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自分の課題を脇に置けるか〜1次試験会場で考えた、臨床心理士として人前に立つ前提|臨床心理士への随録 心理学

2020年度臨床心理士資格審査一次試験が行われた。東京ビッグサイトに全国から集まった受験者は2,000人ほど。指定大学院での訓練を修了してきた同期がこんなにいるんだなという感慨と共に、皆なんで臨床心理学なんて奇妙な学問に興味を持ったのだろうと思いながら眺めていた。

当然、きっかけは人それぞれだろう。自分やきょうだいに発達障害がある、不登校児だった、親が精神病を患っていた、家族に依存症者がいた、友人が自死した。いろいろあっていい。誰が否定できるものではない。俺なんて、自身の思春期アイデンティティ葛藤だったわけだし。

ただひとつ気をつけるべきは、このきっかけこそが、臨床心理士という専門職としての構えを歪める可能性があるということだ。きっかけになるくらいの原体験というのは、ある意味で強烈だ。思い入れは、思い込みに成りかねない。思い込みは思考を狭くし、偏らせる。

自分自身の背景を課題と捉えた場合、これを消化できずに臨床心理士になると、クライエントもセラピストも不幸になる。カウンセリング場面では転移や逆転移がつきもので、セラピストは自分自身の問題をある程度片付けておかないと、この力動にひどく巻き込まれる恐れがある。だから大学院での実習という名のトレーニングや、継続的なスーパーヴィジョンの推奨が設けられているのだ。

解決できていなくても、最低限、脇に置いておけること。これが臨床心理士のスタートラインに立つ必要条件であると私は思う。

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臨床心理士資格審査は一次試験が100問マークシート式選択問題(150分)と、論文記述試験(90分)であった。会場の雰囲気は程よい緊張感に包まれていた。ピリつき過ぎている人はおらず、さすが臨床心理士の卵たちだわと感じた。緊張を自覚しつつも、外面は虚勢でも落ち着いてみせる姿勢は大切だ。

とりあえず、おつかれ、俺。通勤電車で参考書を開かなくていい解放感が気持ちいい。一次試験を通っていたら、二次の面接試験も頑張ろうと思う。