140字の未来物語 byはれも

少し先の未来に起こる物語をお届けします。

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記事一覧

懐かしのThe feels

その韓国人歌手は懐かしの曲を歌い始めた。 なんと30年も前のTwiceのヒット曲だ! 思わぬ選曲に観客の興奮はさらにヒートアップ。 総立ちとなって一緒に歌い始めた。 韓…

翔華大学ビギンズ

破格の給料と研究費。 最新鋭の機器。 新設された翔華大学に世界中の優秀な研究者が集まったのは当然だった。 そこでは遺伝子編集技術の研究が行われた。 遺伝子を改変し…

安曇野ホタル祭り2040

紫色に変わったかと思うと、今度は点滅を始める。 そして遠くからはオレンジ色の大群。 一目散に飛来してくる。 混ざり合うとそれは騒々しい光の洪水となった。 突然、…

ペット語翻訳AIスピーカー

「ねー遊ぼうよお」 ショコラが話しかけてくる。 「もうごはん食べちゃったよ、マミー」 彼はチワワだ。 私のことをマミーと呼ぶ。 ペットAIスピーカーからショコラの声が…

結婚義務化法

そんなバカげた法案が成立するとは誰も思っていなかった。 支持率の急低下に焦る首相の強引な手法、たび重なる野党の失策。 結婚義務化法は遂に成立してしまった。 大バ…

史上最高齢の大統領

史上初の100歳を超える大統領として初当選。 バッシングはひどかった。 ほんの些細な失策でも認知症かと叩かれたものだ。 しかし私は気にしなかった。 多くの政策は実を…

ギンザジロー寿司

「え、手で?人間が?」 「そう。おじいちゃんが言ってた。昔はスシを手で作ってたんだって。しかも素手でだよ!」 「うわっ、すごいね。信じられない」 エレメンタリース…

ほんとうの優しさ

彼からのライン。 告げられたのは残酷な宣言だった。 彼女の頬に涙がこぼれ落ちた。 でも心のどこかでは彼の裏切りを予感していたのかもしれない。 震えていた彼女の声が…

火星に集中

常磐爆走連合 2040 其の弐

常磐爆走連合 2040 其の壱

高齢者向けツヤプル口紅

懐かしのThe feels

懐かしのThe feels

その韓国人歌手は懐かしの曲を歌い始めた。
なんと30年も前のTwiceのヒット曲だ!

思わぬ選曲に観客の興奮はさらにヒートアップ。
総立ちとなって一緒に歌い始めた。

韓国エンターテイメントが誇る歴史的な曲だ。
今どきの若者だって誰もが歌うことができる。

もちろん、世界中で知られているヒンディー語版の歌詞でだが。

翔華大学ビギンズ

翔華大学ビギンズ

破格の給料と研究費。
最新鋭の機器。
新設された翔華大学に世界中の優秀な研究者が集まったのは当然だった。

そこでは遺伝子編集技術の研究が行われた。
遺伝子を改変し病気を治すのだ。
ある意味、人間を改造しているとも言える。

偉大な研究を進めるその大学の科学者達。
人々は尊敬を込め、ショッカーという愛称で呼んだ。

安曇野ホタル祭り2040

安曇野ホタル祭り2040

紫色に変わったかと思うと、今度は点滅を始める。

そして遠くからはオレンジ色の大群。

一目散に飛来してくる。

混ざり合うとそれは騒々しい光の洪水となった。

突然、群れは左右に分かれる。

そしてそれぞれ夜空の向こうに飛んでいった。

後には遠くで鳴く虫の声のみ。

ああ、遺伝子組換えホタルショーはなんと素晴らしいのだろう。

ペット語翻訳AIスピーカー

ペット語翻訳AIスピーカー

「ねー遊ぼうよお」
ショコラが話しかけてくる。
「もうごはん食べちゃったよ、マミー」
彼はチワワだ。
私のことをマミーと呼ぶ。
ペットAIスピーカーからショコラの声が響く。
「ボク、マミー大好き」

ペットの鳴き声を機械学習して翻訳するという触れ込みだったそのAI。

実は学習していたのは飼い主の気持ちだったことが後に発覚した。

結婚義務化法

結婚義務化法

そんなバカげた法案が成立するとは誰も思っていなかった。
支持率の急低下に焦る首相の強引な手法、たび重なる野党の失策。

結婚義務化法は遂に成立してしまった。

大バッシングを受け政権は交代した。
しかし急速に進むデフレに追われ、新政府にはその改正を行う余裕はなかった。

5年後、出生率は緩やかに上がり始めた。

史上最高齢の大統領

史上最高齢の大統領

史上初の100歳を超える大統領として初当選。

バッシングはひどかった。
ほんの些細な失策でも認知症かと叩かれたものだ。

しかし私は気にしなかった。

多くの政策は実を結び、この国はさらに強力に豊かになった。

会場に集う何万もの支持者が笑顔で手を振る。
讃えてくれているのだ。
私の成果を。

そして私の5回めの再当選を。

ギンザジロー寿司

ギンザジロー寿司

「え、手で?人間が?」
「そう。おじいちゃんが言ってた。昔はスシを手で作ってたんだって。しかも素手でだよ!」
「うわっ、すごいね。信じられない」

エレメンタリースクールの帰り道、二人はスシの話で盛り上がった。

「機械を買えない貧しい店は手作りしてたんだって。あのギンザジロー寿司もそうだったらしいよ」
「今は人気チェーン店なのにね」

ほんとうの優しさ

ほんとうの優しさ

彼からのライン。
告げられたのは残酷な宣言だった。

彼女の頬に涙がこぼれ落ちた。

でも心のどこかでは彼の裏切りを予感していたのかもしれない。
震えていた彼女の声がそれを示していた。

「大丈夫だよ。きっと彼はそんな…」

言いかけが、黙った。

今の彼女には、そんな慰めの言葉よりも、優しい沈黙の方が必要だと、Siriは判断したのだ。