4月の朝

美術館に行くとつい買ってしまうポストカードみたいな、持て余した気持ちの置き場所。 酒で…

4月の朝

美術館に行くとつい買ってしまうポストカードみたいな、持て余した気持ちの置き場所。 酒でも涙でも洗い流せない気持ちが愛しくて憎い。 http://ticktacktomo-t.tumblr.com/

マガジン

  • 海辺のカフカ / 卒業論文のこと

記事一覧

固定された記事

読みのカタリバ(あるいは一方的な)

読みのカタリバを作る。 緩やかな繋がりに自分の読みを通す。 あなたの読みを聞きたいです。聞かせて。 「アウトプット」なんて言えるほど整理しちゃいけない。 整理してし…

4月の朝
4年前
9

心が震えたときの言葉が出ない

時間が止まっているのだと思う 素敵な映画を見たとき 心が躍るような音楽を聴いたとき 雨上がりの空がきれいだったとき 心が震えたときの繊細なすがたを表現する言葉が出て…

4月の朝
2年前
4

荷紐

生きとし生ける 者どもよ いつまで続く ぬばたまの 夜の仄かに 香焚かれ 酔いに任せて ふら歩き わけもわからず 荷を担ぐ どうしたものか この荷物 降ろすに降ろす 気にな…

4月の朝
3年前
1

へらへら

うずくまって泣いている私がいた 四つん這いの体勢 暗転した舞台で スポットライトが当たっている 泣いている私を見る私がいて 舞台の観客は一人だけで 私を見ている私は …

4月の朝
3年前

酒無くて 何の花見が 桜かな

桜の季節になると、師匠は決まってこの句を口にしてぼくを花見に誘った。 「酒無くて 何の花見が 桜かな」 歳が40以上も離れたぼくと師匠だったけれど、酒を飲み交わす…

4月の朝
3年前
3

「そうじゃない」未来がすぐ側に横たわっている気がして

月-金で毎日毎日仕事に行って、すっかり暗くなってから帰宅する。 一日の半分以上を職場で過ごして、休息は会社の寮だからもうずっと会社にいるみたいなものだ。 車を運転…

4月の朝
3年前
1

ひととせの詩

いつだって春が来たようだよ 新鮮に出会うあなたの部分一つひとつに 春一番のような驚きで 咄嗟に目を背けてしまうし ぬるい体温の背中に巻きつく時など 春が来たようなこ…

4月の朝
3年前
2

当事者性について

その文章が書かれるにいたる必然性が重要になる時がある 必然性とは作家性やそのオリジナリティに似ているのだけど できれば 「当事者性」とは異なる視点で その必然性を見…

4月の朝
3年前
1

柴栗の 一人はぢけて 居たりけり

笹栗さんという名字の人と出会う。 おいしそうな名前で良い。 栗の炊き込みご飯を想像して暖かい気持ちになる。 塩分の効いたご飯に栗のほのかな甘さが良い。 その人にもぴ…

4月の朝
3年前
2

うまれる

携帯電話を新たに契約した 通信料の問題を解決するために格安スマホを選択した 今までの契約は解除していないので MNPではなく新しく電話番号を手に入れることになった 新…

4月の朝
3年前
3

分裂したもう一人のわたし

スマートフォンの2台持ちを始めた。 毎月の通信量を節約して月2GBで生活をしていたのだけど 我慢している自分が馬鹿らしくなった。 契約を見直すことも考えたけれど、端末…

4月の朝
3年前

新しい電話番号を手に入れる。新しい人生を手に入れたみたいな心地がする。ぼくと紐付くこの情報はSNSのアカウントや契約をするときには必ず必要で、電話番号が増えるともう1人のぼくを作ることができる。個人認証として使える情報が増えるということは、新しいぼくが世界に生まれたということ。

4月の朝
3年前

あきぞら

秋の陽の角度になってきた。真昼の眩しさが気づくとなくなっていて、白く飛んで目を開けられなかったアスファルトの照り返しが柔らかくなっている。今年も夏が終わったんだ…

4月の朝
3年前

オンライン告白

リモートで会議をしたりオンラインで飲み会をしたりするのが流行っているのだから、そのノリでオンラインで愛の告白もできるじゃないか。距離なんて関係ない。想いを届ける…

4月の朝
3年前
3

読みのカタリバ(あるいは一方的な)

読みのカタリバを作る。
緩やかな繋がりに自分の読みを通す。
あなたの読みを聞きたいです。聞かせて。
「アウトプット」なんて言えるほど整理しちゃいけない。
整理してしまったら、言いたいことだけになってしまう。
ほんとに大事なのは、意図せず口をついた言葉なのにね。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdH81os82QF-W9GrGHV5dN15S03

もっとみる
心が震えたときの言葉が出ない

心が震えたときの言葉が出ない

時間が止まっているのだと思う
素敵な映画を見たとき
心が躍るような音楽を聴いたとき
雨上がりの空がきれいだったとき
心が震えたときの繊細なすがたを表現する言葉が出てこない
言葉に出そうとすると、動きたがる言葉が細動するだけで
何も口を吐いてこないのです
縛られているのか
凍りついているのか
確かに震える心があって
出てこようと震える言葉があって
声帯がパクパクと息だけを通す震えだけがあって
どうし

もっとみる
荷紐

荷紐

生きとし生ける
者どもよ
いつまで続く
ぬばたまの
夜の仄かに
香焚かれ
酔いに任せて
ふら歩き
わけもわからず
荷を担ぐ
どうしたものか
この荷物
降ろすに降ろす
気になれず
その実,身体は
荷紐に括られる

