どてっぱらいもり

エッセイを書いています。たまに小説も書きます 広義の旅に出たい

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記事一覧

はたしてそうだろうか

朝とは無色なものだろう。 ただ、それは虚無的だろうか いつも同じだろうか 事実として空や毎日は虚無ではない。それが繰り返されようと繰り返されなかろうと何らかの現象…

村上春樹は象を組み立てるお前は何の工場に

象を組み立てる これは村上春樹の小説に度々出てくる概念である。奇怪だ。ここでいう象は動物の象だ。 鼻が長くて耳が大きい。 象を組み立てる工場、のイメージ この存在…

極彩

最近文章を書いていないから、書く 誰かが僕の言葉を求めている気がした。そんな気がしたから、書く そして、誰かって、なにより、たぶん、 それは、僕。 最近色々あった…

僕の小説メモ

僕が小説を書くときにアイデアを起こすために記したノートです 人間 世界 感情 感覚 死 存在 あり方  生活 命 海 力 大地 心 生命 時間  コーヒーカップ…

未知からの呼び声

札幌の空にはUFOが飛んでいる。これは紛れもない事実である。少年の心中にはその命題だけが大魚に追われる鰯の如く一群をなして回遊していた。Unidentified Flying Object,…

したむき、ひたむき

shoegazer 地を這うミミズから 雨あがりを知る

白鷺 ゆりかもめ

本郷から茫然自失で歩いて気づけば両国橋 世界に自分がいない感覚を紛らわすために ただ歩いた 橋の下の白鷺 時々僕は僕を発見する ショーウィンドウ、潮風の薫る川面 行…

雑記:供養:若さの秘訣

僕らは毎日を終える度に、一日また一日と死へと前進していく。その歩みを止めることは悲しいかな現代の医療技術ではかなわない。命日はある日必ずやってくる。老いとは万人…

「プシュ」と「ぶるるる」

母は仕事が嫌いだ。17時半になると笑顔で帰宅し、意気揚々と屋上への階段を登っていく。 「夕日を見んねん」 朝日を愛し、夕日を愛する母は何より仕事を嫌った。その反動…

10

歪な街、西千葉は少し暖かい

パトカーが交差点の真ん中で派手に転回した。 キキッと盛大なブレーキ音が鳴り響く。 すべての信号が赤だった。パトカーは180°反対の方向へと駆けていく。そっちにあるの…

雨男から卒業する簡単な方法をお教えします

しまなみ海道も雨、伊豆大島も雨 僕は雨男なのだろうか 晴耕雨読とはよく言うのだが、実際は家で寝転がって本を読んでいる時ほどよく晴れていたりする 晴れ男や雨男が 「…

創造的に他者を理解する

津田沼行きに乗っていた女性と同じ顔で違う服を着た女性が上野行きに乗っていた。 駅構内のトイレで着替えたのではないかと勘繰るほどの一致、僕の目には認められないほど…

風とマンゴー

風の強い日だった。ゴウゴウと音を立てて電線が、窓が、ハンガーが揺れていた。揺れないベッドに縛り付けられて、風の音を聞いていた。切れ間ない轟音が僕を眠りに誘い、唐…

僕は王子様

札幌 2月19日僕は飛行機で札幌に向かった。 新千歳空港には国内外を問わず大量の観光客でごった返していた。彼ら全てがこれからの数日間が必ず美しいものになると信じ…

(3)空間性の病

病む。闇に侵されている。「病み」と「闇」が同じ読みなのは日本語の偶然なのだろうか。病魔が人を蝕むイメージは闇が光を飲み込むイメージとリンクする。何も見えなくなる…

看過される横暴

高田馬場にて

はたしてそうだろうか

朝とは無色なものだろう。
ただ、それは虚無的だろうか
いつも同じだろうか

事実として空や毎日は虚無ではない。それが繰り返されようと繰り返されなかろうと何らかの現象がある。

日常に変化を期待しない人間にとって空や毎日とは、ただそこにあるだけのものであって、そこに肯定的な評価も否定的評価もない。

繰り返される現象を虚無と謳う提唱者の内心には、変化に対する期待がある。日常の基底部に上乗せされる変化

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村上春樹は象を組み立てるお前は何の工場に

村上春樹は象を組み立てるお前は何の工場に

象を組み立てる

これは村上春樹の小説に度々出てくる概念である。奇怪だ。ここでいう象は動物の象だ。
鼻が長くて耳が大きい。

象を組み立てる工場、のイメージ
この存在だけで村上春樹には読む価値がある
象の組み立て工場は大きな工場で、鼻とか耳とか足とか体の部位ごとに担当部署がある
それぞれを組み合わせて象の形をなしたら自然界に解き放つ。そんな社会的役割を担う

象を組み立てる工場とは一体何だろうか

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極彩

最近文章を書いていないから、書く
誰かが僕の言葉を求めている気がした。そんな気がしたから、書く
そして、誰かって、なにより、たぶん、
それは、僕。

最近色々あった。
そりゃ生きてりゃ色々あるだろうが、
僕が文章を書く時は大抵、無色の日々
そういったものに言葉で彩色を添えること

書く必要がない。だから書かない
「文章を書く」という行為
これは私の体に刻み込まれた行為だが
日常の一角ではなく
訪れ

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僕の小説メモ

僕の小説メモ

僕が小説を書くときにアイデアを起こすために記したノートです

人間 世界 感情 感覚 死 存在 あり方 

生活 命 海 力 大地 心 生命 時間 

コーヒーカップ 不可解 幻想 破滅 美 

ナゾ 宇宙 相互理解 一は全、全は一 声 

誕生 欲求 語るという事 和解 旅 実体験

成長 主体 善の衝突 工場 苦々しさ 逆行 

焦燥 町 特殊な町 常識 

全て異なる価値と常識の通底 
歪曲

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未知からの呼び声

札幌の空にはUFOが飛んでいる。これは紛れもない事実である。少年の心中にはその命題だけが大魚に追われる鰯の如く一群をなして回遊していた。Unidentified Flying Object,略してUFOは読んで字のごとく、未確認飛行物体と訳される一種の都市伝説である。彼らはいつも至極平穏な日常が営まれる市井の遥か上空に前触れもなく現れては、夜空を怪しげな光の線を描き、終いには祭りの後にも似た静かな

