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2020年7月29日 21:25
句集「むずかしい平凡」自解その55。 口語俳句ですね。最近は口語文語にこだわらず、できるだけ自由に俳句を作りたいと思うようになってきた。 基本的な型というのはたしかにあるし、それに従っていけば打率も上がる。でも、それだけではなかなか自分自身の深い部分を書き留めきれない、そんな思いも出てきて、つねに試行錯誤ですね。 これは即興的な句です。 最近、必要に迫られて書道に親しむようになっ
2020年7月28日 07:40
句集「むずかしい平凡」自解その54。 近所の小さなお菓子屋さんや八百屋さん、洋服屋さんなどが次から次に店を畳んでいる。郊外に大きなスーパーマーケットができてしまった影響でもあるし、そもそももう店を継ぐ人がいないという事情もあるかもしれない。 ただ、ここ数年どっと店を畳む傾向が強くなっているのは、やっぱり大震災の影響もあるのかなと思う。私の住む近辺は避難者がそのまま生活の拠点にしているケー
2020年7月26日 21:59
句集「むずかしい平凡」自解その53。 これは師・金子兜太先生が亡くなって、ひと月ほど経った頃の作。 秩父長瀞で最後の「海程・俳句道場」が催され、金子先生の墓参に赴いき、そのときに生まれてきた句。 お墓の前に立ち、黙禱をし、ひとしきり心の中で会話をした後、黙禱を解く。そこをすうーっと蝶が横切って行った。 このすうっと横切っていったときの呼吸が、なんだか自分が黙禱を解いたときの息遣い
2020年7月24日 13:45
句集「むずかしい平凡」自解その47。 この句集「むずかしい平凡」というタイトルになった一句ですね。 よく聞かれるのが、この句ってどういう意味ですか、という質問。意味といわれても困ってしまいますけれどねえ。 俳句の場合、作るときに「取り合わせ」という技法があるんですね。 たとえば、この句の場合、「フリージア」と「けっこうむずかしい平凡」と、直接的には関係ないような言葉が取り合わせら
2020年7月24日 07:17
句集「むずかしい平凡」自解その46。 多喜二とはプロレタリア文学作家小林多喜二のこと。亡くなったのは1933年2月20日。 貧しい家庭に生まれ、しかしその中でよく学び、優秀な成績で学校を卒業した。けれども、あまりにもひどい資本主義体制により、貧しい人たちが人間性を奪われて日々を暮らしているのを目の当たりにし、共産党に入党。非合法活動をしながら、社会を告発する作品を書き、当然、特高警察に追
2020年7月24日 06:51
句集「むずかしい平凡」自解その45。 この句も、前回と同じく手術のあとの体験を題材にしたもの。とはいえ、体験とも呼べないほどの一瞬の景に過ぎませんが。 麻酔から覚めて、意識がゆっくりゆっくり戻ってくるわけですが、そのとき、どうも現実感がないんですね。さっきまで手術を受けていたということが、頭では理解できるんですが、ただベッドに横たわっているだけだと、どうも現実味が欠けてしまう。自分の体が
2020年7月23日 14:56
句集「むずかしい平凡」自解その44。 胆石が胆嚢にたまっていたので、その摘出手術のため入院した際の句。 術後に医師の話を聞くと、順調に手術は進んだのだが、最後、胆嚢にたまった胆石の量が多くて、へそのところにあけた穴からそれを引き抜くのに苦戦したとのこと。思いのほか時間がかかって、家族は少し心配したらしい。麻酔がかかっていたこちらは全然覚えていない。ただ、手術室を出て、なんか声をかけられた
2020年7月23日 08:13
句集「むずかしい平凡」自解その43。 がらんとした電車の車内で、電車がゆっくり曲がったり、ちょっと揺れたりすると、そのとき、吊革が一斉に、まったく同じ角度で、おなじ揺れ幅で揺れる、そんなことを目にすることがありますね。うまくいえませんが、ああいう一瞬が好きですね。 吊革なんて、べつに命があるわけじゃないし、人が手を入れている時にこそ役に立つものだけれど、そうじゃないとき、人に使われていな
2020年7月23日 07:04
句集「むずかしい平凡」自解その42。 夏は青田が広がる東北の地。 けれども冬は見渡す限りの雪原。 豪雪地帯というのは、ほんとうに一日中晴れることがない。というか、ひどいときには一週間青空を見ないこともある。「雪のち雪」とは、妻子が福島から豪雪地帯へ自主避難し、初めての冬を体験したときの実感。 そして、東北という地が、この間に深く眠って、いずれ訪れる春を、じっと耐えながら待っている
2020年7月19日 22:17
句集「むずかしい平凡」自解その35。 この句、とくに解説もいらないですよね。 冬の薔薇が咲いている。母がシューベルトの歌を歌っている。歌は上手いかどうか、それは想像におまかせ。ちょっと音痴ぐらいのほうがいいですかね。まあ、シューベルトと冬の薔薇というのはちょっとつきすぎ、と俳句の先生なんかには言われそうです。 でも、シューベルトはつきすぎでもいいじゃないかって思います。旋律に憂いがあ
2020年7月19日 17:15
句集「むずかしい平凡」自解その34。 もうずいぶん昔のことですけれど、冬の上野公園で見た風景。それがわりあい最近になって頭の中で映像化されることがあって、なんなんだろう、と思いながら句にしてみた次第。 「木のベンチ」が唯一の救いでしょうか。なんとかしっかり眠って、今日を生き延びていってほしいなと思いますが、この国の非情さは、なかなか木のベンチに眠る人には届きにくいところがありますから、ど
2020年7月19日 17:00
句集「むずかしい平凡」自解その33。 この句、自分でもうまく説明できないんですけれどね。 詩とはなんぞや、という質問があったら、まあ答えてみようかな、そんな気持ちですね。いろいろ定義はあるんだろうけれど。 もうちょっというと、むずかしい言葉でこねくりまわしたようなものは詩じゃないな。日常語と日常感覚。 そして、読んでしっかり栄養になる感じ。 でも、日常感どっぷりとも違う。
2020年7月18日 08:19
句集「むずかしい平凡」自解その31。 抜けた乳歯を屋根などに投げて、次に生えてくる永久歯の健康を祈るちょっとした儀式は、まだ今も残っているんでしょうか。私も小さいころ、抜けた歯を夜空に投げたものです。小さい歯が屋根にこっと当たって、あとはしーんとした月夜。そのときの厳粛な気持ち、今も体の一部分に残っています。 この句は、我が子のことを描いた句。 小さいころ、この子によく噛みつかれたな
2020年7月18日 00:18
句集「むずかしい平凡」自解その30。 この句でお判りいただけたかもしれませんが、小生、高校の教師をしております。現在は夜間定時制勤務。「夜学子」とは、夜間学校で学ぶ生徒のことを指します。 今定時制高校の役割というのは、かつての苦学するところ、というイメージとは変わってきているかもしれませんが、しかし、それゆえいろいろな複雑な状況を背負って学ぶ子も多いんですね。一人一人の背負うものの大きさ