そら@

自作の詩を挙げています、すこしでも誰かの目にとまって貰えたら嬉しい。

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自作の詩を挙げています、すこしでも誰かの目にとまって貰えたら嬉しい。

最近の記事

三等星

 思い出が僕らを繋ぐ糸だった。 遠くで声がする、楽しそうな、嬉しそうな、少し疲れた様子の、いつもの声。 「おはよう」 「行ってきます」 「ただいま」 「おやすみ」 当たり前が熱を帯びて彩りを飾り始める頃、僕たちの人生はまた一つ回り始めた。 僕らはそれぞれ胸の中心に、大きな歯車を携えていた。 一つでは意味を成せない歯車が僕たちだった。どうにかその歯車を持つ意味が欲しくて、迷って、傷ついて、間違えて。  そうやって歪みの出来た歯車たちを重ねて、回してみても、軋んで碌に回

    • 真似事

      ひとりぼっちの空に、優しい風が凪いだ。 愛の在処を探せなかった夜に、寂しげに歌う鈴虫の声を静かに聞いていた。 「何をしようとしたんだっけな。」 ベランダに凭れながら呟く、空っぽの心を埋めるように声はいつまでも聞こえていた。 想いは呪いだ。 あなたに触れてはいけなかった、それを伝えてはいけなかった、あなたを幸せにする自信を持ってはいけなかった。 心情を誤魔化すように戯ける日々に満足しなければいけなかった。 きづいてはいけない。 「中途半端な人間。」 自分

      • 例えば、そこに眠る花があるとして。

         かつて、道端でひっそりと眠る小さな花を見た。 それは誰にも気づかれないように、穏やかに薄く揺れて咲いている。 取り留めもない記憶の小さな欠片が、胸に刺さり抜けない棘のようになって、かつて見た景色が、いつまでも忘れられずにいた。 花は、眠るように静かに咲いていた。 ーーーーーーーーーーーーーーー 僕の街は、お世辞にも栄えているとは言えなくて、時代にとり残されたような淋しさを滲ませる街だった。 都市部の再開発の煽りを受け、若者や観光地はみなこの地を離れていった。

        • terminal

          人生の終わりを考えた。 永遠、そんな言葉すら思わせるほど長い時間、粗く舗装なんてされてない道を行く。 節目毎に駅があって、そこに行きつくと色々な人や物、出来事に出逢う。 そして、数多ある駅を過ぎた先、人生の終着点、そこにあるものは、そこで最後に出逢う人は。  僕の祖父は8年ほど前老人ホームで生活をしていた、祖母はすでになく、10年ほど一人で生活をしていたが、自宅で怪我をしたことをきっかけに入所に至ったという。 当時、僕と姉はまだ小さくて祖父との思い出は少なかった、会え

          夜盲

          人の数だけ夜がある。 ある人にとって賑やかで楽しい夜もあれば、違うある人にとっては寂しさを耐えるだけの夜もある。 なら、今の僕の夜はなんだろう。 静けさが灯る室内、君の顔は見えない。 「これだから、夜は嫌いなんだ」 溜息のように呟いた言葉を聞いていたのか、穏やかな気配がこちらを向いていた。 「どうしたの?」 静かに揺れる声が聞こえて、優しさと不安が胸に満ちた。 夜は君を隠してしまう。 凛と咲く君の笑顔も、温もりをくれる掌も、 安心をくれるものが見えない。 「大丈夫

          巡る月

          心ってやつは流動的だ。 或いはその指先に、或いはその瞳に、或いは、全身に。 血液と一緒にとめどなく流れて、どうしようもなく溢れて止まらなくなった後、より具体的で鮮明な「感情」という言葉に姿を変え表出されていく。 心臓に還るそれが、流れ続ける限り。 __________________________ 彼女は滅多に感情を表に出さない。 厳格な家庭に育ち、感情的になることは恥だと両親から教わってきたという。 本人もあまり活発な性格とは言えず、日がな一日本を読む日々を送

          巡る月

          春化粧

          枯れてゆく花が惜しくて、ずっと眺めていた。 雪解けを告げる風は暖かくて、出会いの季節が来ることを報せてくれていた。 「また会いたいね、そうだなぁ…夏あたりに」 楽しそうな声が隣から聞こえた、冬を越え身なりが少し軽くなった彼女は、花に似た明るさで笑う。 「夏…か…」 少し前は来ることを拒んだあの季節は、ある日を境に待ちわびるようになって、今はまた、少し憂鬱な気分になる。 「花火とかお祭りとかプールとか、色々行きたいね」 「まだ春が来たばっかりだよ」 僕がそう言う

          春化粧

          窓際

          「寂しさの根源を、ずっと知りたかったんだ。」 雨音が室内を満たしている、2人は何も言わずに部屋の中にいた。 結局、僕達は1人だった、いくら2人で身を寄せようとも、互いの腹の中を明かして、弱さを見せあって、この人しか居ないと真に思いあっていたとしても、傍らには常に孤独がいて、不意に寂しさを思い出させる。 笑いあう日々が多いほど、孤独や寂しさの反動は大きい、それを分かっているのに少しでも忘れようとしてしまうそれを弱さと呼ぶのだろうか、答えは雨に紛れて見えない。 「少しだけ

