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「病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと」市原真著|臨床心理士への随録 心理学

医療業界にエッセイストが少ない理由は、論文や学術書のほうが崇高であるという迷信のせいだと思うのだが、そこにきてこのヤンデル先生、なんて上手に言葉を紡ぐ人だろう。なるほど、こうやって書けば、時代の波に乗った情報発信ができるんだな。内容もさることながら目から鱗の一冊でした。作中で紹介されていた「こわいもの知らずの病理学講義(仲野徹著)」も、Amazonで発注しちゃいました。

「病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと」市原真著

自分が病院にかかるとき見ているところ。それは「人」だろう。それ以外にあり得ない。現代の標準治療において、名医と平凡な医者がもたらす結果に差はない。
良心ある医者は「絶対治る」とは言わない。というか言えない。「絶対」と言い切れるような医学はないからだ。
大学病院の医療の最大の特徴は「マニアック」。高度に専門化された医療とはハイレベルという意味ではなく、マニアックという意味で捉えた方がわかりやすい。
「医者が病院の中では一番偉い」という見方。これはもう圧倒的に古い。今の時代の医療は、チーム医療が当たり前だ。チームリーダーは医者でしょう、という指摘もあるだろうが、リーダーというのは偉い人という意味ではない。
維持業務においては、医者など看護師の足元にも及ばない。というかそもそも医者と看護師では業務内容が違う。上も下もない。
病気という軍隊と戦う上で、患者・医療者連合軍が適切に役割分担をできていれば、医者はあまり患者に近寄らないし、看護師や栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカー、作業療法士、臨床心理士などさまざまな維持部隊が舞台の上で活躍することになる。
仲良くしろってことなんだよな。結局。医者も、患者も、もっと周りを見て、連携すべきなんだ。