46 鎖をなして星潤むなり多喜二の忌

 句集「むずかしい平凡」自解その46。

 多喜二とはプロレタリア文学作家小林多喜二のこと。亡くなったのは1933年2月20日。

 貧しい家庭に生まれ、しかしその中でよく学び、優秀な成績で学校を卒業した。けれども、あまりにもひどい資本主義体制により、貧しい人たちが人間性を奪われて日々を暮らしているのを目の当たりにし、共産党に入党。非合法活動をしながら、社会を告発する作品を書き、当然、特高警察に追われ、捕縛され、拷問死。俳句では、2月20日を、「多喜二忌」として季語にしています。

 私も、この「多喜二忌」を過去のものにしてはいけない、と思っています。

 いや、真の意味で過去のものにできればいいと思っています。

 でも、今の社会どこを見ても格差があり、政治の腐敗があり、国民の無関心がある。民主主義体制の中で独裁が起き、文書が隠蔽され、政府に都合のいい言説がマスコミから垂れ流しになっている。

 多喜二が闘っていた時代と同じものが、また生き返っている。

 私は、多喜二のように激しく闘うことはできないけれど、それでもそういう気持ちとつながっていたいと思う。

 そんな思いがこの句になったのかな、と思います。

 また、この2月20日は、私の俳句の師、金子兜太の亡くなった日でもあります。金子先生も、句会で多喜二のことはよく語っていたものです。

 もし、このコラムを読んだ方、興味あれば、小林多喜二、読んでみてください。いろいろ批判もあるけれど、しかし、その生き方には何かを感じるところあると思います。

 この句が、その小さなきっかけになれば。

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