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福祉の仕事

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仕事中に気づいた発見や喜びを書いています。
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2023年9月の記事一覧

知られたくない本音

知られたくない本音

半年に一回の前施設長と新施設長との面談が苦手だ。

仕事に関するアンケートを元に話し合うのだ。

 
「給料に満足しているか?」

「有給はとりやすいか?」


正直に答えにくい質問ばかりが並ぶ。

 
名前付きで出す上
面談で使われると分かっていて
誰がどこまで本気で書くというのか。

  
「あなたが好きな業務は?」という質問に関しては箇条書きで正直に答えたが。

 
 
面談はアンケートに

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緊急エリアメールが鳴った日々

緊急エリアメールが鳴った日々

「今日は防災の日。関東大震災から100年経ちました。」

そう言って前施設長は市の防災マップやプリントをみんなに配った。

 
緊急時の時はどこに逃げるか。何をしたらいいか。
施設近辺で土地が低い場所はどこか。

そんなことを確認した翌週の月曜日のこと。
その日は週はじめなのに、朝から雨が降っていた。出ばなを挫かれる感覚だ。

 
午前中、車で利用者と買い物に出掛けたが
買い物をしている間に雨は強

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初海外進出

初海外進出

私の職場である福祉施設は利用者と一緒にキーホルダーやアクセサリー等を作って販売している。

製作だけでなく
販売や納品も職員と利用者で行う。

 
製品は施設か委託販売先かイベントへの出店時に買うことができる。

 
 
私が入職してから
北は北海道、南は福岡の方がイベント時に製品を買ってくれた。
また、私がプレゼントした為、京都や愛知に住む方も愛用してくれている。

他の地域の方が自分が携わるも

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18禁エリア

18禁エリア

私が働いている福祉施設はたまに図書館に行ってDVDを借りたり
レンタルショップに行ってDVDを借りる。

そして作業が忙しくない日にDVD鑑賞会をする。余暇活動の一つだ。

 
ある日私は利用者とDVDを借りに行くよう言われた。
車に乗り、レンタルショップに出掛けた。

するとそのお店は近々移転するらしく
店内いくつかの場所に立ち入り禁止のテープが貼られていた。
段ボールもつんである。

 
今日

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笑顔で頑張る理由

笑顔で頑張る理由

利用者の祖母の命が危ういと知らせを受けた。
いつ何があって連絡が来てもおかしくないらしい。

 
その週は利用者が楽しみにしている活動が色々とあった週で
悲しみつつも、その活動に参加できるかを気にしていた。

かつて祖父が倒れ、いつどうなるか分からなかった頃
私も悲しみと共に運動会に参加できるかを気にしていた。
あの頃私は私を薄情な人間だと思ったが
利用者に関してはそうは思わなかった。

 
いつ

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お化けを見た日

お化けを見た日

「キャアアアア!」

朝、職場の遠くから誰かの叫び声が聞こえた。
利用者の声だった。

 
割とよく独り言を言ったり、叫ぶ方だったのでたいして気にも止めなかったが
リーダーの話によると
お化けが見えて叫んだらしい。

 
お化け。

同僚と見つめ合った。
私やその同僚はその部屋で仕事を一人ですることがある。

怖いね、と言い合う。

 
移転前の場所でリーダーがお化けを見たことがあるらしいが
まさ

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お弁当の選択肢

お弁当の選択肢

毎週月曜日は利用者と近くのお店にお昼を買いに行く。

 
お店は色々な場所に少人数グループごとに行く。

基本的には歩きで行くが、天気や気温の関係で車で行く時もあった。

 
とある利用者は課題があり
外出を今控えている。

その利用者にはメニュー表やお弁当の写真を見せて、選んでもらい
他の利用者や職員が買ってくる。

 
「真咲さん、お弁当の写真撮ってきてもらっていいですか?」

リーダーが言う

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DVDを見ながら行う仕事

DVDを見ながら行う仕事

その日、私は利用者とDVDを見る担当だった。

DVDの日は利用者が見ている間
職員は製品の仕上げをしたり、書類を作成するのが通常だ。
稀に利用者と一緒にDVDを見ながら部屋全体を見る、ながら支援の時もある。

 
だから私は前施設長に、何か作業はあるか確認した。

すると前施設長は「作業はやらないで、利用者とDVDを見ながら盛り上げてほしい。」と言った。

 
盛り上げる。

まさかのワードに私

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変わったセミの抜け殻

変わったセミの抜け殻

お盆明け初日の仕事は
リーダーと利用者と買い物に出掛けた。

 
気まぐれな利用者はその日は機嫌がよかったし
リーダーと一緒だし
私は嬉しくなった。

 
お盆明け初日の仕事はなんとなく疲れやすいし
お盆休み最後の日は色々あって心身疲れたのだが
なんとか大きな事件もなく、利用者が帰宅した。

福祉施設で仕事をしている人にはあるあるだと思うが
まだ仕事が終わっていなくても
利用者が無事帰宅すると気持

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ゲリラ豪雨と納品

ゲリラ豪雨と納品

納品に行こうと施設を出発した時
空はまだ明るかった。

 
ところが移動すると段々と曇ってきて
今にも雨が降りそうな怪しい天気になった。

なんとか間に合うだろうか。

 
そう思ったが
到着1分前にどしゃ降りになった。
とてもじゃないが降りられない。

 
待つこと数十分
雨は上がり、その隙に納品し、作業資材を受け取った。

今更晴れ渡る空。

 
だが今度は施設に戻った時に雲行きが怪しくなり

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忘れものをした日

忘れものをした日

水分補給は大切だ。
特に夏場は更に大切だ。

 
利用者というのは極端で
水分補給をし過ぎてストップがかかる方と
水分補給をしなさすぎて促しが必要な方がいる。

障害というのは加減の調整が難しいことをさすような気がしている。

やりすぎか、やらなすぎというか。

 
利用者Aさんはその日、水分補給をあまりしていなかった。 

何度も促したが、拒否が激しかった。
あまりに促しすぎると苛々して噛みつい

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夢のピアノ発表会

夢のピアノ発表会

私がかつて担当した利用者は
病気や障害を理由に短命だと医師に告げられていた。

 
その利用者はピアノを習っていて毎年発表会があり
毎年保護者からお誘いを受けていたが
特定の利用者と施設営業日以外の日に外で会うことは周りからあまりよく思われず
私もどうかと思っていたので毎年断っていた。

それでも私は心の隅では今年で最後かもしれないと毎年思っていた。
これがピアノを聴く最後の機会かもしれないと。

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