青大井空

目印はいくつもある、この星の上に この星の上でぼくたちが いつかまたやり直せるように …

青大井空

目印はいくつもある、この星の上に この星の上でぼくたちが いつかまたやり直せるように 時を越え再びめぐり会えるように 目印はいくつもある、この星の上に……。 /小説と詩を公開中。1962年生まれ、男

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(小説)八月の少年

43章の連載です。よかったらお付き合いください。どの章も長文なので、時間のある時にお読み下さい。 (あらすじ)#アインシュタイン #リトルボーイ #マンハッタン計画

青大井空
2週間前
27

(詩)きみといた五月

五月 すべてが五月 きみは何に 五月を感じる? ううんとね 木洩れ陽、風、緑のささやき……。 ぼくはね ぼくは、きみ きみの泣きそうな笑い顔 五月 すべてが五月だった…

青大井空
9時間前
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(小説)八月の少年(十五)

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(小説)八月の少年(十四)

(十四)聖夜  受話器を置いて列車の窓を見た。雪はもう街の家々の屋根に積もっていた。 「メリークリスマス!」  街の通りを子どもたちが嬉しそうに駆けてゆく。その後を…

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(詩)雨生まれのわたし

夏の前の 雨がなつかしい 梅雨の前の 雨のにおいがなつかしくて 誰もいない 海の見える駅の プラットホームの壁にもたれて ずっと 雨を見ていたかった 海の音聴きながら …

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(小説)八月の少年(十三)

(十三)電話ボックス  列車は何事もなかったように走り出した。幻のように見えた一点のあの光もすぐに山の暗黒の中に消え去り、荒涼とした風景だけが延々と続いた。わたし…

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(詩)若葉の地球

地球ははじめから 地球だったのかな? 大人の地球 それとも地球にも 子どもの時代があったのかな? 若葉の地球 地球がまだ若葉だった頃 光輝く五月、眩しい季節の中で 若…

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2日前
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(小説)八月の少年(十二)

(十二)山奥  ベルが鳴り止み、列車はせみしぐれ駅を後にした。列車は林から森へ、森から山へと奥深く入っていった。いつしかせみしぐれも聴こえなくなり、木々の葉は色づ…

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3日前
24

(詩)ふとん

春の陽の中に ふとんが並んで ほされている 大きなふとんと それより 少しちいさなふとんが 数枚ならんで はなうたでも歌いながら 空高く、青くてまぶしい 空高く泳ぐこ…

青大井空
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(小説)八月の少年(十一)

(十一)せみしぐれ駅 「どうかなさいましたか?」  振り返ると車掌だった。 「こんな所にお立ちになって」  わたしは不機嫌そうに答えた。 「ああ、雨だよ」 「雨ですか?…

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4日前
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(詩)立夏

五月なのに、もう夏が立つ 木漏れ陽、まだ春の陽射し 音楽室から聴こえて来た ピアノの音 弾いていたのは 弾いていたのは春? それとも夏? 春の終わりと夏の初めの 涼し…

青大井空
4日前
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(詩)不機嫌なきみの横顔

不機嫌なきみの横顔に 雨のしずく 雨の日に会いたい? それとも 晴れた日がいい、 わたしと会うの? いつも不機嫌な きみの横顔は 何を見ている 夏の前の陽射しは ぼく…

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5日前
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(十)雨宿り  雨が降り続いた。幾日も幾日も降り続き空はどんよりとした灰色の雲で覆われていた。寒くはなくまた蒸し暑くもない。初夏の陽気だった。列車の窓から見える景…

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5日前
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(詩)四季

春、五月の或る日 わたしはこの地上に やって来たらしい その日晴れていたか 雨が降っていたか それを知る人は もうだあれもいません 降っても晴れても わたしという命に…

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(小説)八月の少年(九)

(九)波音  なぜか急に寒くなった。吐く息が白い。肌寒いといったものではない、凍りつく寒さだ。わたしの体はがたがた震えた。何だ、この寒さは?  窓に目をやるとちらほ…

青大井空
6日前
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(詩)立夏の前に

一本の桜の木に恋をした 桜吹雪の中で恋をした かなしい結末になると 分かっていて それでも 一本の桜の木に恋をした 少年のように きみに恋をした 花を失くした後 きみ…

青大井空
7日前
36
(小説)八月の少年

(小説)八月の少年

43章の連載です。よかったらお付き合いください。どの章も長文なので、時間のある時にお読み下さい。

(あらすじ)#アインシュタイン #リトルボーイ #マンハッタン計画 #原爆 #ヒロシマ #昭和天皇 #尾瀬 #創作大賞2024 #ミステリー小説部門

《本文》(エピグラフ)
 That we are is the certainty that, we have been and will be.(

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(詩)きみといた五月

五月
すべてが五月

きみは何に
五月を感じる?

