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エッセイ・コラム

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2022年6月の記事一覧

コミュ障には「おこだわり」を

コミュ障には「おこだわり」を

「コミュ障」なんてことばがある。
コミュニケーション能力が著しく劣っていることを指すことばだ。
「障害」ということばを使っているが、別に医学的障害だと認識されているわけではない。ことさらに出来が悪いことを揶揄した言い方だ。
昔であれば「話すのが下手」とか「無口」とか、「口下手」なんて言い方をしていたのだろう。
やわらかい物言いでありながらも、なんだか思慮のない言い方になったなあと感じる。

就活な

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自分にはできないことをやれてしまう誰かに、心は動くのかも

いま、海外で1970~1980年代のJ-POPが注目を集めているらしい。

「シティポップ」なんて呼ばれていて、当時洋楽を志向した日本のポップミュージックのことを主に指すそうだ。

個人的に、音楽と言えば70~80年代が至高だという意見を持っている私にとってはこうした流行は歓迎すべきことだ。
この時期の音楽に私がやけに魅せられてしまうのには、単純に音楽を聴いていて感動している、すなわち心が動いてい

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あの時隣で泳いだ友人は、将来のトップスイマーだった

あの時隣で泳いだ友人は、将来のトップスイマーだった

「プールに行きたい」

以前、父親がそんなことを言ってきたので、久しぶりに一緒に泳いだことがあった。
よぼよぼの父親がおぼれるように泳いでそのうち死なないようにするためにただ観察する、いわばお守みたいなものだ。
私自身は頑張って泳いだわけではなかった。

もっとも、少し水に触れば、己の衰えは手に取るようにわかる。まず腕も足も筋肉が限界を迎えるのが早く、すぐにまともに水が掻けなくなる。筋肉が落ちすぎ

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意志なき言葉は不誠実

意志なき言葉は不誠実

「書き言葉に誠実でありたい」

そう語ったのは、芥川賞を受賞した宇佐美りんさんだ。

メディアに携わる一記者として、誠実に言葉をしたためるということはなかなかできていない。「そこまで騒ぐことなのか?」ということについてもあーだこーだ騒がないといけないというのが、雇われている記者の宿命だ。

毎日の新型コロナの感染者なんかはその好例だ。何人であろうととりあえず報道する。
金利のちょっとした動きもそう

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Mr.Childrenがクリエイターだと気づいた夜のこと

Mr.Childrenがクリエイターだと気づいた夜のこと

私の嫁さんはMr.Childrenが大好きである。
友達にもファンが多いようで、時々オンラインライブを見たりしながら家で騒いでいることもある。

ミスチルについて私はなんとなく知っていたくらいでそこまで詳しいわけではなかったのだが、あるとき嫁さんがライブのチケットを当てたというので一緒に行こうということになった。

あまりにも知見が不足している私のために嫁さんは「ライブの予習をしよう」ということで

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「誰かのために」と張り切るのが人情

「誰かのために」と張り切るのが人情

自分の意中の人に「〇〇さんの手料理が食べたい」と言われたときのことを考えてみると、きっとだれもが張り切るはずだ。

ひとりのときでは考えられないくらい、頑張るのである。

考えてみれば夏場は夏場で水はぬるく、火を使うとなると台所がやけに暑い。冬なら冬で水が死ぬほど冷たい。米を研ぐのも一苦労である。
どんな季節でも調理場は戦場だ。
二人分の食事を買う金もかかるし、帰るときには重たい荷物を持ちかえらな

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世の中は物語だらけ

世の中は物語だらけ

劇作家であるウイリアム・シェイクスピアはこんな名言を残している。

物語そのものであるのが小説だ。世の中いろいろな小説があるが、毒にも薬にもならないものもあれば、現代社会を皮肉ったものもあれば、SFチックなものもあれば…と様々だが、そのいずれも虚構である。

わたしたちは、小説を読むことこそあれ、小説を書く側に立つことは少ない、と認識している。

でも実は、あらゆる瞬間に私たちは物語を必要としてい

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当たり前のように家を出て家に帰ってくる日常に幸せはあるのかもしれない

当たり前のように家を出て家に帰ってくる日常に幸せはあるのかもしれない

大学のころの話である。
当時、塾講師のバイトをしていた。
ある日、塾の校舎長が飲みの席で、

「若いころは一生懸命仕事をしていたから、親が死んだときも仕事をしていたのだ」

と、まあまあ結構誇らしげな顔をして言っていた。

「おれはこれだけ仕事をしてきた、だからお前たちも―」
と、そんなことを言いたかったのだろう。バイトの身分でそこまで求められても困る、というのが当時の私の心境ではあったのだが、そ

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