尾野まとぺ

拙いながら短編ものを書いていきたいです( ´ ▽ ` )

尾野まとぺ

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マガジン

  • 日々を詰め込んだお話

    少しだけファンタジーが入ったそれぞれの日常。

  • 大人と子どものはざまのお話

    10代後半から20代前半の人たちのお話です。

記事一覧

去年、消えたと思っていた下書きが、実は消えてなかったみたい。
ここだけじゃなくて自分でも保存しとかなきゃだねぇ

嘘の日に

ランドセルに入りきらない大きなファイルを手に持って、少女が私の顔をのぞき込んだ。控えめに、恐る恐る。 「奈々美だけは、私の味方だよね?」 コンクリートの汚れを数えて…

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定期的に更新できる人すごいなぁ。

山桜

山の中、少し湿った土の斜面を手をついて登っていく。目的の木が目の前に迫ってくるにつれ、だんだんと気分が高揚していく。 やがて私は立ち止まると、上がった息を整えな…

あれ?下書き消したっけ?消えた?

終わって気づく

私って変わってる。『不思議ちゃん』ってよく言われるし、口の悪い友だちなんかは『変人』って言ってきたりする。だから多分、変わってるんだと思う。 机の上で紙をくるく…

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五年後の

春休みもちょうど折り返しを迎えた今日。まだまだつぼみばかりの花壇を横目に、懐かしい校門をくぐり抜ける。ハツラツとした野球部の声が、やけに眩しく感じた。 その泥ま…

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前回の小説投稿直後から書いているものにとても苦戦しておりまして…
すっかり時期はずれの書きものになりそう…

作品に対する評価として「スキ」という言葉は、作者にとっても受け取る側にとっても最適な言葉だと思うんです。
「いいね」とも☆や♡とも違う「スキ」っていうボタンを搭載しているのが、ノートの好きなところです。
芸術や文学って「いい」や「うまい」だけじゃないですよね、きっと。

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夕焼けに

夕方4時半、ベランダに出て町を見下ろす。気持ちのいいくらい、全てが茜色に染め上がっている。薄汚れたビル、カラフルな看板、キラキラ光る車の波、どれも同じように茜色…

いつか出会う君

愛しい君。君はいつかは死んでしまうのだね。でも、こんなに早く死なないで欲しい。 本当は嫌だけど、生きててくれるなら自分の身体を傷つけたっていい。 僕が悲しむから生…

ファンタジー

僕の住むこの街が、例えばそう、魔法都市だとする。僕はきっと一生懸命勉強する。英語みたいな難しい古代文字とか、数学みたいに複雑な魔法式とか魔法陣があるとしても、負…

76歳の少女

久しぶりの祖父母の家は、ひどい有様だった。そこらじゅうに人の糞便が転がっているわ、床も柱も腐っているわで、とてもじゃないけど中に人が住んでいるなんて思えなかった…

3

ピアノの音

高校受験が終わり、何となく暇を持て余していた私は、久しぶりにピアノにふれる。しかし、すぐに違和感を感じた。 こんな音だったかな……。 好きだったJポップもゲー…

1

夜の散歩

サンダルをつっかけて、外に出る。爽やかな風が頬をくすぐった。私は、小さな懐中電灯を持って、木々の間をのんびりと下っていく。 揺れる木の葉が囁きながら、月の光を遮…

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去年、消えたと思っていた下書きが、実は消えてなかったみたい。
ここだけじゃなくて自分でも保存しとかなきゃだねぇ

嘘の日に

ランドセルに入りきらない大きなファイルを手に持って、少女が私の顔をのぞき込んだ。控えめに、恐る恐る。
「奈々美だけは、私の味方だよね?」
コンクリートの汚れを数えていた私は、彼女の目を見た。くっきりとした二重のまぶたの下に埋まった茶色の瞳。どこか日本人ばなれした、綺麗な綺麗な瞳。
「うん」
私はとっさに目を逸らし、小さく答えた。
「よかった」
そっと彼女の表情をうかがうと、涙をこらえて笑っていた。

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定期的に更新できる人すごいなぁ。

山桜

山の中、少し湿った土の斜面を手をついて登っていく。目的の木が目の前に迫ってくるにつれ、だんだんと気分が高揚していく。
やがて私は立ち止まると、上がった息を整えないままに、そうっとその幹に触れる。円やかな手触りが心をくすぐった。
その桜は、ソメイヨシノなんかよりも色白で、少しばかり貧相ではあるが、緑や茶色ばかりの山の中でひときわ輝いていた。
リュックを下ろすと、リリンと鈴の音が響いた。さすがに熊はい

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あれ?下書き消したっけ?消えた?

