Ally

-10行の創作世界- すべてはフィクションです。10行しかありません。 作品それぞれの…

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-10行の創作世界- すべてはフィクションです。10行しかありません。 作品それぞれの色彩・時間軸・年齢・ビジュアル等を、 想像して楽しんでいただけたら嬉しいです。

最近の記事

『快遊』

「年末は混んでるねぇ」駅前で老夫婦を乗せた。 長く待っていたのか、顔が紅潮している。 行き先は少し先の銀行。歩くのも辛いらしい。 「この年になるとさ、終わりを待つばかりで 刺激がないんだよ。だから、今年は遊ぶんだ」 お金おろして海外豪遊かな。羨ましい限りだ。 「こんな風に。パァーン!」銃口が頭に当たる。 「あはは、おもちゃだよ。よいお年を!」 銀行へ入る夫婦。「パァーン!」と響く、音。 豪快な遊びが始まる。なんて元気な世の中だ。 #10行 #

    • 『食願』

      今、飼い主が死んだ。月が照らしている。 「孤独な俺が死んでも、適当に葬られるだけだ。 だから、俺を食べてくれ。朝までに…」 最後の力で辿り着い廃工場。よし、始めるか。 ぐちゃ。皮膚を裂くだけでも、時間がかかる。 ダメだ、みんなを呼ぼう。野良犬。散歩道の犬。 敵対する大型犬。総勢30匹以上。ありがとう。 無言で、必死に、脇目も振らず。時間との闘い。 朝日が昇る頃、終わった。骨はみんなへお土産。 血の海、頭蓋骨を枕に眠る。約束、、守ったぞ。 #10行 #

      • 『苦福』

        「あ、母さん。久しぶり!TV観てくれた? 僕すごいでしょ?すごく頑張ったんだよ!」 無邪気に無差別殺人を報告する、45歳の息子。 久しぶりの会話は、拘置所のアクリル版を挟む。 狂った息子。私が育てた子。可愛く残酷な人間。 「ここの売店に大福あったから、差し入れたよ」 「えー、母さんの大福が良かった。ま、いっか」 嘘。食べられるよ。さっき、すり替えたからね。 味わう前に苦しむかな。最期の学びにはいいわ。 責任を持って殺すから、必ず尽きなさい、ね?

        • 『希光』

          誰もいない、夜のコインランドリー。静かだ。 さて、とっとと済ますか。扉を開けて、閉めた。 マジか、、これはどうしよう。ーバタンっ! 店の扉が開く。「男の子、見ませんでしたか?」 「いや、知らないっすね」再度、扉を開けて 洗濯物を投げ入れる。この子が見えないように。 「くそ、どこ行ったんだよ」去って行く男女。 「あれ、パパとママ」痣の多い顔が笑いかける。 「よく逃げてきたな。お前は自分を守ったんだ。 偉いよ。好きなだけ泣

        『快遊』

          『恋交』

          バレンタインデートの待ち合わせ、10分前。 向かいは、窓際で横一列に席が並ぶカフェ。 満席の中、二組のカップルが並んで座っている。 男、女、男、女。それぞれの相手と仲良く話す。 が、この場所からしか分からないことがある。 中央の男女が手を絡ませているのだ!OMG! 顔は互いの恋人を見ているのに、手はそっち!? やるなぁ。こんな日でも、狩人は狩人なのだ。 最高の運命を掴むためには、妥協は不必要。 チョコのように甘い恋はないのかもしれない。 #10行 #ショー

          『恋交』

          『恨策』

          「毎日こんなに行列が出来るなんて、、本当に 有難いです。娘もパンが大好きで…」 地方の人気パン屋の特集番組。和かな親子3人。 「ママー!。あいつ田舎でパン屋やってるよ」 「あらぁ、こんなとこに。やっと見つかった」 「うちらをボロボロに捨てておいて、自分だけ 幸せとか、マジでウザい。どうする?」 「そうねぇ、まずは風評被害でダメージ与えよ」 「おっけ。精神面と経済面をゆっくり攻めるか」 「まぁ、最後は放火して、全部消せばいいわ」 #1

          『恨策』

          『明送』

          派手に着飾る人々。賑やかな音楽で溢れる空間。 こんな感じで、、良かったか?遺影の妻に問う。 なぜ、こうなったのか。彼女はよく語っていた。 「お葬式って大嫌い!黒くて暗くて湿っぽくて。 私の時は、明るく楽しく見送ってよね!」 入口にいる女性が、笑顔でピースをしてきた。 頷きながら、手を振る。「パパ、誰かいたの?」 「ん?綺麗な人がいたから、、なんとなくな」 「何それ!?ママのお葬式にひどすぎる!」 分からなくていい。俺達の最期の会話だからな。 #

          『明送』

          『輝舞』

          決まりだ。この7人が新しい時代を創るだろう。 世界を目指すガールズグループのプロデュース。 緻密な戦略、共感を生む曲、隙のないダンス。 これから想像もつかない練習が待っているが、 君たちなら大丈夫だ。信じている、成し遂げる。 5年後、少女達は世界のトップスターになった。 もう僕など必要ないのに、ライブには呼ばれる。 『袖で観ていてよ』…初心を忘れたくないから。 照れた顔で笑い合う7人。昔から変わらない。 さぁ、始まるぞ。最高なステージを魅せてくれ。 #10

