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怒れる人・怒れない人

私は昔から喜怒哀楽の"怒"が無い人間です。

 明確に言うと、ハラワタが煮え繰り返った思い出はありますが、それが起因で誰かを怒鳴ったり傷つけたりした記憶はありません。(幼少期を除く)

 最近は"アンガーマネジメント"なんて言葉も出て来ましたが、そういう感覚とも違うのです。



怒るより認めてしまう

 仕事でもプライベートでも、腹が立つ事に出会う機会はそれなりにありますが、何故か私は毎回

『そういう考え方もあるのか』
『確かに向こうの言う事にも一理ある』
『私が間違っていたのかも知れないな』
『怒るほどの事でも無いか』
『なんとかなるか』

 と、すぐに頭の中で折り合いを付けてしまいます。後から第三者から私の方が真っ当だったと言われて初めて怒れたのか…と気づけますが、結局は人間同士ですから、考えの違いはあるものだと相手を攻めたりもしません。

 道理がまかり通らない様な出来事に私が直面してしまうと確かにハラワタが煮え繰り返ってしまいますが、その域になるといよいよ無口になってしまいます。そうなると、急にドッと疲労感が先行してしまい急に冷静になり、結局は人間同士だし、三者三様、十人十色、こういう事もあるよと自分を自分でなだめる始末です。

 心の中にある"怒りの鍋"が吹きこぼれる寸前に火を止めて、鍋蓋を開けたら中身が凍結しているようなそういう心境です。

 結局、相手が悪かったとしても自分の中の怒りをグッと鎮めて後々になってモヤモヤしてしまうのです。
 私は一晩寝れば忘れる性格ですから、腹立だしい出来事があっても翌日には相手に対して、遅れて恨みを晴らす様な事も無く普段通りに接するのは幸いと言えるでしょう。

 一方で、他人に対して"怒れる人"が羨ましくもあります。

他人に対して"怒れる"というのは、怒りの起因の出来事を瞬時に判断して"自分が正しい"と思えないと出来ない行為です。
 あるいは、自らの人生で怒りをぶつけた方が自分にとって良い結果となるように物事が動く事が多かったから責め立てるのでは無いかと私は思います。


他人に怒れる人
他人に怒らない人
どちらが"いい人"?

 一般的には怒りに限らず、マイナスの感情を表に出さない人の方が好かれやすいと思います。

 やはり、怒りを表に出すという行為は動物的に言ってしまえば"威嚇"の類なので近寄りがたい印象が付きやすいです。

 しかし、私も含めて怒らない人は、そもそも他者への関心が薄かったり、他人に物事を期待しない傾向があります。

 他人を怒る事が出来る方は、先述した"自分の思う様に物事が動かなかった場合"を除き、その怒りの矛先の人物に対して精神的にも真っ直ぐ向かっているとも言えないでしょうか?

 怒りが向けられた人物に対して何らかの期待をしていたということは、それを出来ると見越していたが相手が実力を出さなかった為に不甲斐ない結果になったから怒るのです。そう考えると他者にしっかりと観察し関心を寄せて、その人を分析していると考える事も出来ます。

 そういう方はむしろ熱血で素敵だなと私は思います。

 一方で中間管理職の私は、あまり他人に関心がありません。プライベートでの交友関係も少ないのです。

 中間管理職をしていれば誰がどのくらいの業務が出来るというのは把握出来ますが、個々の成長に関しては第三者の意見を聞かないと明確に分からないのが正直です。

 従って部下が仕事においてミスをした時は真っ先に私は自分自身を責めます。自身の任命責任と部下の能力を買い被りすぎたなとしか思えないのです。

 部下は怒られると思い込んで小さくなって私に報告しに来ます。しかし、私の頭に浮かぶのはどうクライアントに謝罪するか、どうリカバリーするかだけで、他者への叱責なんかは思い浮かびもしません。部下に事の経緯を聞いても『そういう事もあるとは考慮しなかったな』としか思えないのです。

 クライアントに説明すれば当然怒られるのは私ですが、叱責されている最中も心のどこかが上の空なのです。上辺だけの言葉と、どうすれば良いのか正解が分からないから過剰なまでのリカバリーとフォローが正解だったようで、今の役職を得ました。

 『なんでそんなにいつも他人事なんだ?』『何を考えているか分からない』私は昔から言われ続けていました。

 また人に"怒らない"事により誰かを"怒らせる"ボーダーラインが分からなくなってしまい、不謹慎だったり、他人の気にする事をズケズケと言ってしまったりした事もあります。

他人に対して"怒れる人"と"怒らない人"とではそもそも他者との向き合い方や距離感すら違うのです。


怒りをプラスに扱いたい

 社会において誰かを怒るという行為は、労力を要しますし他者から避けられるリスクも伴います。しかし、私は"怒らない"という選択が正解とも言えません。

 先ほども書きましたが、私は他人に対して"怒れる人"というのが羨ましくもあります。

 "アンガーマネジメント"という言葉が散見されるようになってから長いですが、怒りという感情は適切なタイミングと適正な使い方であれば、双方に強いメリットになりうるとも私は思うのです。しかし、その見極めは非常に難しくリスキーで疲れるのも事実です。

 しかし、そのリスクや労力を取ってでも、部下や同僚の能力や仕事の向き不向きを把握して、顧客も含めた相手としっかり向き合い"怒るべき時に相手の為に怒れる人"になりたいなと、中間管理職として板についてきた私は最近思うのです。

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