そら@

自作の詩を挙げています、すこしでも誰かの目にとまって貰えたら嬉しい。

そら@

自作の詩を挙げています、すこしでも誰かの目にとまって貰えたら嬉しい。

記事一覧

秒針

 針は今も動いている。 満たされないと嘆く心はいけないものなんだと、幼い頃から漠然と思っていた。 彼はいつも優しく笑う、自分の言葉に意味はないと分かっているよう…

そら@
2か月前
2

三等星

 思い出が僕らを繋ぐ糸だった。 遠くで声がする、楽しそうな、嬉しそうな、少し疲れた様子の、いつもの声。 「おはよう」 「行ってきます」 「ただいま」 「おやすみ」 …

そら@
10か月前
4

真似事

 ひとりぼっちの空に、優しい風が凪いだ。 愛の在処を探せなかった夜に、寂しげに歌う鈴虫の声を静かに聞いていた。 「何をしようとしたんだっけな。」 ベランダに凭れな…

そら@
1年前
4

例えば、そこに眠る花があるとして。

 かつて、道端でひっそりと眠る小さな花を見た。 それは誰にも気づかれないように、穏やかに薄く揺れて咲いている。 取り留めもない記憶の小さな欠片が、胸に刺さり抜け…

そら@
1年前
3

terminal

人生の終わりを考えた。 永遠、そんな言葉すら思わせるほど長い時間、粗く舗装なんてされてない道を行く。 節目毎に駅があって、そこに行きつくと色々な人や物、出来事に…

そら@
1年前
6

夜盲

人の数だけ夜がある。 ある人にとって賑やかで楽しい夜もあれば、違うある人にとっては寂しさを耐えるだけの夜もある。 なら、今の僕の夜はなんだろう。 静けさが灯る室内…

そら@
1年前
3

巡る月

心ってやつは流動的だ。 或いはその指先に、或いはその瞳に、或いは、全身に。 血液と一緒にとめどなく流れて、どうしようもなく溢れて止まらなくなった後、より具体的で…

そら@
1年前
3

春化粧

枯れてゆく花が惜しくて、ずっと眺めていた。 雪解けを告げる風は暖かくて、出会いの季節が来ることを報せてくれていた。 「また会いたいね、そうだなぁ…夏あたりに」 …

そら@
1年前
4

窓際

「寂しさの根源を、ずっと知りたかったんだ。」 雨音が室内を満たしている、2人は何も言わずに部屋の中にいた。 結局、僕達は1人だった、いくら2人で身を寄せようとも、互…

そら@
1年前
3

そこに至る夢

世界が終わる日の夕暮れは、きっとこんな景色だろう。 燃えるようなオレンジがビルを照らしていた、綺麗な空だった。 終わりが見えない長い道を、僕達はひたすらに歩き続…

そら@
2年前

泣けるほど綺麗な夕日だった。 遠くの空の大きな雲は朱色に染まって、もうすぐ今日が終わる事を知らせていた。 別れの際に涙を見せない人間を強い人と見るか、薄情な奴と…

そら@
2年前
2

在処

僕は、いつからここに居るんだろう。 今までどうやって息をして、どんな顔で笑っていたのか。 探しても探しても見つからない、僕は今、どこにいるんだろう。 これは、僕を…

