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臨床心理士への随録

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大学院入学から臨床心理士になるまで/2018.3-2020.12/心理学/臨床心理学/臨床心理/臨床心理士/公認心理師/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/心理カウンセラー… もっと読む
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WAIS、IQ、EQを考える|臨床心理士への随録 心理学

WAIS、IQ、EQを考える|臨床心理士への随録 心理学

自分のIQがいくつなのか、みなさん興味はありますよね。東大生の平均は120、MENSA会員は全員130以上(全人口の約2%)らしいです。でも、IQ高けりゃ優秀かといわれれば、そうとも限りません。

まずはIQの定義からいきましょう。厚生労働省の説明がわかりやすいです。

IQ(=知能指数)とは、単に学習で覚えた知識や学力ではなく、様々な状況や環境に合理的に対処していくための土台となる能力を知能と捉

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ライフサイクルと人の成長|臨床心理士への随録 心理学

ライフサイクルと人の成長|臨床心理士への随録 心理学

人の成長って何だろう。身体面と精神面のどちらにおいても、私は変化への適応なのではないかと考えている。

エリクソンが提唱した生涯発達理論ライフサイクルによれば、各年代に訪れる課題があるという。人生は挑戦の連続だ。

それにしても生誕から20歳までに訪れる課題の多いことよ。社会的責任は免除されるが、その代わり自分の内面をつくる責任が課せられている。

エリクソンは青年期(思春期)のアイデンティティの

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心理職の向き不向き|臨床心理士への随録 心理学

心理職の向き不向き|臨床心理士への随録 心理学

「あなたは臨床心理士に向いていると思いますか?」

臨床心理士資格試験には面接試験があり、参考書には過去によく訊かれた質問がいくつか掲載されている。志望理由、大学院での学び、実習で担当したケース、現在の仕事などが典型で、先輩の話だと、最近読んだ本や、好きな心理学の理論とその理由などの変化球が飛んでくることもあるらしい。

面接試験の対策とはつまり自分の実感や想いを言語化しておくことである。一番答え

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セルフ・ハンディキャッピングとジャイアントキリング|臨床心理士への随録 心理学

セルフ・ハンディキャッピングとジャイアントキリング|臨床心理士への随録 心理学

失敗が予想される状況で、実際に失敗する前に、自分に不利な条件があったことをあらかじめ表明しておき、自尊感情の低下を予防することを「セルフ・ハンディキャッピング」という。

「ダメかも…」と思っていれば、実際ダメだった時に「もともとダメだと(難しいと)思ってたから」という理由(言い訳)ができ、受けるダメージを低減することができる。でもこれ、必ずしも適応的な行動かといえば、そうでもない。確かにある程度

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交渉術~フットインザドアとドアインザフェイス|臨床心理士への随録 心理学

交渉術~フットインザドアとドアインザフェイス|臨床心理士への随録 心理学

社会生活を営むには、他者とのコミュニケーションは不可欠です。ひとりでやれる範囲は限られていますからね。時には交渉や説得の場面もあるでしょう。懇切丁寧に話をするのが前提として、そのうえで技術を知っていれば鬼に金棒です。

フット・イン・ザ・ドア テクニック誰もが承認するような負担の軽い要請が受け入れられた後に、目的としていた要請を承諾させる方法。

玄関先でセールスマンが足をドアの隙間に入れて、グイ

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休むとは|臨床心理士への随録 心理学

休むとは|臨床心理士への随録 心理学

うつ病になったら「休みましょう」と言われる。この時の休むとは、どんな休むを指しているのだろうか。身体を休める、頭を休める、こころを休める、気を休める。ひとことに「休む」と言っても、いろいろな休むがある。

例えばベッドに横になっていても、心配事が頭から離れていなければ、いい感じには休めていない状態である(身体は休めているけど、頭は休めていない)。気晴らしに趣味の買い物に繰り出して、疲れで翌日動けな

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「病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと」市原真著|臨床心理士への随録 心理学

「病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと」市原真著|臨床心理士への随録 心理学

医療業界にエッセイストが少ない理由は、論文や学術書のほうが崇高であるという迷信のせいだと思うのだが、そこにきてこのヤンデル先生、なんて上手に言葉を紡ぐ人だろう。なるほど、こうやって書けば、時代の波に乗った情報発信ができるんだな。内容もさることながら目から鱗の一冊でした。作中で紹介されていた「こわいもの知らずの病理学講義(仲野徹著)」も、Amazonで発注しちゃいました。

