静かなる号哭 ②

第2話『彼』

彼の周りにはいつも人が居た

彼の言葉はいつも正しかった、彼はいつも明るく、周りの人を元気にする力があった。
彼の周りにはいつも人がいた、それはとても必然的で、さも当然のように。
彼はとても好かれる性格だった、誰に対しても笑顔で優しく、絵に書いたような好青年だった、彼を嫌う人は居ない、彼も嫌いな人は居ない。
しかし、ただ1人だけ、例外な人物が居た。

彼女は【孤独】と共に生きる人だった。
とても冷たく、暗く深い眼をしていた、彼女は無口だ、しかし、眼はいつも何かを語っていた。
彼はそんな彼女が気になった、決して惹かれたとか、そんな事ではない、ただ、そう、なんとなく。
最初は些細だった、彼が気になり、不意に声をかけてみたのだ。
「君はなぜ人と関わろうとしないんだ?」
と、初対面にしては随分と不躾な一言だったが、彼女はそんなことを気にしている訳ではなかった、が、彼の目を見て、一言。
「あなたの言葉は正しい、だけど、正しいだけ」

彼は、とても驚いた、いつも明るく、周りを笑顔にする彼、だが、その裏は、彼も同じく【孤独】を孕んでいる人間だったのだ
違う、彼女は何か違う、彼女が使うのは言葉なんて優しいものではない、一言で相手に致命傷を与え、必死に隠していたモノを全てむき出しにするような、鋭いガラス片ような、残酷なもの。

彼女は知っている、言葉は凶器になる事を、だから彼女は人との関わりを持とうとしないと。
彼の心の【孤独】はそっと姿を潜めた、同時に
【興味】が、数年の永い眠りから覚め、ひっそりと息をし始めた…

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