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#歌

哀しい歌

哀しい歌が好きと
貴方は言ってた
カートンの煙草が
直ぐに無くなる様に
貴方は消えてしまった
哀しい歌の歌詞みたいに

しがない歌

しがない歌を歌う
売れないシンガー
貴方の代わりは
幾らでもいると
気が狂いそうな程
言われ続けても
しがない歌を歌う
売れないシンガー
歯牙にも掛からないと
知っていながら
今日もがらんどうの
ステージに立ち
しがない歌を歌う
絶望と向き合いながら

ステッピンブーツ

パレードグロスで
輝いている靴で
君とステップを踏もう
ロックンロールを
聞きながらさ
リズムの少し崩れた
歌が好きなのさ
素敵だと僕は思う
本当なんだよ
幾つになっても
僕はロックンロールを
好きと言いたいんだ
言葉では伝えられないけど
君は分かってくれる
そんな気がするよ

束縛

如何でも良い筈の
言葉に束縛され
私は今日も退屈な
歌を歌い続ける
誰の為でも無く
空の引き出しを
何度も叩きながら
私は声を振り絞り歌う
なけなしの夜に

リイューズ

錆びたガットギターで
歌うリイューズ
機械の体は永遠を
彷徨う事しか出来ないと
儚げに声を震わせる
生きる事に疲れない
不死者達は喜んで
高級なラム酒を空け笑った
人はでない何かの
夜は静かに更けて逝く

貴方の歌

最後の歌を
貴方は歌う
僕は知らずに
涙を流す
静寂のミルクホールで
時間は流れる
止まる事など無く
それは冷血で
僅かに美しい
歌い終えて
貴方は頭を下げた
観客の消えた空間に

葬送

許せない事から
目を逸らして
育った子供達は
あの日の様に
もう歌えやしない
純粋な瞳で
他人を殺し続ける
己の命が
時を止める日まで

無傷なブルーズ

罪なき者が
弾くブルーズ
誰かが付けた
傷を隠さず
教会に響いて
皆合唱する
冷たくなる日を
心待ちにして
無傷では
生きられなかった
清楚では無い
為らず者達の歌

三流クラッカー

うだつの上がらない日々に
嫌気が差した歌い屋は
真昼の月を見ながら
闇市でぎった拳銃を撃つ
胸から純白の椿が咲いて
そのまま地面へ倒れ込んだ
彼が命を賭けてまで
探した物は見つかったのか
もう誰にも分かりはしない

スローステップ

何処かで聞いた
歌が流れて
貴方は踊った
スローステップを
異国の空は
今日も赤く
燃えていると
ニュースで言ってた
僕はただ現実を
眺めるだけ
横目でそっと
見ているだけ

スノーポップ

焦燥した夜には
スノーポップを歌って
雪に沈んだ故郷を
思い出せる様に
憔悴した朝には
スノーポップを歌って
冬に無くした貴方を
忘れ去る為に

雨に歌うジョーカー

夜更けの雨の中を
歌いながら歩くジョーカー
スチレットナイフと
Ⅿ1911を隠し持ち
喧噪の中へと消えて逝く
悲惨なニュースを待ち望む
大衆の乾いた心に
喜劇に似た悲劇をもたらし
今日も誰かの命を奪う
雨傘を差す事などせずに

陽炎の日々

世紀末キャバレーで
歌う不細工なシンガー
割れそうな夏の日に
揺らめく陽炎を抱いて
気違いになった道化師
誰も彼も僅かに
重なり合う事すら出来ず
忘れられて消えて逝く
変わる時代の片隅へ

ヒステリー・ミステリー

金切り声を上げて
今日も歌っている
だいぶ逝かれた
僕の好きなハニー
気に入らない事
沢山あるみたいで
直ぐに壊しては
延々と泣きじゃくる
君の事は何も分からない
そこが良いと思うんだ
ヒステリーで
ミステリーな
僕を好きなハニー