          そこに至る夢

          世界が終わる日の夕暮れは、きっとこんな景色だろう。 燃えるようなオレンジがビルを照らしていた、綺麗な空だった。 終わりが見えない長い道を、僕達はひたすらに歩き続けていた、始まりだった場所はもう思い出せないほど小さくて、こんな遠くまで来たものかと感心してしまうほど。 「あの日々は……楽しかったね……振り返ればみんながいて、笑い声がそこら中に響いて、どこにいるのも、何をしようとも自由な、暖かい場所だった。」 その日々はとても大切だった、思い出に価値をつけることが許されるな

          そこに至る夢

          泣けるほど綺麗な夕日だった。 遠くの空の大きな雲は朱色に染まって、もうすぐ今日が終わる事を知らせていた。 別れの際に涙を見せない人間を強い人と見るか、薄情な奴と見るか、周りはどうあれ、僕には前者に見えた。 姉は昔から強い人だった、涙を流す姿は見たことがなくて、迷いのないような真っ直ぐな瞳が印象的な人だった。 「叔父さん、すごい顔で泣いてたね…」 式からの帰り道、口を開けたのは姉からだった。 「彼の事、だいぶ気に入ってたみたいだったからね、誰よりも二人の事応援してたし」

          静かなる号哭 ⑦

          第7話「偶像」 壁際の日が当たらない席のその奥に、彼女は1人で本を読んでいた、彼女にとってそこは救いの場であり、もはや戦場と呼んで差し支えないその場所において唯一の安置だった。 そんな安置に1人佇む姿を、彼は1度だけ目にしたことがあった。 「僕は【孤独】が嫌いだ。」 誰かに言うでもなく吐き捨てたその言葉を、【理解】が受け止め言葉を返した。 「辛辣な物言いだな、誤解を産むぞ」 彼にとっては誤解か否かは問題では無かったが、念の為付け足した。 「【孤独】なんてのは誰の内にも居

          静かなる号哭 ⑦

          静かなる号哭 ⑥

          第6話 「鈍痛」 …天気が悪い。 頭が酷く重たい、毎日が希望に溢れているわけでもないが、こんなに憂鬱な朝も久しぶりだ。 連日の嫌味のような快晴から一転して、今日の朝は酷く陰鬱だ、布団が暖かい。 「おはよう、、、なんだ、ひどい顔つきじゃないか。」 人の気を知ってか知らずか、【興味】が訝しげにこちらを見てきた。 「うるさいな…あっちに行ってろ」 「これはこれは、手痛いお出迎えで」 「なにしに来たんだ、、」 起きぬけにこいつと話したくはなかった、疲れる。 全てを無視し

          静かなる号哭 ⑥

          静かなる号哭 ⑤

          第5話「正直者」 彼の周りには人が集まる それは彼の人徳故か、はたまた彼には特別な物があるのは、彼女は考えようとしたが、億劫だったので静かに考察を止めた 窓から彼の様子を何の気なしに見ていた、ちょうど途中になっていた本が読み終わり、暇をしていたから。 「彼は楽しそうだね」 すると、後ろから声がした、【理解】がその様子を眺めていた。 「彼が気になるのかい?」 笑みを含んだ声がしたが、反応する意味がないと思い、その声を無視する。 【理解】は返答を待つ訳でもなく、涼し気な顔で

          静かなる号哭 ⑤

          静かなる号哭 ④

          第4話 【孤独】と【自由】 「やぁ、久しぶりじゃないか。」 「…何しにきた、失せろ」 「久しぶりに会う友人に対して手痛い出迎えだな、労いのひとつでも掛けてくれよ」 「ぬかせ、何が友人だ、お前と友人になった覚えはない」 「相変わらず固いね君は、つまらないな」 「お前が柔いだけだ」 「柔軟と言ってくれよ、つれないな」 「その飄々とした態度が癪に触るのだ、とっとと出て行け」 「僕は憂いているのさ、君のような人をね」 「君も僕の(心)に来なよ、きっと楽しいと思うんだ」 「必要ない、

          静かなる号哭 ④

          静かなる号哭 ③

          第3話 「彼に成るモノ」 彼は不思議な男だった。 彼の周りにはいつも人が集まり、みな楽しそうな顔色を浮べている。 彼に集まる人は皆彼が好きだった、性格に惹かれるもの、顔に魅せられるもの、気づけば仲が良くなっていたもの。 けれど、そんな彼に集まる者達は、なぜ彼の周りに集まるのか分からなかった。 「僕はみんなを笑顔する、けどそこに、僕がいるかは関係ない。 」 彼は不思議な男だった しかし、不思議な力を持つ男ではなかった。 彼は【孤独】を嫌った。 「一人で居ることは強さじゃ

          静かなる号哭 ③

          静かなる号哭 ②

          第2話『彼』 彼の周りにはいつも人が居た 彼の言葉はいつも正しかった、彼はいつも明るく、周りの人を元気にする力があった。 彼の周りにはいつも人がいた、それはとても必然的で、さも当然のように。 彼はとても好かれる性格だった、誰に対しても笑顔で優しく、絵に書いたような好青年だった、彼を嫌う人は居ない、彼も嫌いな人は居ない。 しかし、ただ1人だけ、例外な人物が居た。 彼女は【孤独】と共に生きる人だった。 とても冷たく、暗く深い眼をしていた、彼女は無口だ、しかし、眼はいつも何か

          静かなる号哭 ②