「病理医ヤンデルのおおま

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自分の課題を脇に置けるか〜1次試験会場で考えた、臨床心理士として人前に立つ前提|臨床心理士への随録 心理学

自分の課題を脇に置けるか〜1次試験会場で考えた、臨床心理士として人前に立つ前提|臨床心理士への随録 心理学

2020年度臨床心理士資格審査一次試験が行われた。東京ビッグサイトに全国から集まった受験者は2,000人ほど。指定大学院での訓練を修了してきた同期がこんなにいるんだなという感慨と共に、皆なんで臨床心理学なんて奇妙な学問に興味を持ったのだろうと思いながら眺めていた。

当然、きっかけは人それぞれだろう。自分やきょうだいに発達障害がある、不登校児だった、親が精神病を患っていた、家族に依存症者がいた、友

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こうこつのひと〜認知症と記憶忘却|臨床心理士への随録 心理学

こうこつのひと〜認知症と記憶忘却|臨床心理士への随録 心理学

「恍惚の人」は、1972年に出版された有吉佐和子による長編小説。「こうこつのひと」で認知症が浮かんだ人は、私より年配か、福祉関係の人か、かなりの読書家さんだと思う。「恍惚」とは、①物事に心を奪われてうっとりするさま ②意識がはっきりしないさま ③老人の、病的に頭がぼんやりしているさま、である。

恍惚であれば認知症かというと、そうではない。認知症には「脳の器質的変化によって、いったん発達した知的機

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JAZZと音楽療法|臨床心理士への随録 心理学

JAZZと音楽療法|臨床心理士への随録 心理学

#創作のマストアイテム はBGM。作業効率が上がります。クラシックがいいと聞いて試した時期もありますが、体質的にJazzやBossa Novaが合うみたい。note執筆や試験勉強をご機嫌にこなすために、エンドレスに流れるYoutubeライブ配信が手放せなくなっています。

音楽でいうと、臨床心理には音楽療法なるものがあります。

音楽療法は芸術療法の一種です。芸術療法は、表現を通じて、心的葛藤の解

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人目は力になるか負担か|臨床心理士への随録 心理学

人目は力になるか負担か|臨床心理士への随録 心理学

私、サッカーが趣味でして。小中高は部活で大学はサークル、社会人では26歳まで区の2部リーグに参加し、子育て期間はお休みして、30半ばから地域のシニアサッカーで復帰しました。一度でいいから大観衆のスタジアムでやってみたかったな。150万部のベストセラー「心を整える。」で有名な長谷部誠選手の手記を読んで、社会的促進と社会的抑制について書きたくなりました。

100%の力でプレーしているつもりでも、まっ

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精神科外来で統合失調症の回復と心理士の役割を考える|臨床心理士への随録 心理学

精神科外来で統合失調症の回復と心理士の役割を考える|臨床心理士への随録 心理学

ここは郊外にある統合失調症の患者さんが多い精神科病院の外来診察室。大学院のカリキュラムで陪席実習をさせてもらっていました。<医師>と「患者」のやりとりの中から、統合失調症とは何か、回復とは何か、心理士の役割とは何かを考えていました。

<聞こえてくることはありますかー?>「ないですね」

統合失調症の陽性症状のひとつが幻聴です。自分に対する悪口や批判など、被害的で意味のある言葉が語りかけられます。

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マスメディアで形成される沈黙の螺旋|臨床心理士への随録 心理学

マスメディアで形成される沈黙の螺旋|臨床心理士への随録 心理学

近年はマスメディアをマスコミと呼ぶことが多いので、まずは言葉の定義から。「マスメディア」は、マスコミュニケーションするための媒体、テレビ、ラジオ、新聞、書籍などの総称です。「マスコミュニケーション」とは、マスメディアを用いて不特定多数の大衆に一方的に大量の情報を伝達すること、となります。

社会心理学の研究領域に、マスコミュニケーションがあるんですよ。政治、特に投票行動との関連性を調べたのが始まり

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モーニングワーク〜朝ではなく喪の仕事|臨床心理士への随録 心理学

モーニングワーク〜朝ではなく喪の仕事|臨床心理士への随録 心理学

はじめて「モーニングワーク」と聞いたとき、朝(morning)の仕事、そう、朝食作りとか窓のカーテンを開けるシーンを想像しました。どうも違うらしい。モーニングワークは「mourning work」、日本語訳は「喪の仕事」となります。

喪の仕事ヒトは大切な人を死別などによって失う(喪失体験)と、大きな悲しみ(悲嘆)を感じ、長期に渡って特別な精神の状態変化を経るようになります。この悲嘆のプロセスこそ

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