そら@
2年前
3

秒針

 針は今も動いている。

満たされないと嘆く心はいけないものなんだと、幼い頃から漠然と思っていた。

彼はいつも優しく笑う、自分の言葉に意味はないと分かっているような、落ち込んでいるような、悲しげな瞳を湛えて。

寂しさを自覚したのはいつからだろう、きっと彼と出会って二度目の春を越えたあたりだったと思う。

一人でいるならまだしも、それは自分以外の誰か、特に恋人であるはずの彼と共に居る時に強く現れ

もっとみる

三等星

 思い出が僕らを繋ぐ糸だった。

遠くで声がする、楽しそうな、嬉しそうな、少し疲れた様子の、いつもの声。

「おはよう」
「行ってきます」
「ただいま」
「おやすみ」

当たり前が熱を帯びて彩りを飾り始める頃、僕たちの人生はまた一つ回り始めた。

僕らはそれぞれ胸の中心に、大きな歯車を携えていた。
一つでは意味を成せない歯車が僕たちだった。どうにかその歯車を持つ意味が欲しくて、迷って、傷ついて、間

もっとみる

真似事

 ひとりぼっちの空に、優しい風が凪いだ。
愛の在処を探せなかった夜に、寂しげに歌う鈴虫の声を静かに聞いていた。

「何をしようとしたんだっけな。」
ベランダに凭れながら呟く、空っぽの心を埋めるように声はいつまでも聞こえていた。

 想いは呪いだ。 

あなたに触れてはいけなかった、それを伝えてはいけなかった、あなたを幸せにする自信を持ってはいけなかった。

心情を誤魔化すように戯ける日々に満足しな

もっとみる

例えば、そこに眠る花があるとして。

 かつて、道端でひっそりと眠る小さな花を見た。

それは誰にも気づかれないように、穏やかに薄く揺れて咲いている。

取り留めもない記憶の小さな欠片が、胸に刺さり抜けない棘のようになって、かつて見た景色が、いつまでも忘れられずにいた。

花は、眠るように静かに咲いていた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

僕の街は、お世辞にも栄えているとは言えなくて、時代にとり残されたような淋しさを滲ませる街だっ

もっとみる

terminal

人生の終わりを考えた。

永遠、そんな言葉すら思わせるほど長い時間、粗く舗装なんてされてない道を行く。

節目毎に駅があって、そこに行きつくと色々な人や物、出来事に出逢う。
そして、数多ある駅を過ぎた先、人生の終着点、そこにあるものは、そこで最後に出逢う人は。

 僕の祖父は8年ほど前老人ホームで生活をしていた、祖母はすでになく、10年ほど一人で生活をしていたが、自宅で怪我をしたことをきっかけに入

もっとみる

夜盲

人の数だけ夜がある。
ある人にとって賑やかで楽しい夜もあれば、違うある人にとっては寂しさを耐えるだけの夜もある。
なら、今の僕の夜はなんだろう。
静けさが灯る室内、君の顔は見えない。

「これだから、夜は嫌いなんだ」
溜息のように呟いた言葉を聞いていたのか、穏やかな気配がこちらを向いていた。

「どうしたの?」

静かに揺れる声が聞こえて、優しさと不安が胸に満ちた。

夜は君を隠してしまう。

もっとみる

巡る月

心ってやつは流動的だ。

或いはその指先に、或いはその瞳に、或いは、全身に。

血液と一緒にとめどなく流れて、どうしようもなく溢れて止まらなくなった後、より具体的で鮮明な「感情」という言葉に姿を変え表出されていく。

心臓に還るそれが、流れ続ける限り。

__________________________

彼女は滅多に感情を表に出さない。
厳格な家庭に育ち、感情的になることは恥だと両親から教わ

もっとみる

春化粧

枯れてゆく花が惜しくて、ずっと眺めていた。

雪解けを告げる風は暖かくて、出会いの季節が来ることを報せてくれていた。

「また会いたいね、そうだなぁ…夏あたりに」

楽しそうな声が隣から聞こえた、冬を越え身なりが少し軽くなった彼女は、花に似た明るさで笑う。

「夏…か…」

少し前は来ることを拒んだあの季節は、ある日を境に待ちわびるようになって、今はまた、少し憂鬱な気分になる。

「花火とかお祭り

もっとみる

窓際

「寂しさの根源を、ずっと知りたかったんだ。」

雨音が室内を満たしている、2人は何も言わずに部屋の中にいた。

結局、僕達は1人だった、いくら2人で身を寄せようとも、互いの腹の中を明かして、弱さを見せあって、この人しか居ないと真に思いあっていたとしても、傍らには常に孤独がいて、不意に寂しさを思い出させる。

笑いあう日々が多いほど、孤独や寂しさの反動は大きい、それを分かっているのに少しでも忘れよう

もっとみる

そこに至る夢

世界が終わる日の夕暮れは、きっとこんな景色だろう。

燃えるようなオレンジがビルを照らしていた、綺麗な空だった。

終わりが見えない長い道を、僕達はひたすらに歩き続けていた、始まりだった場所はもう思い出せないほど小さくて、こんな遠くまで来たものかと感心してしまうほど。

「あの日々は……楽しかったね……振り返ればみんながいて、笑い声がそこら中に響いて、どこにいるのも、何をしようとも自由な、暖かい場

もっとみる

泣けるほど綺麗な夕日だった。

遠くの空の大きな雲は朱色に染まって、もうすぐ今日が終わる事を知らせていた。

別れの際に涙を見せない人間を強い人と見るか、薄情な奴と見るか、周りはどうあれ、僕には前者に見えた。

姉は昔から強い人だった、涙を流す姿は見たことがなくて、迷いのないような真っ直ぐな瞳が印象的な人だった。
「叔父さん、すごい顔で泣いてたね…」
式からの帰り道、口を開けたのは姉からだった。

もっとみる

在処

僕は、いつからここに居るんだろう。
今までどうやって息をして、どんな顔で笑っていたのか。
探しても探しても見つからない、僕は今、どこにいるんだろう。

これは、僕を探す物語。
  
ーーーーーーーー

最初に思い出したのは、7年前の春の日。

桜が満開の道路を抜け、人混みから逃げるように歩く、
途中で何人かに声をかけられた気がするけど覚えてない、同級生の事に以前から興味がなくて、名前もろくに覚えよ

もっとみる