『淫始』

イケナイコト、だとは分かっていた。

親友の彼が、保健室で寝ている。

掃除で遅れる彼女に代わり、様子を見に来た。

穏やかに眠る彼。柔らかな髪。色白の肌。

私の好きな人。今、この瞬間だけは私のもの。

もっと欲しい。唇をなぞり、重ね合わせた。

その途端、引き寄せられた。が、突き放した。

「なんだお前か。あいつよりいいな」

そう言って、また寝た。胸の鼓動が止まない。

後悔なんて飛び去って、淫らな私が顔を出す。


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