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したむき、ひたむき

shoegazer

地を這うミミズから

雨あがりを知る

白鷺 ゆりかもめ

本郷から茫然自失で歩いて気づけば両国橋
世界に自分がいない感覚を紛らわすために
ただ歩いた
橋の下の白鷺

時々僕は僕を発見する
ショーウィンドウ、潮風の薫る川面
行き交う車の首都高速
曇天を横切るゆりかもめ
5時の鐘がなっても僕は飛べない
僕はこの世界にいないのであるからして

雑記:供養:若さの秘訣

僕らは毎日を終える度に、一日また一日と死へと前進していく。その歩みを止めることは悲しいかな現代の医療技術ではかなわない。命日はある日必ずやってくる。老いとは万人の永遠の悩みである。しかし、先人たちの悩みと実践のおかげで、死を克服することは叶わずとも老いに抗う術は肉体的、精神的にも様々な方法が存在するようだ。特に僕が着目したのは「新しいことに挑戦する」という老化防止法である。前に母が若返っているとい

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「プシュ」と「ぶるるる」

母は仕事が嫌いだ。17時半になると笑顔で帰宅し、意気揚々と屋上への階段を登っていく。

「夕日を見んねん」

朝日を愛し、夕日を愛する母は何より仕事を嫌った。その反動に家での生活を愛した。

「プシュすんねん」

「プシュ」とは缶ビールのことである。夕暮れの住宅街にプシュとビールの栓の開く音が微かに漏れ出る。

左手には缶ビール、右手にはフランス語の洋書を抱え、膝の上にはフランス語の辞典が載せられ

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歪な街、西千葉は少し暖かい

歪な街、西千葉は少し暖かい

パトカーが交差点の真ん中で派手に転回した。
キキッと盛大なブレーキ音が鳴り響く。
すべての信号が赤だった。パトカーは180°反対の方向へと駆けていく。そっちにあるのはロータリーだけだぞ。
ベージュのワンピースを着た美人な大学生。
彼女は自転車にまたがって呆けた顔を交差点に突き出し、パトカーの行く末を見守っていた。

その横で僕は頭を垂れ、半ば四つん這いの様にしてお尻を突き出している。全長1メートル

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雨男から卒業する簡単な方法をお教えします

雨男から卒業する簡単な方法をお教えします

しまなみ海道も雨、伊豆大島も雨
僕は雨男なのだろうか
晴耕雨読とはよく言うのだが、実際は家で寝転がって本を読んでいる時ほどよく晴れていたりする

晴れ男や雨男が

「予定の日の天気を偏らせる能力」

とするならば、晴れ男も雨男も予定の少ない人だけがなり得る職業なのではないか

仮に、ある人に一年中毎日予定があるとするならば、その人は雨男にも晴れ男にもなり得ない。一年の晴れと雨の日は、それぞれある程

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創造的に他者を理解する

津田沼行きに乗っていた女性と同じ顔で違う服を着た女性が上野行きに乗っていた。

駅構内のトイレで着替えたのではないかと勘繰るほどの一致、僕の目には認められないほどの些細な差異

日本には「顔が同じで服が違う」と「服が同じで顔が違う」の2種類の二者間関係しか存在しない、と暴論を叫んでみたくなる

美とはあるイデオロギーの元に収斂した結果であると思う。人間の美醜は動物としてのセックスアピールを端緒とし

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風とマンゴー

風の強い日だった。ゴウゴウと音を立てて電線が、窓が、ハンガーが揺れていた。揺れないベッドに縛り付けられて、風の音を聞いていた。切れ間ない轟音が僕を眠りに誘い、唐突な轟音が僕を眠りから引き戻した。断続的な眠りから叩き起こされる度にベランダに置いたままのマンゴーの鉢が思い出された。彼は今、脅威に晒されているのだ。先日初めてベランダに出したアボカドは夜通しの暴風で若葉を緩やかなカーブを描くように曲げてら

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僕は王子様

僕は王子様


札幌

2月19日僕は飛行機で札幌に向かった。
新千歳空港には国内外を問わず大量の観光客でごった返していた。彼ら全てがこれからの数日間が必ず美しいものになると信じきっていた。北海道という観光地に寄せる期待に目を輝かせていた。これは、僕が札幌に戻るとき必ず思うことだが、新千歳に向かう機内の中、札幌に向かう列車の中、どの場面を切り取ってみても僕の顔が最も陰鬱なのだろうなと考えたりする。それくらい陰鬱

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(3)空間性の病

病む。闇に侵されている。「病み」と「闇」が同じ読みなのは日本語の偶然なのだろうか。病魔が人を蝕むイメージは闇が光を飲み込むイメージとリンクする。何も見えなくなる。僕は今何に苦しめられているのか。
心の状態を把握する能力は健全な精神のみが持ちうるのかもしれない。

久々に会う友人は僕に必ず「元気?」と尋ねてくれる。僕は「わからない」と答える。身体的にはすこぶる元気だ。しかし、己の精神が健全かどうかが

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