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エッセイ・コラム

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#世界

事実って小説より奇です

事実って小説より奇です

「事実は小説より奇なり」ということばがある。読んで字のごとく、現実社会のほうが作りものの小説より不思議な出来事も起きることもあるといううことだ。

小説は読後にすっきりとする現象(いわゆる「カタルシス」)があるために、伏線が回収されたり、うまいこと話がまとまっていったり、ハッピーエンドになったりすることが多い。
最近流行りの「異世界転生もの」も同じようなもので、なんだか冴えない主人公が異世界にいっ

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学ぶことで、人は前に歩みだせる

学ぶことで、人は前に歩みだせる

「なぜ人は勉強しなくてはいけないのか――」

小さいころであれば、誰しもがその疑問を抱いたはずである。
特に、膨大な宿題を目の前にしたときや、わからない問題にぶち当たったときにそう感じただろう。

大人になれば仕事のことも含め、勉強し続ける日々が否応なしに続くわけで「なんで勉強しなくちゃいけないんだ」などと考える暇もなく、時間は駆けるように過ぎていく。

学ぶことというのは、世界に対する様々なまな

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幼年期に新鮮だった日常は時とともに腐敗し、大人はそれに「退屈」という名をつけている

幼年期に新鮮だった日常は時とともに腐敗し、大人はそれに「退屈」という名をつけている

お稽古でやっているお茶で、時々子供を連れてやってくる人がいる。
和室でダッシュしたり寝転んだりドラを鳴らしたり、私のことをなぜか「せんせい」と呼んだりと自由気ままであるのだが、まあそれはそれでかわいいし良いかと思いながら適当にお稽古をしている。

フランスの哲学者であるジョルジュ・バタイユはこんな言葉を残している。

日常を単なる退屈にせず、ただ幼い少年少女のごとく鋭いアンテナを張り続け、平凡な何

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完璧な映画翻訳って何だ~"I am Sam"の"I wouldn’t want any daddy but you."について~

完璧な映画翻訳って何だ~"I am Sam"の"I wouldn’t want any daddy but you."について~

文系学部に所属する大学の四回生というと、往々にして時間ばかりあって金がない。これといった社会的責任もなく、社会において極めて無意味で自堕落な存在だと自覚することもしばしばだが、しかしそうであるからこそ自分のやろうと思ったことを勝手にやれるという強みもある。

当時あまりに暇すぎて、私は大学の図書館で映画を見ることがあった。大学の図書館であるから、レンタル料も視聴料もかからず、財布にも優しい。

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