ううんとね
木洩れ陽、風、緑のささやき……。

ぼくはね
ぼくは、きみ
きみの泣きそうな笑い顔

五月
すべてが五月だった
きみといた五月

(小説)八月の少年(十五)

(小説)八月の少年(十五)

(十五)スノーマン
 シートに戻った。絶え間なく雪は降り続いた。いくつもの昼と夜が流れた。窓の外はまっ白で他には何も見えなかった。遠く何処からか爆発音が聴こえた。戦争はまだ続いているのだ。いつになったら終わるのだろう?ふと雪景色の中に何かが見えた。何だろう?吹雪の中にぽつりぽつりと黒い影。
 戦車だ。ああ、今あそこで戦争をしているのだ。

 兵士に抵抗する市民の姿が見えた。飢えと寒さと疲労に倒れる

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(小説)八月の少年(十四)

(小説)八月の少年(十四)

(十四)聖夜
 受話器を置いて列車の窓を見た。雪はもう街の家々の屋根に積もっていた。
「メリークリスマス!」
 街の通りを子どもたちが嬉しそうに駆けてゆく。その後を白い子犬が尻尾を振りながら追いかける。その息がまた白い。その息の白さが何ともいとおしい程に白いのだ。気が付くと電話ボックスは消えていた。

「メリークリスマス!」
 わたしは初めて教会で聖夜を迎えた晩のことを再び思い出した。わたしはその

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(詩)雨生まれのわたし

夏の前の
雨がなつかしい
梅雨の前の
雨のにおいがなつかしくて

誰もいない
海の見える駅の
プラットホームの壁にもたれて

ずっと
雨を見ていたかった
海の音聴きながら
波の音に遠慮して
細く小さくしっとりと
雑草の地面に落ちてゆく
雨粒がはじけてこわれる時の
笑い顔見たかった

それからやがて
雨は強くなり
海の音さえ聴こえなくなるまで
ずっと
雨を見ていたかった

雨の日が好きな雨生まれ

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(小説)八月の少年(十三)

(小説)八月の少年(十三)

(十三)電話ボックス
 列車は何事もなかったように走り出した。幻のように見えた一点のあの光もすぐに山の暗黒の中に消え去り、荒涼とした風景だけが延々と続いた。わたしは眠気を覚え睡魔の中に吸い込まれた。
 しばらく取りとめのない夢の中を彷徨っていたが突然わたしは目を覚ました。列車はまた止まっていた。わたしは車掌を呼ぼうとしてけれど止めた。何か、車内はまっ暗で何も見えなかった、その闇の中でわたしは何かが

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(詩)若葉の地球

地球ははじめから
地球だったのかな?
大人の地球

それとも地球にも
子どもの時代があったのかな?
若葉の地球
地球がまだ若葉だった頃
光輝く五月、眩しい季節の中で

若葉だった地球は
一体どんな夢を
見ていたのだろう?
地球が見ていた夢
もしかして、それは……愛

子どもの夢は
往々にして敗れるもの
叶わずに散ってゆくもの
実現しないもの
夢が夢のままで潰える夢なのさ
現実の大人の世界に打ちのめ

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(小説)八月の少年(十二)

(小説)八月の少年(十二)

(十二)山奥
 ベルが鳴り止み、列車はせみしぐれ駅を後にした。列車は林から森へ、森から山へと奥深く入っていった。いつしかせみしぐれも聴こえなくなり、木々の葉は色づき、色づいたかと思うとあっという間に枯れていった。まるで夏から秋へそして晩秋へと足早に季節が駆け抜けてゆくように。わたしは肌寒さを覚えた。日が沈み列車はまっ暗な山の中を走り続けた。
 ふと列車が止まった。急ブレーキがかかったような止まり方

