ひととせの詩

いつだって春が来たようだよ
新鮮に出会うあなたの部分一つひとつに
春一番のような驚きで
咄嗟に目を背けてしまうし
ぬるい体温の背中に巻きつく時など
春が来たようなこそばゆさ

抜け出せない夏の中にいる
突き抜ける青空の解放感に
地面へ縛り付けられた私をおもう
とらわれて身動きができないまま
一瞬の中に永遠を感じる
抜け出せない夏の最中

さみしさの形容を秋としよう
断る隙もなく
しらじらと入り込んでくる
わたしのしらないわたしを
あなたは知っているんでしょうから
わたしだけのけ者みたいでさみしいじゃない

この冬最初の雪が降った
あなたがそばにいないけれど
胸の内のあたたかさは確かで
余計に身体がしばれてしまう
そばにいてくれさえしたならば
あたたかさをあなたに求めることができるのに

ひととせをおもう
いつだって嬉しくていつだって悲しい
大理石みたいな白濁とした模様が
瞼の裏や踵の中を漂っている
大きな流れをめぐっていくもう一人のわたしと
小さなシミをみつめているもう一人のあなたへ
ひととせの形容詩を送ります

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