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めがね男子愛好会。

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やっぱり💕好きなものは、好きだと言おう。 声を上げて行こう!【#めがね男子愛好会】 (美しいイラストはyuhei.info) めがね男子👓をこよなく親愛している人達と、別にそれ… もっと読む
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#短編小説

龍神さんに、任せればいい 2

龍神さんに、任せればいい 2

は、は、は、はああ〜「くしゃみが途中で止まるのって、気持ち悪いよね」小林悠子がクスクス笑いながら小宮圭に云った。「本当に参ってますよ。この時期は」「小宮くんも花粉症なのね。私もよ」「森田先輩も花粉症?でも全然くしゃみとかしてないですね」

「私の花粉症は、もう少し先なの。
『稲の花粉症とブタクサ』
なんだか嫌な名前よね」「ブタクサって迫力があるね。杏には似合わない。ね、小宮くん」「森田先輩がブタク

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Blue Rose

Blue Rose

「きれいなブルーですよね」

僕がバラ園でしゃがみこんでバラの写真を撮って立ち上がったときに、一人の女性が話しかけてきた。ひとりごとのようにも聞こえたけど、たぶん僕に話しかけてきたんじゃないかな。周りにほかの人はいない。少し躊躇ったものの、控えめに返事をした。

「そうですね、きれいです」

女性はブルーのバラをまっすぐ見つめながら話したらしく、僕が横を見たときの彼女は横顔だった。鼻筋が通っていて

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恋の始まり

恋の始まり

夜、職場から駅に向かう道中で、誰かに突然声をかけられた。

「よかったら、ご飯、行きませんか?」

驚いて声のほうに顔を向けたら、中嶋君がちょっと緊張した顔で私を見ていた。中嶋君は職場の男性で、今年うちの部署に来たばかりの若い子。何歳年下なのか正確には分からないけどたぶん5歳以上は離れているだろう。

そんな若い子に誘われて驚いたけど、今日は金曜日の夜なのに特に予定もなかったからあっさり「いいよ」

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スズランとタンポポ

スズランとタンポポ

彼女の名前は“鈴蘭”という。もちろん僕の彼女。なんてね。僕が一人でそうだったらいいのにと思っているだけなんだけど。

名前だけじゃなく、顔も可愛い。知り合ったのは今通ってる夏季講習の予備校。訊くと第一志望の大学が同じだった。僕は俄然やる気が湧いてきた。

       🌿💐

しかし鈴蘭の頭の良さには驚かされる。全国統一模試で、たいてい30位内に入っている。焦る。僕の現状は、志望校の合格率は3

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泣く。〈渋谷編〉

泣く。〈渋谷編〉

 渋谷のBunkamuraを、抜けた先の路地に、とあるクラブがあった。そのビルの地下1階に階段を下りて行くと、黒い分厚い扉が開き、大音量で音楽が流れる空間に繋がる通路があり、左右に立つ人集りが、通り過ぎる瞬間から、好奇の目で品定めをする。視線は刺すが、甘美な魅了を放つ。見られる事には慣れている。寧ろそうでなくては、女に生まれた意味が無い。そう疑いもせずに地上8センチに立っていた。

 いつものよう

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夜光虫。〈代官山編〉

夜光虫。〈代官山編〉

 代官山にある、ダイニングバーの名前。

 水槽の無数の泡、その限られた中で、泳ぐ熱帯魚。煌びやかに照らされる空間に所存無く、薄暗く揺れている。息苦しいのか、口をパクパクさせて宙を仰ぐ。

 まるで今の私のようだ…

 21トゥエンティワン。大人でも子供でもない、わたしは、「恋」をした。勿論「初恋」ではない。

 幾つか夜の割りの良いバイトを、掛け持ちしていた。
そんな時に、有名雑誌に掲載されてい

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加減、手加減。〈下北沢編〉

加減、手加減。〈下北沢編〉

 蝉がしみ入るような、茹だる気温の午後。スーパーから買い物袋を下げて、少年野球のグラウンド前を、日傘をさして、トボトボと歩いていた。
 
 応援の歓声が響く外野席に、視線を向けると、タンクトップの男の子が座っている。

 横顔が「モヤシ」にそっくりだった…。
「モヤシ」は、学生時代の友人だ。

 ハンカチで汗を拭いながら、立ち止まって、横顔のシルエットを抜き取った。やっぱり似てる。

 日差しが強

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カンカン照り

カンカン照り

暑い。暑いしか言葉が出てこない。真夏の午後3時。家に居ればいいものを、わざわざ炎天下の道を歩いているのは、私と祖母だ。本当は、祖母も祖父も、とっくにあの世に逝った。今は叔母夫婦が2人で住んでいる。

私はいま、5歳くらいの自分に戻って、その頃、よく行った場所を、元気だった頃の祖母と歩いている。この状況を私はいまいち理解していない。いや、全く理解していない。祖母が生きている。ということは、夢を見てい

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残酷という名の感謝

残酷という名の感謝

僕と砂羽は駅のホームから大海原が迫るように見える町を、目的もなく、ただ歩いていた。

大都会の横浜駅から電車に乗って、ホームから海を眺めるためだけに来る人もいる、そんな駅。改札を出て、田畑を眺めながら、海に向かう。歩き疲れた僕たちは、たくさんあるテトラポットの一つに座ることにした。「あ〜、気持ちがいいです」砂羽は目を閉じて、海風に吹かれている。

以前から乗っている電車で、この駅に停車するたびに、

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一番、爽やかなモヒート

一番、爽やかなモヒート

「おはよう、知輝」「おはよう、姉貴、あれ、もうシャワー浴びてきたんだ。さてはデートだな」「へへ〜ん。知輝には彼女はいないの?高2なら、彼氏や彼女くらい居るんもんじゃないの?」「俺の顔を見ると、いつも同じ話しだな。俺にだってやりたい事があるんだよ」

「何よ、やりたい事って」「免許」「免許?なにかの資格でも取るの?」「運転免許証だよ」「それは18になってからの話しでしょう?」「誕生日の2ヶ月前から教

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