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現代アート関連、本、映画などのレビュー

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音楽レビュー以外はだいたいこちら・・更新頻度は低いかもしれません。
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#現代アート

ゼロ地点へ回帰するアイデンティティとレコード・ジャケットを想う(最近読んだ本5冊の感想)

ゼロ地点へ回帰するアイデンティティとレコード・ジャケットを想う(最近読んだ本5冊の感想)

前回思いつきで書いたもので、最近私が読んだ本についての読後感想の記事をアップしてみたところ意外にたくさんの反響をいただいて、投げ銭までいただいたので、僭越ながらもう少しだけ書いてみようかと思います。

例によって、私は読書家というにはあまりに雑多なジャンルを読み散らかしているので、まとまりがあるようでないかもしれませんが、その辺りはご愛嬌(?)ということで・・。

①『偶然と必然の方程式』(マイケ

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空洞のもつ恒久性としての「くつろぎ」(ヴォルフガング・ライプについて)

空洞のもつ恒久性としての「くつろぎ」(ヴォルフガング・ライプについて)

タンポポやヘーゼルナッツなどの花粉を実際に自分で採取し、丁寧に篩にかけて床に敷き詰める作品や、お米を山のように盛り上げたものを等間隔で敷き詰め、しばしその上に大理石や御影石などの家の形をしたオブジェを置く『ライス・ハウス』、

蜜蝋を用いて回廊のようなスペースを作ったり、蜜蝋のブロックを塔のように積み上げる作品、あるいは大理石に牛乳を注ぎ、表面張力により少し丸みを帯びた四角とつやつやした牛乳のマチ

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ポピュリズム・ポイエーシス・ポッシュロスト(マイケル・フィンドレー『アートの価値』を読んで)

ポピュリズム・ポイエーシス・ポッシュロスト(マイケル・フィンドレー『アートの価値』を読んで)

「オークションで数億円!」という見出しのニュースを近頃はよく見るかと思いますが、「数億円」であるからには価値があるアートなのだろう(どこが良いのか理解はできないけれど)、となんとなく腑に落ちない感覚を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私は現代アートが好きですが、現代アートの評論を書くことに「意味」が感じられないことがしばしばあります。それは悪い意味ではなく、アートマーケットを意識した作

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ランドマーク・侵略・アクセシビリティ(バスキア以降、バンクシー前後/ポスト・グラフィティのアーティストについて)

ランドマーク・侵略・アクセシビリティ(バスキア以降、バンクシー前後/ポスト・グラフィティのアーティストについて)

巷ではバスキアの展示がとても評判だと聞いておりますが、グラフィティ・アートというものは現代(といってもかなり前からその呼称ではありますが)では、「ポスト・グラフィティ」などと呼ばれ、今尚発展を見せているジャンルかと筆者は思います。

事実、キース・ヘリングやバスキアのアートはユニクロでTシャツになったり、東京都のバンクシー関連の話題など・・嘗てよりかなり「身近」なものになっているように感じます。

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オーセンティック・コンテクスト・ブロークン(ネオ・ラウフについてのレビュー)

このテキストを初めて書いたのは恐らく2012年だと思われます。

ただし、原文は恐ろしく改行がなく、死ぬほど冗長だったので、注釈と改行を入れて再構成しています。(なお、私の文章にもともと改行が少なかったのは、西洋の文献がそうだったからです。西洋かぶれなんでね・・)

ネオ・ラウフがどういう人間かについては、Wikidediaで参照してください、こちらでは語っていません。

コンテクスト・解体・マッ

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幽霊としての人間、記号としての生(クリスチャン・ボルタンスキー『Lifetime』レビュー)

幽霊としての人間、記号としての生(クリスチャン・ボルタンスキー『Lifetime』レビュー)

本稿は筆者が2019年8月16日に鑑賞したボルタンスキーの展覧会『Lifetime』のレビューですが、4000字近くありあまり読みやすいものではないので、各チャプターの①〜③の文章を読めば大筋の筆者の考えがわかるようになっています。

また、彼のバックグラウンドについては、文中で触れていたりいなかったりするので、興味のある方はWikipediaなどで調べていただくと幸いです。

氏にとっての「死」

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マイケル・デュモンティアー『Scribbling Over the Drawn Human Figure』レビュー

マイケル・デュモンティアー『Scribbling Over the Drawn Human Figure』レビュー

本稿はマイケル・デュモンティアーの『Scribbling Over the Drawn Human Figure』という2009年に制作されたインスタレーションについての批評であるが、
2012年時点の情報をもとに書かれているため、情報が現代の視点から書かれているわけではないという点についてあらかじめ留意いただきたい。

また、マイケル・デュモンティアー(Michael Dumontier)につい

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