見出し画像

高級ホテルのスイートルームに行ってみよう

職場の先輩で、女性と酒を飲みながら話すような「キャバクラ」みたいな場所が好きな人がいる。
それはそれで全く否定する気はないのだが、金額を聞いて2~3人で20万円ほどつかうことがあったという。女性と酒を飲み、話すだけで20万というのはなかなかの金額だ。

先輩からその話を聞きながら、いったい20万円をどう使うのがよいのだろうと考えてみる。1か月間かけて食費を切り詰めながら普通に生活してもいいだろうし、ローンを返済してもいいのだが、私が個人的にお勧めしたいのが高級ホテルのスイートルームに泊まることである。

実のところ、私は奥さんと帝国ホテルとホテルニューオータニのスイートルームに宿泊したことがある。ニューオータニは結婚式でスイートルームを案内してもらい、帝国ホテルは運よくスイートルームに泊まることができた。

いわゆる高級ホテルは、普通の部屋でも大体2人で一泊6万円以上はする。20万までいかないにせよ、下手なキャバクラに引っかかっても同じくらいの出費だろう。下手なキャバクラでつまらない思いをするより、帝国ホテルやニューオータニに一泊する方が人生はよほど前向きになる。

帝国ホテルの話になるが、私は当初普通の部屋の宿泊を申し込んでいた。ようやっとフロントに行くと、お姉さんがこんな風に語った。

「今日スイートルームに空きが出ておりまして、アップグレードが可能ですが…」

思わず私は「料金って変わらないんですよね?」と貧乏根性丸出しの質問を投げかけてしまった。ホテル側のご厚意でアップグレードしてくれるのだから値段が変わらないのはそりゃそうだろうという話なのだが、急に聞かれてあまりにも動揺してしまったのである。まったくスマートではないがその程度の人間性である。

そんなこんなで、私はたった6万円でスイートルームに泊まることになった。ちなみにあとで調べたところ、スイートルームは2人で11万くらいするらしい。これでもさっき言ったキャバクラで20万円という出費にはなお及ばず、何ならもう一泊できるくらいの値段だ。

部屋の鍵をもらって入室すると、とにかく広い。ベッドルームも尋常ならざるでかさである。「世界まる見え!」とかに出てくる400kgくらいのデブでも収まるくらいのでかさだ。
アメニティも充実している。エスプレッソマシンも使い放題なのでコーヒーも飲み放題だしすこぶる香りもいい。冷蔵庫には水と茶とぶどう、りんご、桃のジュースが入っていた。一生に何度も泊まらないからと思って全部飲んだがいずれもうまい。
クローゼットには傘が入っている。千利休のおもてなしの極意である「利休七則」では「降らずとも傘の用意」ということばがあるが、まさにその通りだ。
枕の材質も指定できる。枕がなくても勝手に眠る私にとっては別段大きな問題はないものの、こだわりの強い人は助かるのだろう。
帝国ホテルのスイートルームだと、部屋ごとにスタッフさんがついている。私はいかんせん使い方がわからなかったので結局一度も呼びつけることなかったが、実に行き届いている。

高級ホテルに行くことの価値とは「こういうラグジュアリーな世界が私たちの日常と同じ次元に存在している」という事実を知ることができる面がある。言ってしまえば異世界に行く経験だ。
キャバクラでガハガハと騒ぐ世界と高級ホテルのスイートルームと、そして私たちが過ごす繰り返される日常と、それらはすべてこの世界に水平に並んでいる。どこに行き、どういう経験をするためにどのくらいの投資をするのかを選ぶこととは、知覚と感性そのものが問われている一瞬でもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?