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モヤモヤを買っておうちに帰った

ルンルンを買っておうちに帰りたかったのに

ある金曜日の話。その日は昼から終電の時間まで、ずっと銀座にいた。昼は友人Aとランチし、夕方は友人Bとお茶。夜はマッチングアプリで初めての人と会い、つるとんたんに行った。「イッツソーフライデーフライデーギンザタウン」って感じの日だった。泰葉さんみたいな、あんな高音は出ないけどね。

私は、大のつるとんたん好き。本当に、つるとんたんに狂ってる。学生時代は週に4回、多い時は昼夜の2回も足繁く通っていた。自分に謎のルールを課していたことがあって、最速で3玉を6分で完食した。その時の店員さんの驚く顔は、今でも忘れられない。もちろん、今回も3玉完食。

そんな感じで、満腹からくる幸福感って何物にも替え難い。トークも弾み、お互いに好印象を抱いていることが分かると、更に幸福感が増す。次回もまた会う約束をし、私は心から溢れ出るルンルンを隠し切れなかった。本当に私って分かりやすい女だなと思う。

その後に起こったこと。帰りの道中も彼とのLINEを楽しみ、私はルンルンに采配されていた。今度こそ、上手くいきそうな気がして仕方なかった。っていうか、今日のあれで上手くいかないってことはないでしょっていうくらいに話が盛り上がったのだ。でも、とあるメッセージに彼の意に沿わない返信をしてしまった。そうすると、「もうLINEしないからいいよ。さよなら。」というメッセージがきた。ルンルンが霧散し、一気にモヤモヤという霧に采配された。

ルンルンを買っておうちに帰りたかったのに、モヤモヤを買っておうちに帰ってしまったのだ。こんなはずじゃなかったのに。ルンルンとモヤモヤの塩梅のもどかしさに、更にモヤモヤさせられる。一瞬の出来事すぎて、本当に「Fly-Day」な日だった。

そして、「今日の3玉はなんだったんだろう?」とついさっきの幻を思い返した。満腹の代償がこれだったとは。幸福感というルンルンはどこかに行って、ただカロリーという不純なモヤモヤが加算されただけだった。御馳走はして貰ったものの、気分は優れない程にモヤモヤしていた。モヤモヤ入りのカロリーって凄いタチが悪いんだから。

たぶん、これって割とマッチングアプリあるあるだと思う。「あの楽しかった時間はなんだったんだろう?」って。会って1週間後くらいにモヤモヤな出来事が起きるならまだしも、数時間後は心の整理がつかない。一軍のカラコンとコスメで、いつもより丁寧にメイクしたのに何でってなる。それを一瞬にして、パナソニックのスチームでクレンジングしている時が1番虚しい。このモヤモヤも、すぐさまクレンジングしてくれたらいいのになと心から思った。

このモヤモヤってあれに似てるような気がする。ショッピング中に気になった服を広げて畳んだあとに、すぐに畳み直す店員。「レシート大丈夫です。」と言ったあとに、すぐにくちゃくちゃに丸めてゴミ箱に捨てる店員。「え?まだ目の前にいるよね?」ってモヤモヤの霧が止まらなくなる。もう会うことのない人たちを目の前にし、1人歩きしたモヤモヤに感情の行き場所を塞がれている気がしてならない。本当に、1人で怒ってるのが馬鹿みたいだな。

憐れだけど、やっぱりモヤモヤを持ち帰るしかないのだ。だから、今度はモヤモヤの代償で、何かとびっきり素敵な物を得られたらいいなと思う。そうだ。港の見える場所で、何か飲めたらいいな。

尊敬してやまない、林真理子大先生の名著になぞらえて…