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記事一覧

露の静寂|情景

露の静寂|情景

青ざめた月から
銀の鎖

ヒヤシンスブルーの
繻子をまとった
妖精が降り立つ

水仙の野の陰に

強い媚薬にも似た
涙をひとしずく

静かな夜が
そうやって朝へと
露を結ぶ

光あれ|詩

光あれ|詩

愛されていて
と 念う

たったひとりでいいから

あなたが誰かに
愛されていてほしい

でも
その「あなた」が誰なのか
やっぱり
私にはわからない

限りない
ノスタルジア

迷い子のように
暗いところを
不吉な様子で
歩いているひと

届かない手を合わせ
指を組んで
祈りましょう

世界中の人が
幸せでありますように

そのなかにいる
「あなた」のために

柔らかな結晶|#300文字ラブレター

柔らかな結晶|#300文字ラブレター

いつも闇を見ているのね
そのほうが
落ち着くのでしょ

いらないものが見えなくなるから

見えない分
闇そのもののように
なにもかも鋭くなって

私 泣いていたわ
あなたと見てふれあった
闇の露が
あまりにも
澄んで優しいから

あれは
永遠を否定しない顔をした
静かな
静かな夜だった

あなたの闇を受け取って
涙に溶かして
流し去りたかった

でも
その雫といっしょに
深い闇の底に
おちてしまっ

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桜ほど薄い花びらはない

もし紙ほどの張りがあったなら

美しさに耐えかねて
知らず触れた人の指先を
きっと紅く
斬るだろう

ならばすべての刃を捨て
風になびいて
何にも耐え得ぬ身となり

雨や風や陽に
囚われて
散ってゆきたい

儚き生
何ひとつ
損なうことの
ないように

返歌

返歌

「ええ、いるわ...思い出のなかに」

神さまは過去の中にいる。
未来にはいないから
漠とした不安のうちに
過ごすことになるけれど

どうぞ思い出して

青空とあの日の
刹那刹那の夕暮れに
確かに
神さまの裳裾が
ふわりと風に光ってた

それを
あなたの横顔に
透かして見ていたの

福田尚弘さんの詩へ、僭越ながら返歌を...。(サンクチュアリに踏み込んでいたらごめんなさい💦)

 この詩は、私の

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最後の日には|詩

最後の日には|詩

「山や川は崩れても
 ことばや文学は残る」
...と、ある文学者は言う

たしかにそう
私が地球人最後の生き残りなら
世界中の文学の電子データを
ひっつかんで宇宙船に駆け込む
それだけは連れて行く

だけど思うの

ほんとうは

この地球の最後の生き残りなら
その記憶媒体を
地中深くうずめて
なにかにお祈りをしてから
いっしょに最期を迎えたい

ロケットは空っぽのまま
送り出す

地球を滅ぼした人

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春愁|詩

春愁|詩

悲しみとは
虚脱した怒りなのか
泣き濡れた愛なのか

ゲッセマネの園の片隅に
あの日 咲いていた
小さな白い花を
彼は見つけただろうか

その花はたしかに
高貴なるまなざしが注がれるのを待っていた
けれどそれは
慰めを与えるためなのか
憐れみを乞うためなのか
花自身にもわからない

春は今年もまた気だるい疑惑のように
おぼろに月を霞ませる

まだ訪れてもいない春の物憂さよ

ことばにまつわるひとりごと|Valentine Day に

ことばにまつわるひとりごと|Valentine Day に

私という存在が
どこにもいなくなるまで、完全に
透明になりたい、と思う

もとは私だった空っぽの器に
流れ込んでくる想念を
摩擦なくそのまま
ことばにできるように

そのために
あつかえることばを増やしたい

フランス語もそう
文語もそう

いつか無になりたい
それは
私が「あなた」に還ること

「あなた」はだれなの
あなたの名前は
「ことば」なのかな

無性に愛おしいもの
心から焦がれるもの

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sleeping beauty |詩

sleeping beauty |詩

私 切り取られた花みたいに
生きたまま横になって

ふたりの
密やかなる愛の掟が
息づいている
この部屋にいる

昼には
魂ごと抜け出して
大空を飛ぶ鳥になる

碧い海と空の交わるところで
お日さまの光を浴びて
白い羽を養う

夜になれば
抜け殻だったこの身体に
戻ってくるわ

あなたが訪れるたびに
春の祭の生贄みたいに
匂やかに

愛し合うほどに
美しくなる

でも
昼には部屋を覗かないでね

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私たちはいったい
どこへゆくの

愛によりひととき光彩を放ち
祈りによって熱を鎮め
寂しさと苦しみを
深々と胸に刺して

遠く
はるか遠くを
見つめる

知らず知らず
大切なものから遠ざかりながら
憧れを胸に燃やして


悩め、悩め
それは誰かの
光になる



過去へ咲く花|つぶやき

過去へ咲く花|つぶやき

私のことばは《レクイエム》
「だれか」や「その人」に手向ける鎮魂歌

かつて生きていたあのひとを慕って
ひとりでに咲く花

どのように咲くか
決めるのは私ではなく、花自身
私ができるのは
せいぜい
お水をあげるくらい

「透きとおることばの花びらをあつめています」

透明でないと、たぶん時は越えられない

ピアソラ「アヴェ・マリア」
(ダニエル・ミル)

月魄|詩

月魄|詩

ごらんよ
欠けてゆくあの月の
暗いところが大きくなってゆく

もう光は細い、細い繊月

おいでよ

あの月の鞘をはらって
君を刺したりしないから

冷たい光で浄める間
少し痛いかもしれないけれど

そのあとで
君を月溜まりのなかにつれていく

痛いわけじゃない
冷たいだけ

青白い熱に苛まれていた
君の体も

霜明かりみたいな指先も
透明な色になじんでゆく

君の心臓の音が
どこにいても追いかけて

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優しさの花|詩

優しさの花|詩

きみにふれることとは
優しさにふれること

ほんとは優しいばかりの二人ではないけれど

それでも
ふれているその場所には
たしかに優しさが息づいていて

だけど たぶん
優しさなんてほんとは
かけらも持ち合わせていない僕ら

だから
手をつなごう

手のひらの間にある優しさを
なるたけ長く
咲かせ続けるために

きみは野の花
僕も野の花
ふたり並んで
虹を待つ

 早いもので、もう大晦日。
 年末

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想いはそぞろに
妖精となり
さまよう夢幻の苑

花に触るればうす紅の爪
葉に触るれば翡翠の爪に

月に照らされ
真珠の肌
夜の髪

熱も華やぐ
胡蝶の夢

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インフルエンザ陽性、と入力するも「妖精」に。ついでに詩を書く。

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