針は今も動いている。 満たされないと嘆く心はいけないものなんだと、幼い頃から漠然と思っていた。 彼はいつも優しく笑う、自分の言葉に意味はないと分かっているよう…
思い出が僕らを繋ぐ糸だった。 遠くで声がする、楽しそうな、嬉しそうな、少し疲れた様子の、いつもの声。 「おはよう」 「行ってきます」 「ただいま」 「おやすみ」 …
ひとりぼっちの空に、優しい風が凪いだ。 愛の在処を探せなかった夜に、寂しげに歌う鈴虫の声を静かに聞いていた。 「何をしようとしたんだっけな。」 ベランダに凭れな…
かつて、道端でひっそりと眠る小さな花を見た。 それは誰にも気づかれないように、穏やかに薄く揺れて咲いている。 取り留めもない記憶の小さな欠片が、胸に刺さり抜け…
人生の終わりを考えた。 永遠、そんな言葉すら思わせるほど長い時間、粗く舗装なんてされてない道を行く。 節目毎に駅があって、そこに行きつくと色々な人や物、出来事に…
人の数だけ夜がある。 ある人にとって賑やかで楽しい夜もあれば、違うある人にとっては寂しさを耐えるだけの夜もある。 なら、今の僕の夜はなんだろう。 静けさが灯る室内…
心ってやつは流動的だ。 或いはその指先に、或いはその瞳に、或いは、全身に。 血液と一緒にとめどなく流れて、どうしようもなく溢れて止まらなくなった後、より具体的で…
枯れてゆく花が惜しくて、ずっと眺めていた。 雪解けを告げる風は暖かくて、出会いの季節が来ることを報せてくれていた。 「また会いたいね、そうだなぁ…夏あたりに」 …
「寂しさの根源を、ずっと知りたかったんだ。」 雨音が室内を満たしている、2人は何も言わずに部屋の中にいた。 結局、僕達は1人だった、いくら2人で身を寄せようとも、互…
世界が終わる日の夕暮れは、きっとこんな景色だろう。 燃えるようなオレンジがビルを照らしていた、綺麗な空だった。 終わりが見えない長い道を、僕達はひたすらに歩き続…
泣けるほど綺麗な夕日だった。 遠くの空の大きな雲は朱色に染まって、もうすぐ今日が終わる事を知らせていた。 別れの際に涙を見せない人間を強い人と見るか、薄情な奴と…
僕は、いつからここに居るんだろう。 今までどうやって息をして、どんな顔で笑っていたのか。 探しても探しても見つからない、僕は今、どこにいるんだろう。 これは、僕を…
そら@
2024年8月5日 21:28
針は今も動いている。満たされないと嘆く心はいけないものなんだと、幼い頃から漠然と思っていた。彼はいつも優しく笑う、自分の言葉に意味はないと分かっているような、落ち込んでいるような、悲しげな瞳を湛えて。寂しさを自覚したのはいつからだろう、きっと彼と出会って二度目の春を越えたあたりだったと思う。一人でいるならまだしも、それは自分以外の誰か、特に恋人であるはずの彼と共に居る時に強く現れ
2023年12月23日 01:19
思い出が僕らを繋ぐ糸だった。遠くで声がする、楽しそうな、嬉しそうな、少し疲れた様子の、いつもの声。「おはよう」「行ってきます」「ただいま」「おやすみ」当たり前が熱を帯びて彩りを飾り始める頃、僕たちの人生はまた一つ回り始めた。僕らはそれぞれ胸の中心に、大きな歯車を携えていた。一つでは意味を成せない歯車が僕たちだった。どうにかその歯車を持つ意味が欲しくて、迷って、傷ついて、間
2023年9月10日 01:30
ひとりぼっちの空に、優しい風が凪いだ。愛の在処を探せなかった夜に、寂しげに歌う鈴虫の声を静かに聞いていた。「何をしようとしたんだっけな。」ベランダに凭れながら呟く、空っぽの心を埋めるように声はいつまでも聞こえていた。 想いは呪いだ。 あなたに触れてはいけなかった、それを伝えてはいけなかった、あなたを幸せにする自信を持ってはいけなかった。心情を誤魔化すように戯ける日々に満足しな
2023年8月16日 21:57
かつて、道端でひっそりと眠る小さな花を見た。それは誰にも気づかれないように、穏やかに薄く揺れて咲いている。取り留めもない記憶の小さな欠片が、胸に刺さり抜けない棘のようになって、かつて見た景色が、いつまでも忘れられずにいた。花は、眠るように静かに咲いていた。ーーーーーーーーーーーーーーー僕の街は、お世辞にも栄えているとは言えなくて、時代にとり残されたような淋しさを滲ませる街だっ
