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アンソロジーズ

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作詞、散文詩、小説、などなど
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#スキしてみて

ビニール袋の千羽三角折り

ビニール袋の千羽三角折り

※この話は、フィクションです

昼飯時、休憩室のテーブルについて
この世で1番どうでもいいことを話しながら
弁当をつつくのが、同僚たちだ

お前の子どもの水泳の順位など
僕の鼻くそよりも価値がない

お前の嫁のカレーライスが
ひとつのルーしか使わないから
恐ろしくマズい、というなら
お前が作ればいいだけの話だ

などなど

本当にどうでもいい話題で
口から米つぶを吐き出して笑っている

なんて汚ら

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わたし

わたし

母は、わたしをよく叱った
父も、わたしをよく叱った

口癖は、お前はおかしい、だった

わたしは、わたしの何がおかしいのか
分からなかったが
叱られるのが嫌だった

わたしは、叱られると察すると
居間にある大きな茶箪笥の
四角い引き戸の棚の中に身を丸めて隠れた

引き戸を中から閉める時
立方体の空間が、闇に切り替わる
6面の四角に囲まれて
丸めた背骨がそのひとつの面に
接しているのが、恐ろしかった

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WATCHER 山 ~携帯電話が使える休憩室編~

WATCHER 山 ~携帯電話が使える休憩室編~

※この話は、フィクションです

隣に座っても、、、いいですか?

自動販売機の前で
車いすに座っている30代の青年に
ウォッチャー山は声をかけた

あ、リハビリの先生
はい、いいですよ

青年は、にがい表情をしながらも
ウォッチャーを受け入れた

ここは

病院の携帯電話が使える休憩スペース
6畳ほどのスペースに
自動販売機があり、その向かいの壁づたいに
背もたれのない円椅子が3脚
無動作に並べて

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WATCHER 山 〜202号室編〜

WATCHER 山 〜202号室編〜

このお話は、フィクションです

山はベテランの理学療法士だが
これといったスキルがあるわけでもなく
誰もがイメージする
医療職の物腰の柔らかい
親切丁寧なセラピストでもなかった

むしろ、その対極で
患者にはハラスメントギリギリの声掛けをし
他職種の連絡から逃げ散らかすため
内線はすべて無視した

だが、みんなは言う
山はとてもリラックスして
楽しそうだったと

そんな山には、裏の顔があった
山の

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そうだ、作詞してみよう

そうだ、作詞してみよう

昔々、知人のバンドのオリジナル曲に
作詞を提供していたのがキッカケで
舞台音楽家からも声がかかり
アルバムを2枚ほか30曲ほど携わり

その後、また別の音楽家から
合唱曲の詞も書いて欲しいと言われ
東海地方の街の合唱団に
3作提供した経験があります

まさか自分の詞にメロディがつくなど
考えたこともなかったのですが
ネット上の
作詞愛好家のグループに所属した途端
作曲家に気に入ってもらえて
トント

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ヤブヘビ神話 〜creator history〜

ヤブヘビ神話 〜creator history〜

この世界に生まれおちた
はじめての人間、オダマ♂とイポ♀

彼らは純粋無垢で
言葉もなく、知性もない
ただただ存在するだけで
愛に満ち満ちて暮らしていたのです

創造主セフレは彼らの魂に
禁断の果実は食べてはいけない
と、油性ペンでしかりと刻みつけたため
とても長い間
ふたりは愛に満ち満ちて
暮らしていたのでした

ある日、ふたりの前に
不躾なヤブヘビが表れて
おまえらはバカすぎるから
あそこにあ

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コインの表と裏

コインの表と裏

私は、祐介と一緒にどこかに行ったり
誕生日を祝ったりするのが
幸せだと思っているから
それができないって言うなら
この家を出て行くね

奈保は、思いがでしゃばりすぎないよう
必死で気持ちを抑えながら
夫、裕介に思いを伝えた

すると祐介は
奈保の家出をすんなり受け入れてしまった

その飄々とした態度を見て
奈保は確信した

裕介は、浮気をしている

昨日、というか今日
日付が変わるまで
奈保は裕介

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価値のあるひと

価値のあるひと

義父が、脳梗塞で入院したのが10月
幸いなことに手足の麻痺が軽度ですんだため
病棟内はひとりで歩けるようになった

だが、何となく歩けているだけなのだ
面会に行った時
夜間はセンサーマットをつけています
本当は見守りだとリハからは言われているんです
と、聞かされていた

ようは、(義父は)待ったが利かないので
転ばないように
我々は精一杯、対策してます

と、いうことだ

この何となく歩けてしまう

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季語 feel like winter

季語 feel like winter

春は、生まれたての陽ざしに目を細め
影が色濃くなる夏には
情熱にその身をまかせ
体の細部に至るまでエネルギーを発散し
秋は郷愁を胸に星空を眺める
そして、極寒の冬が来て
焚き木に両手を預けながら
深き眠りにつくのです

再び訪れるであろう芽吹きの躍動を
胸の奥底にくすぶらせながら

我々大和の民は
四季という壮大な舞台で
多様なる感性に磨きをかけてきました

今回は、その繊細さのボリュームを
最大

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