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臨床心理士への随録

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大学院入学から臨床心理士になるまで/2018.3-2020.12/心理学/臨床心理学/臨床心理/臨床心理士/公認心理師/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/心理カウンセラー…
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#本

「病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと」市原真著|臨床心理士への随録 心理学

「病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと」市原真著|臨床心理士への随録 心理学

医療業界にエッセイストが少ない理由は、論文や学術書のほうが崇高であるという迷信のせいだと思うのだが、そこにきてこのヤンデル先生、なんて上手に言葉を紡ぐ人だろう。なるほど、こうやって書けば、時代の波に乗った情報発信ができるんだな。内容もさることながら目から鱗の一冊でした。作中で紹介されていた「こわいもの知らずの病理学講義(仲野徹著)」も、Amazonで発注しちゃいました。

「病理医ヤンデルのおおま

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「ともにある 湯布院・緩和ケアの集い」神田橋條治著 臨床心理士への随録 心理学

「ともにある 湯布院・緩和ケアの集い」神田橋條治著 臨床心理士への随録 心理学

上記のような状態の患者さんに対し、神田橋先生は「察知」を駆使して、そこにある仮性幻覚の世界へ入り込んでいきます。文字言語と科学的思考は必須としたうえで、しかしそれだけでは対処できない世界があるのです。ロジカルに、可視的に、エビデンスベースドに生きることが求められるビジネス社会でも、この事実を忘れてはいけない気がするのです。

「ともにある 湯布院・緩和ケアの集い」神田橋條治著

「パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか」岡田尊司著 臨床心理士への随録 心理学

「パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか」岡田尊司著 臨床心理士への随録 心理学

「心に残っている映画を3本挙げよ」と問われたら、19歳の頃に観た「ギルバート・グレイプ」を出さないわけにはいかない。ジョニー・デップ演じる主人公がとらわれから一歩踏み出す物語なのだが、主人公自身も依存性パーソナリティ障害でイネイブラーの設定だったとは、この本を読むまで気がつかなかった。

パーソナリティ障害の問題は、うつ病・自閉スペクトラム症・引きこもり・依存症などとの合併も多いが、基本的にそれ単

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「本を読むときに何が起きているのか」ピーター・メンデルサンド著 臨床心理士への随録 心理学

「本を読むときに何が起きているのか」ピーター・メンデルサンド著 臨床心理士への随録 心理学

臨床心理学の教授は、小説を読めと奨めます。

本の中の物語は、読み手が活字を心象に変換し、それを自分の内側に描映することで進行します。心理面接も似ています。クライエントが発する情報から、セラピストはクライエントが体験した世界を想像するのです。他者のことを100%理解することなど不可能なのですが、準拠枠を豊かに耕しておくことが理解の一助になります。小説が準拠枠に与える影響は大きい。特に若い時に多くの

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片手で打ち合わす音「ユング心理学と仏教」河合隼雄著 臨床心理士への随録

片手で打ち合わす音「ユング心理学と仏教」河合隼雄著 臨床心理士への随録

日本は宗教観が生活に無意識にとけ込んでいる国だと思います。普段何気なく使う「もったいない」や「いただきます」の言葉には、森羅万象や全命同根の仏教的思想が織り込まれています。科学や経済が急速で発展し、社会や人々の価値観が絶対唯一から多様性へと変遷している今、よりどころとしての宗教や、日常の外にある宗教がもつ意味について改めて考えています。

「ユング心理学と仏教」河合隼雄著心理療法によって誰かを治す

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「犯罪心理学にみるコーピングとアンガーマネジメント」 臨床心理士への随録

「犯罪心理学にみるコーピングとアンガーマネジメント」 臨床心理士への随録

精神科医で司法精神医学と犯罪者心理学が専門の教授は、今でも法廷や病院で司法鑑定や精神治療をガンガン行っている現役バリバリの先生です。授業で聞かせて頂いたお話は、どれも臨場感に溢れていて興味深かったです。

CASE:性犯罪「性犯罪者の理解と処遇」という講義の中で、「性犯罪のサイクル」を教わりました。先生は性犯罪を犯した方にこのサイクルを見せて、自分の心理や行動の変化の過程を認識してもらい、再犯防止

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「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない〜ACT(アクト)」ラス・ハリス著 臨床心理士への随録 心理学

「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない〜ACT(アクト)」ラス・ハリス著 臨床心理士への随録 心理学

ACT(アクト)は、認知行動療法の第三世代に位置付けられる、心理的柔軟さを目指す心理療法です。不快な気分に対しオープンでいることや、過剰反応せずに逃げないことなど、マインドフルネスや森田療法に近い信念を持っています。現代社会を生きるために、メタ認知を育む、あるがままに受け止める、効果的な行動をとることの重要性を再認識させられます。