終わって気づく

私って変わってる。『不思議ちゃん』ってよく言われるし、口の悪い友だちなんかは『変人』って言ってきたりする。だから多分、変わってるんだと思う。
机の上で紙をくるくる丸めながら、そんなこと考える。
春休みの平日、しかも補習の放課後、普段なら私もさっさと帰っているけど、今日はなんとなく帰れずにいた。
教室の後ろの方では女の子が四人が話してて、前の方では男の子三人が小突きあっていた。
「杉本、なにしてんの

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五年後の

春休みもちょうど折り返しを迎えた今日。まだまだつぼみばかりの花壇を横目に、懐かしい校門をくぐり抜ける。ハツラツとした野球部の声が、やけに眩しく感じた。
その泥まみれな姿にしばらく目を細めてから玄関を上がる。どうやらスリッパの場所が変わっているようである。仕方がないから靴を置きっぱなしにしてそのまま板張りに上がる。雑にワックスがけがされている床は、ところどころ滑りやすい。
ゆっくり階段を上がって職員

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前回の小説投稿直後から書いているものにとても苦戦しておりまして…
すっかり時期はずれの書きものになりそう…

作品に対する評価として「スキ」という言葉は、作者にとっても受け取る側にとっても最適な言葉だと思うんです。
「いいね」とも☆や♡とも違う「スキ」っていうボタンを搭載しているのが、ノートの好きなところです。
芸術や文学って「いい」や「うまい」だけじゃないですよね、きっと。

夕焼けに

夕方4時半、ベランダに出て町を見下ろす。気持ちのいいくらい、全てが茜色に染め上がっている。薄汚れたビル、カラフルな看板、キラキラ光る車の波、どれも同じように茜色をしていた。
私は小さく息を吐いて、力いっぱい夕焼け空を吸い込んだ。
私の身体の中が茜色で満たされる。目をつぶると、私も夕焼けの一部になれる気がして、もう一度呼吸をはじめる。
茜色の空気が、肺を伝って爪先まで巡り、そして出ていく。それを何度

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いつか出会う君

愛しい君。君はいつかは死んでしまうのだね。でも、こんなに早く死なないで欲しい。
本当は嫌だけど、生きててくれるなら自分の身体を傷つけたっていい。
僕が悲しむから生きて欲しいなんて、わがままだって分かっているんだ。
けれど考えてみてくれないか。もしそれが失敗したとしたら大変な事になるんだよ。自ら死を選ぶ事もできない身体になってしまうかもしれないんだよ。
我ながら 卑怯な脅し文句だ。
ただ、嫌々でもい

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ファンタジー

僕の住むこの街が、例えばそう、魔法都市だとする。僕はきっと一生懸命勉強する。英語みたいな難しい古代文字とか、数学みたいに複雑な魔法式とか魔法陣があるとしても、負けずに勉強する。7組の野中みたいな天才もいるだろうけど、僕は野中よりも上手に魔法を使えるんだ。別に例えばだからいいだろう。
それで、そのまま研究者になってすごい研究をするんだ。新しい魔法の特許をとったり賞をとったりして、お金もいっぱい集める

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76歳の少女

久しぶりの祖父母の家は、ひどい有様だった。そこらじゅうに人の糞便が転がっているわ、床も柱も腐っているわで、とてもじゃないけど中に人が住んでいるなんて思えなかった。なにより酷いのは匂いだ。ガスマスクするべきだと僕は半ば本気で思った。
靴のまま、まず玄関から上がったのは母だった。
「お母さん、お母さんどこ?勝手に上がるよ」
続いて僕と父も上がる。こんなことなら履き潰したスニーカーをとっておくんだった。

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ピアノの音

高校受験が終わり、何となく暇を持て余していた私は、久しぶりにピアノにふれる。しかし、すぐに違和感を感じた。
こんな音だったかな……。
好きだったJポップもゲーム音楽も、なんだかしっくりこなかった。
違和感の答えを知りたくて、階段を駆け下りた。
「お父さん、CD貸して」
「おっ?恵美もやっとクラシックの良さに気づいたか!」
「貸して?って聞いてるんだけど。ピアノのやつ」
お父さんが得

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夜の散歩

サンダルをつっかけて、外に出る。爽やかな風が頬をくすぐった。私は、小さな懐中電灯を持って、木々の間をのんびりと下っていく。
揺れる木の葉が囁きながら、月の光を遮ってはくすくすと笑う。
木々を抜け、最後の急な坂道を小走りで降りると、少しだけあたりを確認する。そうして小さな明かりを消すと、潮の香りが余計に強く感じた。
そろそろと水面に触れる。心地よい冷たさが私の手を包み、月の光が揺れた。サンダル

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