド・ホックニー展の鑑賞のために東京都現代美術館を訪れた。正直なところ、一度見れば十分な気もしていたし、時間が経つにつれて最初の熱も冷めつつあった。それでも二回見るつもりでMOTパスポートを購入していたので半ば義務的に足を運んだのだが、あにはからんや、二度目の鑑賞は初回とはまた違った印象で、むしろ今回のほうが感動は大きかったかもしれない。
以下は二回目の鑑賞で抱いた感想&新
デイヴィッド・ホックニー展を見てデイヴィッド・ホックニーの絵の魅力について考える
先日、東京都現代美術館(MOT)でデイヴィッド・ホックニー展を見た。待望の展覧会で、どのくらい待望だったかと言うと、自分はこの展覧会を35年間待っていた。「日本では27年ぶりとなる大規模な個展」と謳われているが27年前の大規模個展=1996年に同じMOTで開催された「デイヴィッド・ホックニー版画展 1954-1995」は版画が中心の展示で、自分も見ているはずなのだが正直あまり記憶に残っていない。今
もっとみるABSTRACTION展を見て絵画における「抽象」について考えてみた。
先日アーティゾン美術館で開催されている展覧会「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開」を見に行った。西洋美術における19世紀末から20世紀半ばに到る抽象絵画の展開を日本での動向も交えながら概観するという壮大なテーマの展覧会で、内容が濃いうえにボリュームも相当ある。絶対に外すことのできないスタンダードな作家を押さえつつ、本展独自のマニアックな選択も随所に見える(一例を挙げれば日本の具体美術協会
もっとみるはぐれものの武器としてのアート~Kevin Wilson『Now Is Not the Time to Panic』
二人のティーンエイジャーが作ったアートが小さな田舎町をパニックにするケヴィン・ウィルソンの四作目の長編小説『Now Is Not the Time to Panic』(2022)は次のような話である。
1996年の夏、テネシー州の小さな田舎町コールフィールドに暮らす16歳のフランキーは、町に越してきたばかりの同い年の少年ジークと出会う。未だ『少女探偵ナンシー』を愛読書とする文学少女のフランキーは
【再録】『ぐるりのこと。』に見るコミュニケーション論
先日投稿した記事で昔のmixi日記を復元してみたら案外面白かったので、調子に乗ってもういくつか昔書いたテキストを復活させてみようと思う(見出し画像のイラストを描きたいのに書くネタがないというのが一番の理由だったりもするんだけど😅)
この文章は2013年12月に自分のサイトにアップしたもの(現在は削除)。書いた理由はよく覚えてない。単純にDVDで見て面白かったから、というだけかもしれない。映