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カリフォルニア・コネクション
「これは何ですか?」
「マッシュポテトとグレイビーソース」
「これは何ですか?」
「セロリとピーナツバター」
その日の食卓は、深い謎に包まれていた。言いたいことは山ほどあったけど、知っている言葉といえば「これは何ですか?」だけ。仕方ない、ここはだんまりだ。僕は見たこともない食べ物がずらりと並べられたパズルのような食事の時間を、うまいことやり過ごす方法ばかり考えていた。
小さい頃住んでいた東海
リノリウムの床、アメリカの夜。
ロサンゼルスからデンバーを目指していた。冬のコロラドを選んだのは、マイナーな地方都市がクールだと思っていたから。
とにかく急ぎ足だった。旅におけるあらゆる予定には、やるべきタイミングというものが存在する。物理的にも、気持ち的にも。それなのに旅の始まりの数日間を、決定的にぼんやりと過ごしていたのだった。
夜までレンタカーを走らせて、見たことのあるチェーンホテルの看板を探す。プレスコットは、そんな
I left my heart in USA.
「何かすごいことが起きそうだ」というのはロードトリップを目前にした人に特有の誇大妄想でしかなくて、実際は旅の最中、ほとんど何も起こらない。せっかく特別な旅をしているのだからと、そこにある朽ち果てた看板や廃屋、どんよりした雲、あるいは見慣れたワイパーの動きにさえ無理にでもなにか意味を見出そうとしてみるけれど、たいていの場合、とりたてて意味はない。
走って、降りて、写真をとって、ごはんを食べて、また
追憶。ラジオのじかん。
電話が鳴る。
やれんのか、おい!
やりますよ。もちろん。飛龍革命だ!
相手は泣く子も黙るラジオ界のビッグ・ボス、FM yokohama。僕の青春のラジオ局だ。相手にとって不足なし。見とけよ、マルコ。カッコイイとは、こういうことさ。
茨城の小さな村で育った10代の僕が一番夢中になったラジオ局がFM yokohamaだった。「ジョイフル山新」で手に入れた巨大なアンテナを、母親に見つからないように裏
意味はなくても、意思は伝わる。
どうしても、というわけじゃないけれど、アメリカで中華料理を食べてフォーチュン・クッキーがなかったら、ちょっと切なくなる。
クッキーをバリバリと割って、中から紙を取り出し、おみくじに書かれた文字をちらりと見る。ちなみに僕は、クッキーも食べる。ひと口だけ。それからコップに残った青島ビールを飲みほす。なんだか意味のわからない言葉の「余白」は、適当に妄想で埋めておくことにする。この場合、言葉がシンプルだ
なんでもいい、の罠。
ロケの弁当を決める時、「なんでもいい」。今夜のDVDを選ぶ時、「どれでもいい」。僕が筋トレについて熱く語る時、「どうでもいい」。
弁当を食べる。「オーガニックじゃないのね」。DVDを見る。「ディカプリオじゃないのね」。筋トレのルーティンを終える。「どうでもいい」
「なんでもいい」は、たいていの場合、本当は「なんでもよくない」のだ。
そもそも生きることは、選択の連続だ。「ナポリタン」か「ミート
Remember my name!
「ニューヨークが好き」と無邪気に言えるのは、特別な才能のひとつだと思う。
ニューヨークは、スケールが大きいようで、実際のところ驚くほどミニマムな世界。だから、この街を楽しむためには、限られた時間の中とスペースの中で、全力で自分を解放できる才能が必要なんだ。
「あんたたちは才能を夢見てる。でも名声への道は、苦痛と汗との長く厳しい道よ、いいわね?」
80年代のテレビドラマ「Fame」の冒頭のナレ
ジェットコースターロマンス。
「ロードトリップの一本道」にはロマンがある。けれど「ジョギングの一本道」には、リアリティしかない。
快適なジョギングコースを探すのは意外と大変だ。「距離がちょうどいい」とか「信号や交通量が少ない」とか、走りやすさに直結する要素はもちろんだけど、僕にとって一番重要なのが「適切なタイミングで、適切に風景が切り替わる」かどうか。どんなにキレイな風景だとしても「ずっと先まで見えている一本道」を走るのは、
また来るのを待ってるんだ。
あいつは旅に出たよ。今日の夕方。
-え? ずいぶん急だね。なんで、なんで?
伝言だ。「短い間だったけど、楽しかった。ずぶ濡れになったり、すり傷が絶えなかったけど、充実した毎日だった。ありがとう」。
-どこにいったの?
さあ、しらない。「あとはよろしく」って言われただけだよ。
-この一ヶ月くらいぐったり下ばかり向いてたから、心配してた。けど何も言わずにいなくなるなんて、どうなの、人として。
クリスティーナ・リッチとクロベエ
カウンターで足のサイズを申告する。あらゆる靴の中で最も履きこなすのが難しいデザインのシューズが手渡される。もちろん、選択権はない。履き替えたら、木製の棚にずらりと並べられたボールの中から好みの重さとサイズを選択する。「13ポンド、穴は大き目」が基本だけれど、久しぶりだったので2種類選んだ。指定のレーンに座る。ブラウン管のモニターと、宇宙船みたいなデザインのボールラック。なかなかいい感じだ。
隣に
好奇心と情熱のあいだ。
久しぶりにホンダの「シティ」を見た。黒のボディで、しかも憧れの「カブリオレ」だ。あらゆるパーツが直線だけで構成されたような無骨なデザインで、「ブロロロン!」と大きな音を立てて倉庫街を走り抜けるその姿は、やっぱりクールだった。運転していたのはグレーのジャケットに細めのネクタイ、銀縁の眼鏡で仕上げた森本レオみたいなエンスー風。所属、壮年の部。うんうん、上々の組み合わせ。コーディネートはばっちりだった。
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