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真咲ともか
2024年5月30日 06:50
前の職場を4年前に退職してからずっと私は夢見てた。いつか利用者のみんなとまた元職場で会える日を夢見てた。前の職場を忘れたことは一日もない。新たな場所で働いていても、元担当利用者にずっと会いたいと願っていた。 だけど、会わせる顔がなかった。 退職した身分で軽々しく会いにはいけない。同僚も面白い気分ではないだろうし、利用者も困惑するだろう。退職とはそういうことだ。退職
2024年3月29日 06:56
大好きで尊敬していたリーダーの退職が発表された頃私は転職を考え出した。 私の職場は新卒をとらない。職員の平均年齢も高い。年齢を考えれば今慕っている人は私より先に辞めるだろう。そう前々から考え、薄らと不安だったわけだがリーダーが辞めることや人事異動により更に基盤が揺らいでしまった。 今すぐ辞めたい、まではいかないが私は求人情報を夜な夜な見ていた。どこも可もなく不可も
2024年3月21日 06:47
私の職場は適当だ。退職者にお金をいくら渡すかは規定で決まっていなくその都度退職者が出たら話し合って決める。 決まっているのは、色紙に利用者と同僚でメッセージを書いて最終勤務日お別れ会の時に渡すことくらいだ。また、その時に利用者が個人で用意したプレゼントや手紙を渡したい人は渡す。 前の職場は退職者に職場・保護者会・自治会(利用者)がいくら渡すか、いくらの花束を渡すかは決まっていた
2024年3月19日 06:51
同僚が体調不良で複数人同時に休んだ時他の同僚やリーダーがいたからなんとか乗り越えられた。 だが、その休んでいた同僚が体調が治ると今度は別の同僚が体調不良で一週間休み更に翌週も復帰が未定らしい。元々毎月体調不良で何日も休む方だ。毎月のことといえばそれまでだけど今回は期間が長いし、不安になってしまう。このまま退職になったらどうしよう、と。退職にならないにしても、復帰が数ヶ月単位
2024年3月18日 06:53
リーダーが退職を発表した際想像以上に利用者は不安定にならなかった。多少泣いたり、落ち込んだ人はいたがほとんどの人は実感がわからないのか、大きな変化はなかった。 保護者にしてもそうだ。一部の方が落ち込んだりはしたが、想像以上にサラッとしたものだった。 私は驚いた。リーダーが辞めるというのに、利用者も保護者もなんと割り切っているのだろうか。私以上にリーダーと長い付き合いなの
2024年3月14日 06:59
リーダーの退職はとある日の食後知らされることになっていた。その日、私はちょうど午後から研修だった。私はその瞬間に立ち会うことはない。 「真咲さん、研修いってらっしゃい。」利用者が笑顔で言う。利用者は知らない。あと数十分もしない内に、もう知らなかった頃には戻れない悲しみに襲われる。 研修先は近くの駐車場が満車で、遠くの駐車場から歩くことになった。私が研修に間に合うか焦っ
2024年3月12日 06:45
仕事から帰ると、大きな包み紙が置いてあった。「父より」手書きで紙が貼られていた。 包み紙を開けると額縁に入った大きな写真が入っていた。先日新聞に載った、創立記念日の写真を引き伸ばしたものだった。 あまりに立派な写真と額縁で笑ってしまった。これは一職員が家に飾るレベルではなく施設に飾るレベルだ。 きっと前の職場なら、新聞に載ったり、創立記念式典の大きな行事ならこ
2024年3月8日 07:04
一週間最後の勤務日である金曜日は戦いだ。金曜日は大抵が行事日だからだ。 まず、朝の送迎から戦いは始まる。金曜日の私の送迎担当である利用者は非常に不穏になりやすい。 送迎車に乗り込むまでに私、利用者、保護者で三人の戦いになり乗り込んでからも場面切り替えができずギャーギャーと騒ぎ、落ち着くまで車からは降ろせない。その日は落ち着くまで時間がかかりお互いに心身疲れた。「施設な
2024年3月7日 06:57
毎年3月に来年度の業務分担を決める。書類作成だったり、行事の担当だったり、毎月の業務を誰がやるかを決める。30項目分だ。一人に偏り過ぎないように決める。 来年度はリーダーがいなくなり同僚Aさんが人事異動により現場から離れる時間帯が増え同僚Bさんはパートから正職員に変わる。リーダーの変わりの人は決まっていない。 「みんな心にゆとりがないし、新しい人も決まっていないし、
2024年3月4日 06:57
リーダーの家族がコロナ陽性になり、リーダーは出勤できなくなった。先月も別の家族がコロナ陽性になり、三日くらい休んでいた。 今またコロナが流行しているのだろうか。ちらほらと周りで陽性の話を聞く。 仕事の引き継ぎどころではない。家族が陽性だと、リーダーも時間差で陽性になる可能性が高い。いつから出勤できるかは未知数だ。 「またリーダー休みなの?」保護者が言う。理由は私
2024年3月1日 07:10
4年ぶりの2月29日。うるう年。4年前のあの日は、忘れもしない前の職場の最終勤務日だった。 人生でもTOP10に入るくらい大きな出来事だった。間違いなく、30代で一番の試練が、長年務めた職場を不本意な形で立ち去ることになったことだ。 転職先も次にどうしたいのかも何も決まらないまま未練たらたらで泣いて泣いて泣いたあの日。あの日から、四年。 四年、か。仕事に行く時
2024年2月29日 06:52
リーダーが退職を発表し、リーダーと話した後表面的には何も変わらない日常が続いている。 リーダーは相変わらず毎朝一番に来て黙々と仕事しているし私達も毎朝同じような時間に来て、仕事をしている。 誰ももう退職について表立っては話題にしなかった。みんなの心の内は分からない。割り切ったのか吹っ切ったのか諦めたのか分からない。ただ、みんなは大人だった。 前の職場では誰かが退職を発
2024年2月27日 06:55
先日、新施設長から3月に県外日帰り旅行に行くと発表があった。なんと無料で旅行に招待されたという。 飲食代やお土産代は自費だがバス代も行楽地の代金も無料だという。 旅行日を聞いて私は驚いた。その日は私が去年から決めていたとある場所に母親と行こうとしていた日だからだ。もう日付指定チケットを買ってしまった。 何故、よりによってその日なのだ。創立記念パーティーや土日の販売、
2024年2月22日 06:49
私の夢ってなんだろう。リーダーの退職が分かった日、私はそんな思いに駆られた。私の夢ってなんだろう。 かつて私は27か28歳の頃に三年付き合った彼氏と結婚して子どもを産んで、跡を継ぎたかった。あれは夢というより、使命に近かった。27歳になる手前に三年以上付き合った彼氏と別れ私はもう二度と、子どもの頃からの夢が叶うことはないのだと未来を失って絶望した。 仕事が好きだった。