「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネ

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伝達力を上げる「TED TALKS」クリス・アンダーソン著 臨床心理士への随録 心理学

伝達力を上げる「TED TALKS」クリス・アンダーソン著 臨床心理士への随録 心理学

臨床現場では対話を中心とした対人支援を行います。伝える技術や伝わる構えを自分の中に備えなければなりません。いかに情報の内容が素晴らしくても、伝え方次第でいかようにもなってしまうことを、過去のTEDを題材に解説するもんだから、面白いし説得力が半端ないです。

「TED TALKS」クリス・アンダーソン著 関美和訳

30年前の対談から温故知新を解する「こころの臨床を語る」 こころの科学編集部 臨床心理士への随録 心理学

30年前の対談から温故知新を解する「こころの臨床を語る」 こころの科学編集部 臨床心理士への随録 心理学

学会誌「こころの科学」に掲載された8本の珠玉の対談が集録されています。その中の一編である1984年の対談を、現代社会の様相に照らし合わせながら読んだのですが、何の違和感もなくて驚きました。時代が移ろいでも本質というのは変わらないのですね。古きを訪ねて新しきを知りました。

「こころの臨床を語る」こころの科学編集部編若いころは病気の診断はつくけれども、人間がまだ見えていない。だんだん熟してくると、患

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生きることはすばらしい 「死の医学への日記」柳田邦男著 臨床心理士への随録 心理学

生きることはすばらしい 「死の医学への日記」柳田邦男著 臨床心理士への随録 心理学

あなたは今どのような死生観をもっていますか。余命宣告を受けたがん患者さん達の死を前提とした終末期の生(せい)を通じて、ターミナルケアや在宅医療の在り方、クオリティオブライフなどについて考えさせられます。修士論文研究のテーマを、老成自覚×死への態度×健康度×中年期に定めたので、参考図書として手に取りました。この本に出会うまでは、自分の死因は痛みや苦しみのない突然死がいいと思っていましたが、死ぬ準備期

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努力して得たものを捨てる「禅的老い方」境野勝悟著 臨床心理士への随録 心理学

努力して得たものを捨てる「禅的老い方」境野勝悟著 臨床心理士への随録 心理学

歳をとると体力は落ちるし物覚えは悪くなるし嫌になることもあるのですが、慈愛の精神が育ってきたり色んなことに振り回されることが減ったりと良いこともあるんですよ。私はこの先、自己肯定感を持ちつつ、過去の成功体験を捨て去り、若い人から謙虚に学び続けられる人間でありたいです。

「禅的老い方」境野勝悟著若い人が自信と誇りを持つと、そこに必ずやわらかな笑顔が見える。喜びにあふれた言葉が生まれる。が、年が寄っ

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遊びの心理ゲーム「森の中に現れた動物は?」 臨床心理士への随録 心理学

遊びの心理ゲーム「森の中に現れた動物は?」 臨床心理士への随録 心理学

「それいけ×ココロジー 真実のココロ(青春出版社)」に掲載されている、心理ゲームを紹介します。

あなたなりの森をまずイメージしてください。。。その森の中を、あなたは歩いていきます。。。するとそこに、一匹の動物が現れました。それはどんな動物ですか?そしてその動物に向かって、あなたはどんな行動をとりましたか?

どうぞ目を閉じて、想像してみてください。



いかがでしょうか?



それでは解

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はっきりとした境目はない「ぼくらの中の発達障害」青木省三著 臨床心理士への随録

はっきりとした境目はない「ぼくらの中の発達障害」青木省三著 臨床心理士への随録

「ノーマライゼーション」という言葉を初めて聞いたのは20代前半だったでしょうか。当時は「障害者を見てギョッとしないこと」だと超訳誤認していました。最近は理解が深まり「障害をもつ人もそうでない人も、それぞれがそれぞれに幸せを感じられる(または負を感じない)社会を実現する考え方」と理解しています。

違いを認めつつも正常異常の二分法で判別しない。例えば自閉症はDSM-5から自閉スペクトラム症と名称変更

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こだわる力は粘り強く生きる力でもある  「はじめての森田療法」北西憲二著 臨床心理士への随録

こだわる力は粘り強く生きる力でもある  「はじめての森田療法」北西憲二著 臨床心理士への随録

入院必須の古典的森田療法だけでは現代社会の時流に適合しない。療法家の新訳への取り組みに感動しました。森田療法はマインドフルネスや禅宗との関わりが深く、仏教的考え方が通用する日本では特に有効な技法です。例えば「こだわり」は強すぎると適応力を奪いますが、粘り強く生き抜く力でもあります。このように物事を片側面ではなく多角的に捉えることが「あるがまま」に繋がるのです。

「はじめての森田療法」北西憲二著森

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