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(詩)ふとん

春の陽の中に
ふとんが並んで
ほされている

大きなふとんと
それより
少しちいさなふとんが
数枚ならんで

はなうたでも歌いながら
空高く、青くてまぶしい
空高く泳ぐこいのぼりたちを
見上げている

でも
ふとんたちはちっとも
うらやましくなんかない

小さなふとんには
ゆうべ泣きべそかいた
少女の涙が

そして大きなふとんにも
ゆうべ、おとうさんの
胸の中で流した
おかあさんの涙が
しみついて

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(小説)八月の少年(十一)

(小説)八月の少年(十一)

(十一)せみしぐれ駅
「どうかなさいましたか?」
 振り返ると車掌だった。
「こんな所にお立ちになって」
 わたしは不機嫌そうに答えた。
「ああ、雨だよ」
「雨ですか?」
 車掌は不思議そうに尋ねた。
「そう、このじめじめした雨だ。この雨はいつまで降り続くのかね?いい加減わたしは」
 そう叫ぼうとした瞬間、ところが突然眩しい太陽の光が差した。一瞬にして雨は止み空は晴れ渡り窓の外は一面眩しい緑の田園

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(詩)立夏

五月なのに、もう夏が立つ
木漏れ陽、まだ春の陽射し
音楽室から聴こえて来た
ピアノの音
弾いていたのは

弾いていたのは春?
それとも夏?
春の終わりと夏の初めの
涼しいのか暑いのか
かなしいのか、さびしいのか
分からない不思議な季節

真新しい制服の
きみとぼくが出会った立夏
そんなにまだ暑くもないのに
汗びっしょりだったぼくと
寒くなんかない筈なのに
震えていたきみの指

抱き締めたかった

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(詩)不機嫌なきみの横顔

不機嫌なきみの横顔に
雨のしずく

雨の日に会いたい?
それとも
晴れた日がいい、
わたしと会うの?

いつも不機嫌な
きみの横顔は
何を見ている

夏の前の陽射しは
ぼくには少し眩し過ぎて

けれど雨は
雨のしずくは
きみのその
不機嫌な横顔の
きみの頬に
似合い過ぎる気もして

雨の日に会いたい?
それとも
晴れた日がいい?
それとも
晴れの日だけでいい、
わたしと会うの?

きみが
泣かない

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(小説)八月の少年(十)

(小説)八月の少年(十)

(十)雨宿り
 雨が降り続いた。幾日も幾日も降り続き空はどんよりとした灰色の雲で覆われていた。寒くはなくまた蒸し暑くもない。初夏の陽気だった。列車の窓から見える景色も雨に濡れた街並みばかりだった。
 ある日朝から豪雨が続き、わたしは雨の音で目を覚ました。日の光は厚い雲に遮られ午後になってもまっ暗だった。突然駅でもないのになぜか列車が止まった。
 はて、どうしたのだろう?
 と言っても車掌は見当たら

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(詩)四季

春、五月の或る日
わたしはこの地上に
やって来たらしい

その日晴れていたか
雨が降っていたか
それを知る人は
もうだあれもいません

降っても晴れても
わたしという命に
変わりはない
わたしという人生は
よろこびとかなしみに満ちて
無我夢中で生きた

そんなわたしにも
やがてこの地上から
去りゆく時はやって来る

わたしの最後の日
それでもやっぱり
わたしは最後の日にも
詩を書き
歌を唄うだろう

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(小説)八月の少年(九)

(小説)八月の少年(九)

(九)波音
 なぜか急に寒くなった。吐く息が白い。肌寒いといったものではない、凍りつく寒さだ。わたしの体はがたがた震えた。何だ、この寒さは?
 窓に目をやるとちらほら白いものが舞っていた。
 何だろう?灰か何かか?
 いや違う。もしかして、それは?
 雪だった。雪!
 なるほどこれでは寒いはずだ。なにしろわたしは夏の服装をしているのだから寒くて仕方がない。体中の震えは止まらず歯と歯が震えてぶつかり

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(詩)立夏の前に

一本の桜の木に恋をした
桜吹雪の中で恋をした
かなしい結末になると
分かっていて

それでも
一本の桜の木に恋をした
少年のように
きみに恋をした

花を失くした後
きみは
恥ずかしそうに俯いて

「きみはもう
 わたしのこと
 愛してはくれないよね……」

春が終わる時
春の終わりは
立夏の前の風の中で

葉桜の木漏れ陽にまぎれ
一枚の桜の花びらに
恋をした少年のように

泣きたい