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2022年12月の記事一覧

チープダウナー

暗い気分で
部屋に閉じ籠り
サイレント映画を
鑑賞するニート
新しい年が
訪れても彼は
何も変わらずに
同じ日々を繰り返す
吹けば飛ぶような
薄っぺらい嘘みたいに

悲しみの果てまで

生きて生きて
生き疲れたなら
悲しみの果てまで
逝けるのだろうか
私は今日も
何も分からずに
唯々生きてしまう
憎んで憎んで
憎み切ったなら
憎しみの果てを
私は確かに見るだろう
生きて来て
それだけは分かった
確かに感じたんだ
言葉で表せない
強大な悪意を

黄金の街

夢すら見えない
黄金の街で
貴方は笑う
金塊を抱きながら
札を持たない者は
人と見なさない
この街はまるで
僕の生まれた国の様だ
何処までも続く
黄金の道路に
飾られた装飾は
全てが本物だった
ギャンブルに勤しむ
招待客を除いて
金満の王が支配する
黄金の街は
緩やかに破滅へ向かうだろう
僕が逃れた国の様に

欲望のラバーダック

海を渡るラバーダック
異国の空はまるで
永遠に繋がるフィルムのよに
途切れる事も出来ず
繋がっていたんだ
ゴッドファーザーの様な
煤けた世界は何処にも無くて
僕は退屈しているんだ
このまま世界を回っても
僕は廃棄処分されるんだろう
ならばその直前に
欲望を叶える事にした
博士の異常な愛情を
全世界に降り撒く事を

ピンク・ドラゴン

イングランド製の
トゥカップ入り
ドクターマーチンを
履いたなら
ピンク・ドラゴンへ行こう
オールバックで
髪を纏めて
買い物をしよう
少年の日の心を
今日だけは隠さないで
ピンク・ドラゴンを出よう
色褪せる事の無い
ロックンロールを聞きながら

瞼に消えたなら

思い出が
哀しみが
過去が
瞼に消えたなら
私達は
幸せに為れたかしら
憎しみが
虚しさが
現在が
瞼へ消えたなら
貴方達は
不幸に為ったかしら
答えが出ない儘
皆生き続ける
震える心を隠しながら

ビューティフル・ロープ

美しい朝に
貴方はロープで
縊死していた
他愛の無い話を
していた夜は
二度と戻らずに
私は打ちひしがれる
幸せな振りをした
人達が街に溢れ
零れ返るだろう
地面へ放つ水みたいに
貴方を失くしても
私は唯生きるだろう
破壊するものへ
姿を変えてでも

堕天回帰

命は巡る物だと
教えてくれた貴方は
もう何処にもいない
地上に落とされた私を
救ってくれる者など
私は探せやしなかった
貴方以外には
還れない天を見上げて
私は涙を流す
堕天使にすら落ちれず

還らない唇

組み上げた単車で
ミルクホールへ
向かう不良少年
傷を隠した儘
次の仕事へ向かう
左目のジュリー
還らない唇を
求める儚い少女
皆何かに迷い
壊れそうな夜を抱え
明日へと向かう
等しい筈の命で

スノーエンド

雪の積もる
故郷へ向かう男
失くした過去を
取り戻そうとする女
時の片隅で
二人は交わり
そして離れ逝く
雪が解けた季節に

アンソニー

静かな午後に
ピアノを弾くアンソニー
穏やかな日々が
続くと信じていた
何も言えない儘
異国で戦うアンソニー
照明弾で照らされた
街の片隅に
銃を撃ち捲る
怒号と悲鳴を
全て掻き消しても
皆何かに取り付かれ
廃墟と化した街を
幽霊の様に突き進む
考える事を止め
殺戮の機械へ
その姿を変貌させて

恋をしよう

予定の無い夜は
恋をしよう
欲望は隠し通して
ミルクホールで見かけた
可愛いあの娘と
恋をしよう
淫らさは押し殺して
恋をしよう
偽物でも良いから
恋をしよう
本物に為れる様に

禁じられた遊戯

飛ぶ事を禁じられた酉は
躊躇わず空を目指す
死が訪れるまで
吠える事を禁じられた犬は
構わず声を上げる
死に抱かれても
何も禁じられていない私は
暗い街中を彷徨う
死を願いながら

懐柔

都合の良い女で
私は構わなかったと
優しく囁いて
貴方は消えた
僕の前から
振り返らずに
僕は貴方を
懐柔しようとは
思わなかった
ただ傍にいて欲しい
そう思っただけ
心から
そう願っただけなんだ