2023年8月1日 23:48
人生の終わりを考えた。永遠、そんな言葉すら思わせるほど長い時間、粗く舗装なんてされてない道を行く。節目毎に駅があって、そこに行きつくと色々な人や物、出来事に出逢う。そして、数多ある駅を過ぎた先、人生の終着点、そこにあるものは、そこで最後に出逢う人は。 僕の祖父は8年ほど前老人ホームで生活をしていた、祖母はすでになく、10年ほど一人で生活をしていたが、自宅で怪我をしたことをきっかけに入
2023年7月7日 23:33
人の数だけ夜がある。ある人にとって賑やかで楽しい夜もあれば、違うある人にとっては寂しさを耐えるだけの夜もある。なら、今の僕の夜はなんだろう。静けさが灯る室内、君の顔は見えない。「これだから、夜は嫌いなんだ」溜息のように呟いた言葉を聞いていたのか、穏やかな気配がこちらを向いていた。「どうしたの?」静かに揺れる声が聞こえて、優しさと不安が胸に満ちた。夜は君を隠してしまう。凛
2023年5月10日 23:56
心ってやつは流動的だ。或いはその指先に、或いはその瞳に、或いは、全身に。血液と一緒にとめどなく流れて、どうしようもなく溢れて止まらなくなった後、より具体的で鮮明な「感情」という言葉に姿を変え表出されていく。心臓に還るそれが、流れ続ける限り。__________________________彼女は滅多に感情を表に出さない。厳格な家庭に育ち、感情的になることは恥だと両親から教わ
2023年4月24日 23:08
枯れてゆく花が惜しくて、ずっと眺めていた。雪解けを告げる風は暖かくて、出会いの季節が来ることを報せてくれていた。「また会いたいね、そうだなぁ…夏あたりに」楽しそうな声が隣から聞こえた、冬を越え身なりが少し軽くなった彼女は、花に似た明るさで笑う。「夏…か…」少し前は来ることを拒んだあの季節は、ある日を境に待ちわびるようになって、今はまた、少し憂鬱な気分になる。「花火とかお祭り
2022年12月18日 22:56
「寂しさの根源を、ずっと知りたかったんだ。」雨音が室内を満たしている、2人は何も言わずに部屋の中にいた。結局、僕達は1人だった、いくら2人で身を寄せようとも、互いの腹の中を明かして、弱さを見せあって、この人しか居ないと真に思いあっていたとしても、傍らには常に孤独がいて、不意に寂しさを思い出させる。笑いあう日々が多いほど、孤独や寂しさの反動は大きい、それを分かっているのに少しでも忘れよう
2022年9月28日 23:08
世界が終わる日の夕暮れは、きっとこんな景色だろう。燃えるようなオレンジがビルを照らしていた、綺麗な空だった。終わりが見えない長い道を、僕達はひたすらに歩き続けていた、始まりだった場所はもう思い出せないほど小さくて、こんな遠くまで来たものかと感心してしまうほど。「あの日々は……楽しかったね……振り返ればみんながいて、笑い声がそこら中に響いて、どこにいるのも、何をしようとも自由な、暖かい場
2022年8月26日 20:07
泣けるほど綺麗な夕日だった。遠くの空の大きな雲は朱色に染まって、もうすぐ今日が終わる事を知らせていた。別れの際に涙を見せない人間を強い人と見るか、薄情な奴と見るか、周りはどうあれ、僕には前者に見えた。姉は昔から強い人だった、涙を流す姿は見たことがなくて、迷いのないような真っ直ぐな瞳が印象的な人だった。「叔父さん、すごい顔で泣いてたね…」式からの帰り道、口を開けたのは姉からだった。
2022年8月11日 05:16
僕は、いつからここに居るんだろう。今までどうやって息をして、どんな顔で笑っていたのか。探しても探しても見つからない、僕は今、どこにいるんだろう。これは、僕を探す物語。 ーーーーーーーー最初に思い出したのは、7年前の春の日。桜が満開の道路を抜け、人混みから逃げるように歩く、途中で何人かに声をかけられた気がするけど覚えてない、同級生の事に以前から興味がなくて、名前もろくに覚えよ