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ゆめまち はるせ
2022年4月12日 13:35
「最初はグー」を初めてわたしに教えてくれたのは、祖父だった。初孫のわたしを誰よりも可愛がってくれて、誰よりも遊んでくれた。わたしのいちばん遠い記憶、たしか3歳頃。いつも一緒にお風呂に入って、白いタオルを湯船に浮かべてクラゲを作ってくれたのを、よく覚えている。古い団地、風呂場のコンクリート壁に少しカビが生えていて、その独特の匂いが好きだった。お風呂上がりには、アンパンマンのアイ
2023年12月1日 22:51
わたしの娘はまだ1歳3ヶ月なのに、もう4度目の風邪を引いている。5度目かもしれないが、忘れてしまった。えくぼの浮いたもみじ饅頭のような手で、目を閉じたままわたしを一生懸命に探すのがとても可愛らしい。熱を出して寝込んでいる相手に「可愛らしい」は不謹慎かもしれないけれど、可愛らしいのだ。本当に。まだおしゃぶりの外れない娘を眺めながら、わたしも幼い頃おしゃぶりがやめられなかったという話を、母親か
2023年5月1日 13:02
あの子は「愛」についてよく考える子だった。自分が愛せない人などいないはず、きっと愛せる何かがあるはず、と自分なりに誰かの良いところを見つけ出そうとしたり、それでも限界があると分かって、きちんと納得がいくまで考えたり動いたりするような、そんな子だった。わたしの家のサンルームを非常に気に入ったらしく、まだ寒い二月のしんとした空気を身に纏って、しょっちゅうサンルームで煙草を吸っていた。あの子は
2022年10月13日 00:35
すきということ。となりに すわってほしいな、とおもうこと。ぎゅっと てをつなぎたいな、とおもうこと。ほっぺに ちゅーをしたいな、とおもうこと。すきということ。うそをつかれたら かなしいな、とおもうこと。おたんじょうびを しりたいな、とおもうこと。おてがみを かいてあげたいな、とおもうこと。あなたのこと あいしてるって いいたいんだけどなんだか はずかしい。ずっとずっと
2022年3月20日 13:56
真夜中、突然思う。もしかして今、この世界に生きてるのはわたしだけで他の全ては、生きてないかもしれない。怖くなってテレビを見ても、これはあくまでリアルタイムじゃなくて本当は全部作りもので、今こうして息をしてるのはわたしだけかも。そんな風に考えてたら、何もかもが怖くなってきて、真夜中みたいに暗い心に飲み込まれないように、フタをする。朝になって、突然思う。やっぱりみん
2021年12月6日 05:22
誰のせいにもできない夜は眠れなくたっていいよ目を閉じて綺麗な星空を思い浮かべて月が近づいてきたらブランケットを持って暖かいココアも用意して誰もいないところへいこう僕と君しかいないところへ星ってすごく優しいから喜んで迎えてくれるさ月に着いたら何をしようか大きくてふかふかなベッドと本もたくさん持っていこうココアを飲みながら海と話をしよう海ってすごく優しいか
2021年9月29日 14:10
私の親友は、ちょっと変わっている。落ち着きがなくて、ギターの音が嫌い。よくひとりで鼻歌を歌っている。夜だろうが、お構いなしだ。執筆中の私に、何度も「遊んで」とせがむような迷惑な奴で、機嫌が悪い時は、邪魔だと思うこともある。でも、愛おしい親友なのだ。ベランダから差す太陽の暖かさを身に纏って、私のカーディガンをブランケット代わりに、気持ちよさそうに昼寝をする。恋人と抱
2021年9月27日 08:28
カフェラテを飲み始めた頃、ふと気付いた。私が好きなのは、カフェラテじゃない。外で大きなマフラーを巻いて、白い息を吐きながら、誰かを待っている素振りで、両手に包み込んだカフェラテを啜る私、が好き。もっと言えば、そういうシチュエーションが好きなだけなのである。ここまで考えて、私は本当のことに ” 気付く ”。私が好きなのは、秋だ。秋に恋をしている。秋の全てが好きだ。
2021年4月3日 23:35
ふと、食パンを買ったことを思い出した。卵と牛乳、たくさんの砂糖があればいいので楽だ。私がふやかしたドッグフードを食べていた小さな飼い犬は、いつの間にか、1歳を越して体が大きくなっていたし、冷凍ボロネーゼにツナを入れて食べることしかできなかった私は、いつの間にか、フレンチトーストを作れるようになっていた。ストロベリーウィーク。世間ではそう呼ぶらしい。私のストロベリーウィークは名前