          『輝舞』

          『聴在』

          手話なんて大っ嫌い。ちまちま覚えてられるか。 遅く話して唇の動きを読ませる?なおさら無理。 耳が聴こえないなんて、どうでもいいのよ。 私が好きなのは、彼の書くメール文章。 的確で分かり易く、無駄がない。そして優しい。 おまけに、書く文字までもが綺麗で美しい。 あぁ、もう、だめ。気持ちが抑えられない! その日から、怒涛のラブレター攻撃の日々。 彼の答えは…「負けた。聴こえなくてもお前の 存在はうるさいよ。一生、飽きなそうだな」 #10行 #ショートストーリー

          『聴在』

          『占先』

          当たると評判の人気占い師。それが私の肩書き。 この独特な雰囲気を売り込んだら当たっただけで TVや雑誌の占い依頼は、何人ものスタッフが 多くの統計を元に、相応しい答えを作っている。 これでいいのか?自分で答えも見つけられない。 「そこのお嬢さん。嘘をつくのはいけないよ」 街の占い師が呼び止める。「嘘…分かるの?」 「あぁ。ワシの占いは当たるからな。聞くか?」 無視して去る。朝のTV占いを思い出し笑う。 「自信過剰な男には気をつけろ。騙されるな」 #10行

          『占先』

          『耐光』

          「ほら食えよ。今日はなかなかのごちそうだぞ」 離れた場所からも分かる腐った臭い。無理だ。 頭は拒否しているのに、空腹な体は近づく。 覗き込んで目を疑った。様々な残飯の寄せ集め。 即座に顔を背け胃から吐き出す。涙も流れ出す。 「兄ちゃん、まだまだだな」周りの奴らが笑う。 「悔しいか?これがホームレスの始まりだ。 抜け出したいなら、食べろ。無理にでも食え。 いずれ体は慣れる。そこからは自分で考えろ。 ど

          『耐光』

          『弱従』

          今夜も、女王様が悪魔の微笑みでやって来た。 僕を四つん這いにさせたかと思うと、叩く。 笑いながら上に乗った途端、走れと言う。 髪を掴み、腹を蹴り、やりたい放題な、女王様。 それに飽きたら、今度は抱け。と要求してくる。 仕事でパンパンな腕などお構いなしだ。 少しでも力を抜けば、すぐに叩かれる。パシャ! 「良い写真〜。仲良しなパパと娘って感じ〜。 そのまま、お風呂と寝かしつけもお願いね〜」 出た、ボス女王!俺は一生振り回されるのか…! #

          『弱従』

          『贈愛』

          「ねぇ、そっちへ行っていい…?」 遺影のあなたは微笑むだけ。何も変わらない。 一年前、突然あなたはいなくなってしまった。 30年も一緒にいた私に、病気を隠して。 31年目の結婚記念日の今日、私は一人なのよ。 「お届けものです」小包が届いた。 私の好きな曲のオルゴールと手紙が入っていた。 「もう僕はこの世にいないだろうね。隠してて ごめん。でも、こっちへ来たいなんて思うな。 いつかまた会える。結婚記念日おめでとう」 #10行

          『贈愛』

          『幸遠』

          雲ひとつない青空。煌く日差し。心地よい風。 公園の砂場では、夫と2人の子供が遊んでいる。 幸せだ。私がこんな幸せになれるなんて。 気づいた頃には、殺し屋になっていた。 何も感じず殺す日々。もう、それも10年前の話。 ーザクっ。背中が灼けるように熱い。 背後を取られるなんて。この刺し方はプロだ。 「勘が鈍ったな。悪く思うなよ。これが運命だ」 私の運命。家族を見守りながら眠る運命なのね。 視界がぼやけていく。幸せが遠ざかっていく。 #10行 #ショートストーリ

          『幸遠』

          『密待』

          放課後はこの公園で本を読み、19時まで待つ。 出会った場所であり、別れと再会を誓った場所。 6才の頃、私は女性に、ここで誘拐された。 病気で子供が産めず、夫も離れていき、 どうしようもない自暴自棄の行動。号泣の告白。 側に居てあげたかった。だから、提案した。 成人の18歳になったら、迎えに来て欲しいと。 どうせ、両親は産まれた妹にしか関心がない。 18時50分。今日も来なかった。また明日…。 「待たせて、ごめんなさい」涙の彼女が、来た。 #10行 #ショー

          『密待』

          『撮人』

          風景しか撮らないんですか?よく聞かれる質問。 でも、なぜか、人の存在を感じるんですよね。 視えるとかでなく、、温もりを感じるんです。 僕は、もうこの世にいない彼女を撮っている。 ここに座っていたら、あそこに立っていたら、 今も、忘れられない姿を、映し続けている。 そんな僕の写真を見て、泣いている女性がいた。 綺麗な横顔。気づいたら、彼女を撮っていた。 こちらを向く。「やっと、人を撮れましたね。 …よかった。姉も喜んでいると思います」 #10行 #ショートス

          『撮人』