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世の中は物語だらけ

劇作家であるウイリアム・シェイクスピアはこんな名言を残している。

All the world's a stage, and all the men and women merely players.
(この世は舞台、ひとはみな役者だ)

物語そのものであるのが小説だ。世の中いろいろな小説があるが、毒にも薬にもならないものもあれば、現代社会を皮肉ったものもあれば、SFチックなものもあれば…と様々だが、そのいずれも虚構である。

わたしたちは、小説を読むことこそあれ、小説を書く側に立つことは少ない、と認識している。

でも実は、あらゆる瞬間に私たちは物語を必要としている。
そして物語を紡ぐ行為は、自分の人生を切り開くうえでも、人を導くうえでも重要な力だ。

そもそも、人生は物語のようなものである。
未来を自分自身が描き上げて実現していくからである。
いわば人生とは、自分が書き上げた物語に沿って、自分自身が演じる行為そのものといっていい。となると、自分で自分の人生という物語を紡ぎあげる力がない、つまりは意志がそこになければ、人生に未来はないし、夢が叶うこともない。

組織でも同じだ。
中期経営計画は、会社にもよるがだいたい向こう3年の経営計画を示すものだ。市場環境などを勘案しながら、今後のサクセスストーリーを描き上げているのであり、いってしまえば物語である。
中計に「先々売り上げが下がって解雇を進めて会社をたたみます」とか、お先真っ暗なストーリーを描く経営者はいない。
必ず、未来を切り開く物語を紡ぎあげるのだ。

政治の世界に目を転じると、「政治日程」なんて言葉がある。
政治関連のイベントなどを日程にしたものなのだが、解散がいつ打てるかとか国会の日程をどうするかとか、方針案とかをいつ閣議決定するとか、そういうことを考えるために大切なものだ。
これもある意味で、政治をめぐる物語を描き上げる営みでもある。

こう考えてみると、物語を紡ぐ行為はかなり普遍的なものであるということがわかる。
それだけに、物語る力はかなり大切だ。それも、希望に向かって物語る力である。

小説は一般的に「人の心を豊かにして、感性を磨き上げるものだ」という説明がされることが多い。ただ、人の前に立つ指導者や、夢を切り開いていきたいと思う人にも、小説家としての態度は極めて肝要だ。
小説は単に現実から遊離して人間の内部に訴えかけるだけのものではない。己のみならず人を導くために必要なヒントにもなるのである。

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