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好きな詩 とか(2022年)

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2022年7月の記事一覧

自惚れガールになりたいわ

ダイエットの神様にそっぽむかれてわたし、死にそうな顔してミルクティーを飲む。女の子はあざとさの鬼ごっこをする。並べられた可哀想という言葉、蔑んだ目線、おしまいのない見定め合い。わたしは仕方なく愛しさの亡骸を抱く。
夜になるといらっしゃいませの温度がだだ下がりして、こすった目で視界は滲む。対峙したエクセルのセルは地獄に見えて、意思に反する時計は悪魔と化す。店の隅で数時間もあの子は、スマホとにらめっこ

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詩の生命

詩の生命

詩に宿る生命とは
現世を超える永遠か
否単なる流行りか
我儘な時代の要請か
残された想いの形見が
引き継がれるとしても
それは形を変えるだろう
そうして生きていく程に
新たな息吹が吹き込まれ
褪せることのない
響きを纏うのだ

たとえば現代の栄光を
徒花と揶揄すべきか
過去と未来を繋ぐべきか
つまるところ
俺には正しさなんて分からない
故に凡ゆる想いは人任せ
俺が拾い上げた詩を愛する
そんな奴もい

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ここに惜しみない沈黙を捧げよ

ぼくは予感した——みんな光に由来していること
まじりけのない薄暮
揉まれた氷 償いようのなさで
かたちを失った 森はあかるくそしてまた、くらい

新芽は甦るもの 雨のいちずさ
ふるえる手は赤土をわかちあい
見るもののない 神々しい麦のつやつやに
したたる稲妻 礼讃の
体言、そのあまりにつよい静止……

無垢へ ふくらみつつある耳朶
野の顔、——どうやって弔おう——そちらから邂逅する
濡れた野木瓜の

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なぜわたしのなかに光があるのか

なぜわたしのなかに光があるのか

☆photopos-2870  2022.7.18

なぜ
見えるのだろう

わたしのなかに
光があるからだ
と答えるとしようか

ではなぜ
わたしのなかに
光があるのだろう

わたしにはすでに
光が与えられているからだろうが
それがいったい何なのか
わからないままだ

なぜ
好きなのだろう

わたしのなかに
愛があるからだ
と答えるとしようか

ではなぜ
わたしのなかに
愛があるのだろう

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【詩】あるとき言葉は

【詩】あるとき言葉は

あるとき言葉は
とても無力でたよりなく
表現したいものに追いつかない

あるとき言葉は
誤謬を生み
いさかいの種となっていく

けれども
あるとき言葉は
あなたを深く癒し
こころに寄り添うものとなる

あるとき言葉は
あなたを励まし
明日を歩む活力となる

言葉は道具だから
その使い方によって
力を持つこともあれば
無力になることもある

言葉は人を
生かしも殺しもする

わたしは今日
言葉にどん

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わたしというポリフォニーを生きる

わたしというポリフォニーを生きる

☆photopos-2866  2022.7.14

わたしは
わたしという
ポリフォニーを
生きている

わたしが
いるということ

それは
わたしたちが
そして
せかいが
響きあっているということ

わたしが
わたしたちが
語るとき
せかいもまた
語っている

わたしが
わたしたちが
歩くとき
せかいもまた
歩いている

わたしは
わたしたちは
せかいは
そうして
いままさに生まれている

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飽き性

飽き性

好奇心は旺盛です
誰とも比べていないけど
そういう事にしておこう

旅を愛するボヘミアン
最小限の生活圏
そこを無限としておこう

爪弾く私の天性に
光の粒子を垣間見て
至福の至りで読み解こう

結論私は飽き性です
ポポイと吐息で吹き消して
止まらぬ理由としておこう

「1カウント」【詩】

もし
ここから
今すぐに
消えてしまえたなら

名前も
国籍も
血、肉、骨
においさえ

この世に存在したという
あらゆる
痕跡を
すべて消し去り

スマホ操作のごとく
ワンクリックで
簡単に
なかったことに
してしまえたら

宇宙にも行ける
この時代
それぐらいのこと
できてしまうんじゃないか?

ふとそんな幻想を
抱いてみるけど

曲がりなりに生きてきた
経験が
不可能であることを
私にわから

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夢の中

夢の中

夢の中
ここはどこ?

あの日の誓いをかき分けて
躍り出た現在地

しみったれていた訳ではない
折り合いの中で苦悶していたのではない

ドラムスのブレイクが
すべてを変える前に

準備をしてきたか
希望を持続させてきたか

折れたままの心は
その形態に誇りを抱く

純粋主義者はわめく
理想の裾を引っ張って

しかしここはどこだろう
相変わらず似たような問題が
首根っこに襲いかかる

いやそうじゃな

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家族風景

家族風景

子を産み育て
結局何をやっているかと思えば
心配ばかりしている

生きる意味は 生きることそのもの

そんな撞着した言葉で
誰かと自分を納得させようと
必死に生に執着し
必死に子に執着し
何ひとつ手離そうとしないまま
死ぬまで生きるだけの人生

それでも親として
最後に子にしてあげられること

それは、死んでみせること

家族という場所は
ただ愛を育むところでも
ただ心を満たすところでもない

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夏夜

夏夜

電線に
絡まりながら
アンタレス
夏夜に浸した
歌を手元に

繰り返す
虫の羽音に
せせらいだ
水場の風に
言葉を預け

僕はもう
何になるかも
忘れたら
声の全てが
宇宙に届く

サヨナラ

崩壊して行く世界に
言葉は何の意味も持たない

ありがとうも愛してるも
おはようもおやすみも
すべては過去という暗闇に
放り捨てられてしまう

唯一意味を持ったその言葉は
サヨナラという冷たい響きを持って
二人の間を駆け抜けていく

サヨナラわたしの王国

二人で築きあげた
楽しさや嬉しさ
悲しみや寂しさ
幸福や不幸は

もう何の意味も持たず
灰色に朽ち果てていく

サヨナラ

この言葉は未来へと

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