へらへら

うずくまって泣いている私がいた
四つん這いの体勢
暗転した舞台で
スポットライトが当たっている
泣いている私を見る私がいて
舞台の観客は一人だけで
私を見ている私は
気まずそうにへらへらと
声を出さずに笑っている

酒無くて 何の花見が 桜かな

酒無くて 何の花見が 桜かな

桜の季節になると、師匠は決まってこの句を口にしてぼくを花見に誘った。

「酒無くて 何の花見が 桜かな」

歳が40以上も離れたぼくと師匠だったけれど、酒を飲み交わすことに関しては全く問題にならなかった。居酒屋で一緒に野球を見ながら焼酎を飲みまくり、ファミレスでは時事問題について語りながらビールと酎ハイを飲みまくっていた。いつだってなんとなくまた飲みに行くか、という流れで週末の夕方5時に集まって

もっとみる

「そうじゃない」未来がすぐ側に横たわっている気がして

月-金で毎日毎日仕事に行って、すっかり暗くなってから帰宅する。
一日の半分以上を職場で過ごして、休息は会社の寮だからもうずっと会社にいるみたいなものだ。
車を運転している時だけが自分の空間。

現実逃避したい気持ちがたまによぎるようになった。
だけどそれは逃げ出したいという強い気持ちではなくて
思考の逃げ場としてここじゃないどこかを探しているだけみたい。
今ここにいない自分を思い浮かべることにどれ

もっとみる

ひととせの詩

いつだって春が来たようだよ
新鮮に出会うあなたの部分一つひとつに
春一番のような驚きで
咄嗟に目を背けてしまうし
ぬるい体温の背中に巻きつく時など
春が来たようなこそばゆさ

抜け出せない夏の中にいる
突き抜ける青空の解放感に
地面へ縛り付けられた私をおもう
とらわれて身動きができないまま
一瞬の中に永遠を感じる
抜け出せない夏の最中

さみしさの形容を秋としよう
断る隙もなく
しらじらと入り込ん

もっとみる
当事者性について

当事者性について

その文章が書かれるにいたる必然性が重要になる時がある
必然性とは作家性やそのオリジナリティに似ているのだけど
できれば
「当事者性」とは異なる視点で
その必然性を見出したいと思っている。

理由は「当事者性」というのは自己責任論に近い気がしているから。
その人がその状況だから書けるものとして作品を取り扱うのは
その作品の問題意識を他人事として考えることではないのか。
ぼくの/あなたの問題意識はだれ

もっとみる
柴栗の 一人はぢけて 居たりけり

柴栗の 一人はぢけて 居たりけり

笹栗さんという名字の人と出会う。
おいしそうな名前で良い。
栗の炊き込みご飯を想像して暖かい気持ちになる。
塩分の効いたご飯に栗のほのかな甘さが良い。
その人にもぴったりの名前だと思った。

忙しく過ごしていたせいで
秋の訪れ対してあいさつの一つもできていない。
季節への大いなる無礼を恥ずかしく思う。
人生で桜をあと何度見ることができるのかと思いを馳せるように
秋の深まりの小さな変化を見つけていく

もっとみる
うまれる

うまれる

携帯電話を新たに契約した
通信料の問題を解決するために格安スマホを選択した
今までの契約は解除していないので
MNPではなく新しく電話番号を手に入れることになった

新しい電話番号
欲していたわけではなかったけれど
いざ新しい手にしてみるとそれはちょっと不思議な気持ちがした
全く予想していなかったこの感覚が、じんわりと心に広がった

ソーシャルネットワークの時代だから
わたし=アカウントがいろいろ

もっとみる
分裂したもう一人のわたし

分裂したもう一人のわたし

スマートフォンの2台持ちを始めた。
毎月の通信量を節約して月2GBで生活をしていたのだけど
我慢している自分が馬鹿らしくなった。
契約を見直すことも考えたけれど、端末代はすでに払い終えているし
大手キャリアの通信費が高いことに少しうんざりしていた。
そこでMVNOの格安スマホを新たに購入しようと決めた。

かねてからiPhoneを欲しいと考えていたことも、そう決めた要因だ。
高校生の時にスマホが出

もっとみる

新しい電話番号を手に入れる。新しい人生を手に入れたみたいな心地がする。ぼくと紐付くこの情報はSNSのアカウントや契約をするときには必ず必要で、電話番号が増えるともう1人のぼくを作ることができる。個人認証として使える情報が増えるということは、新しいぼくが世界に生まれたということ。

あきぞら

あきぞら

秋の陽の角度になってきた。真昼の眩しさが気づくとなくなっていて、白く飛んで目を開けられなかったアスファルトの照り返しが柔らかくなっている。今年も夏が終わったんだということに気づく日。まだ暑くて台風もじゃんじゃん来るけれど、ここからは深まっていく一方になる。もう盛るという段階ではなくなることに、毎年寂しさを感じてしまう。秋も好きだけど夏も好き。それで言えば春も夏も秋も冬も全部好き。だけど、夏が終わる

もっとみる

オンライン告白

リモートで会議をしたりオンラインで飲み会をしたりするのが流行っているのだから、そのノリでオンラインで愛の告白もできるじゃないか。距離なんて関係ない。想いを届けることに関しては。

彼がそう気づいたのは、ユーチューブを見るのに飽きてそろそろ寝ようと布団にもぐっていた深夜1時ごろだった。そう気が付いてしまってからは逆にタイミングもくそもなくいつでも告白ができてしまう状況に立たされているこの状況に、いて

もっとみる