静かなる号哭 ⑥

第6話     「鈍痛」

…天気が悪い。
 頭が酷く重たい、毎日が希望に溢れているわけでもないが、こんなに憂鬱な朝も久しぶりだ。
連日の嫌味のような快晴から一転して、今日の朝は酷く陰鬱だ、布団が暖かい。

「おはよう、、、なんだ、ひどい顔つきじゃないか。」
人の気を知ってか知らずか、【興味】が訝しげにこちらを見てきた。
「うるさいな…あっちに行ってろ」
「これはこれは、手痛いお出迎えで」
「なにしに来たんだ、、」
起きぬけにこいつと話したくはなかった、疲れる。
全てを無視してもう一度夢の中に逃げようとしたが、やはり【興味】がそれを阻んできた。
「待て待て、どうしてもう1回寝ようとしてる?」
「うるさいな、眠いんだ寝かせろ」
「それはいけない、君は今から学校だ」
「………」
「無視は良くない」
脳がまだ寝足りないと全力で叫ぶが、構わず叩き起す、こいつの言いなりになるのは釈然としないが、今の自分の状況を加味するとこのまま寝続けるのは賢いとは言えない。

「おや、今日は素直に行くんだな」
得意げな顔をしている奴をなるべく視界に入れぬよう、最低限の身支度と荷物だけを持ち外へ出る
「お前に言われたから行くんじゃない」
「分かってる、自分の意思で行くんだろ?」
「…今日はすぐ帰る」
「それも分かってる」
今すぐにでも引き返してしまいそうな足を何とか前に進める。
「…あ」
「おや?」
雨が降ってきた、傘がない
「しまった…」
「急ごう、走れば校舎はすぐそこだ」
今日はあの場所には行けないな、、雨が降っていれば仕方ない。
「今日はあの場所には行けそうにないな」
薄笑いを浮かべながら、【興味】は囁いた。
「もういいだろ、さっさと消えてくれ」
「そうだな、面白い顔も見れたし、今日はもういいか」
「しばらく出てくるな」
「もうしばらくしたら来ていいんだな、助かるよ」

最後まで向こうのペースだ。
迎える空は曇天で、とても爽やかとは言えないが、今日も一日が始まってしまう。

頭は酷く鈍いまま

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